さかさま)” の例文
鼻が三角で、口が三角、眉を払ったあとがまた三角なりで、おとがいの細った頬骨の出た三角をさかさまにして顔の輪廓りんかくの中に度を揃えてならんでいる。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
緑色のマントは着てゐるさ。しかしあんなマントの着様が一体あるもんかな。足から頭の方へさかさまに着てゐるんだ。それにマントを
畑のへり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
またその天の尾羽張の神は、天の安の河の水をさかさまきあげて、道を塞き居れば、あだし神はえ行かじ。かれことに天の迦久かくの神を遣はして問ふべし
いくら慰めてもすかしても聞き分けがないから困った。丁度猫の脊中をさかさまに撫でるようなもので、撫でれば撫でる程むずかるから、乃公は好い加減にして出て来た。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
其角の「鶯の身をさかさまにはつねかな」にしろ、蕪村の「うぐひすの啼くやちひさき口あけて」にしろ、梅室の「尾をそらす鶯やがて鳴きにけり」にしろ、皆これを遠く見ず
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
此方こっちはます/\面白くなって、今度はさかさまに遣て見ようと思付おもいつき、又向うから来る奴に向て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
息絶え/\にさかさまに落ち來し郷は*レームノス
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
鉋箱をさかさまにして鰹節に宛てがうでしょう。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その眞白ましろなる腹部はらさかさま海面かいめんうかんだ。
やがて手をかけて、小脇に抱上げたが、お雪の黒髪はさかさまに乱れて、片手に黒百合を持ったのを胸にあてて、片手をぶらりと垂れていた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここにその矢雉子の胸より通りてさかさまに射上げて、天の安の河の河原にまします天照らす大御神高木たかぎの神一五御所みもといたりき。この高木の神は、高御産巣日の神のまたみななり。
此の船中に話したがね、船頭はじめ——白痴たわけめ、おんなに誘はれて、駈落かけおちの真似がしたいのか——で、船は人ぐるみ、うして奈落へさかさま落込おちこんだんです。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これ船中せんちうはなしたがね、船頭せんどうはじめ——白癡たはけめ、をんなさそはれて、駈落かけおち眞似まねがしたいのか——で、ふねひとぐるみ、うして奈落ならくさかさま落込おちこんだんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、お雪さんの言葉にはげまされたように、ぐたぐたと肩腰をゆすって、さかさまに、のたうちました。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
沢山たんと、待たせてさ。」と馴々なれなれしく云うのが、遅くなった意味には取れず、さかさまうらんで聞える。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、こゝなる両個ふたつの魔は、武士さむらい屑屋くずやさかさまつたのではないらしい。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、耳もきばもない、毛坊主けぼうず円頂まるあたまを、水へさかさま真俯向まうつむけに成つて、あさ法衣ころものもろはだ脱いだ両手両脇へ、ざぶ/\と水を掛ける。——かか霜夜しもよに、掻乱かきみだす水は、氷の上を稲妻いなずまが走るかと疑はれる。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
血は火のごとくうろこを立てて、さかさまとがって燃えた。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)