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ふりがな文庫
“
蹤
(
つ
)” の例文
「此処だということがどうしてわかった……」「おあとから
蹤
(
つ
)
いてまいりました、たぶん此処へいらっしゃるのだと思いまして……」
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私までが
幾度
(
いくたび
)
も幾度も引っ張り出されたが、今更となると、どうにも気恥かしいのだが、後からただ
蹤
(
つ
)
いてまわるには蹤いてあるいた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
ポンと肩を入れる
息杖
(
いきづえ
)
、同時に、七、八名の侍は各〻袂から黒布を出して覆面し、太刀の鍔下を握って、駕の前後に四人ずつ分れて
蹤
(
つ
)
く。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつの間にか、仲間が一人来る、二人
蹤
(
つ
)
いて来る、岩の上には、黒いピリオドが、一点、二点、三点——視線は一様に、鼠色のそれに向う。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
私達は多くこのうねりの痕に
蹤
(
つ
)
いて斜に登った。雪が溶けかかって表面が水気付いて来ると上滑りがするので、真直ぐに登るとこけやすい。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
植幸の女房の後から
蹤
(
つ
)
いて来たのは、十七八の娘、遠い灯に照されたところを見ると、そのまま薫風を残して闇に消え入りそうな美しさです。
銭形平次捕物控:026 綾吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
監獄のなかへでものこ/\
蹤
(
つ
)
いて来るものなので、この二人の
画家
(
ゑかき
)
がそれがために伯耆くんだりまで往つたところで、少しも
咎
(
とが
)
める事はない。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
人はなさけの深みにどうしても
蹤
(
つ
)
いてゆかねばならないように出来ていて、それを
逸
(
そ
)
らすことができないようになっているものでございます。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
私は副部長の後から
蹤
(
つ
)
いて行く。一室に入る。三四人の若い医者がいる。加納副部長は、例の盤の中の妻の切り取られた筋肉を撮みながら、言う。
落日の光景
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
私は、母親をやり過しておいて、七、八間も
後
(
おく
)
れながら忍び忍び
蹤
(
つ
)
いてゆくと、幾つもある廻り角を曲ってだんだんこの間の家の方へ近づいて行く。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
相手の一人がそう言って
土堤
(
どて
)
を上った。もう一人は默ってそのあとに
蹤
(
つ
)
いた。次郎は二人を見送ったあとで、裸になって一人で着物を
搾
(
しぼ
)
りはじめた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
ちょうどそのころ、アメリカの色彩映画『丘の一本松』が輸入された、大体、あの映画の水準に私たちのオルソ式色彩映画も
蹤
(
つ
)
いていったのであった。
色彩映画の思い出
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
その男は満洲を渡っているとき、人知れず
苦力
(
クーリー
)
の背に封じ手を使ってみて、後からひそかに
蹤
(
つ
)
いて行くと、やはりぱったりと
仆
(
たお
)
れたまま死んだという。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そうして眼につく美少女のジャネットが物慣れた様子で新吉を引張るようにして次に入って行くと彼等の中の二三人は物珍らしさにあとを
蹤
(
つ
)
けて入った。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
気配は感じられても姿を現さない尾行者に
蹤
(
つ
)
けられているような気持で、彼は独り河岸っぷちを歩いて行く。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「顔は、この暗さで判らぬ。声も覚えはないが、わしと知って呼び止めた以上、
蹤
(
つ
)
けて来たのであろうか? 前から、忍んでおったのでは、判る理前が無い」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
泉原は半ば煙に
捲
(
ま
)
かれたかたちで、
勧
(
すす
)
めるまゝに相手の後に
蹤
(
つ
)
いていった。探偵の家は町はずれの丘の上に並んでいる小ぢんまりとした二階建の一つであった。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
それは朱の色の戸に
繍
(
ぬい
)
のある
母衣
(
ほろ
)
をかけたもので、数人の侍女がおとなしい馬に乗って
蹤
(
つ
)
いていた。
瞳人語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それからヒルベルトは、これから家へ帰るから、一緒に
蹤
(
つ
)
いて来いといわれるので、
蹤
(
つ
)
いて行った。
回顧と展望
(新字新仮名)
/
高木貞治
(著)
……それで、そのあとを
蹤
(
つ
)
けてきいているうちに、チッチョのあとへ、チョッピィと鳴いてくれたので、ああ、これは
仙台虫喰
(
せんだいむしくい
)
だとわかって、安心して帰って来たのです
キャラコさん:06 ぬすびと
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ぞろぞろと
蹤
(
つ
)
いて来た女や子供たちも、そうですかとは引き取ることが出来ないのだ。殿様が旅に出られることは後に残されるものにとって
甚
(
はなは
)
だ
心許
(
こころもと
)
ない思いであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
僕は、体質上潜行に適しないので、捕鯨船の古物である一
帆船
(
パーク
)
にのって『ネモ号』というその潜船に
蹤
(
つ
)
いていったのです。すると、運の悪いことには半月あまりの暴風雨。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
沈約
(
しんやく
)
の『宋書』に
檀和之
(
だんわし
)
林邑国を討った時林邑王象軍もて
逆戦
(
むかえたたか
)
う、和之に
蹤
(
つ
)
いていた
宗愨
(
そうかく
)
謀って獅の形を製し象軍に向かうと象果して驚き
奔
(
はし
)
りついに林邑に
克
(
か
)
ったとある
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
よぼよぼのユダヤ人イサイチクが、石鹸一箇とその兎を交換しないかと言いながら、後から
蹤
(
つ
)
いて行く。黒い
犢
(
こうし
)
が土間に見える。ドームナが肌着を縫いながら何やら泣いている。
グーセフ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それで私と一緒に遊んでいた妹もベソをかきながら、私に
蹤
(
つ
)
いてきた。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
二人に
蹤
(
つ
)
いて外まで出た彼女の心は、興奮したまま朗かに澄み切った。
湖水と彼等
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
はお友達も来ていましたからね。三人で花を引いて、いつまで待っていたか知れやしない。——私ぐんぐん
蹤
(
つ
)
いて行ってやればよかった。どんな顔して遊んでいるんだか、それが見たくて……。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何ぴともそれが彼をあやまつところまで彼の守護神に
蹤
(
つ
)
いて
往
(
い
)
った者はかつていない。その結果がかりに肉体的虚弱であったとしても、たぶん何ぴともその成りゆきが遺憾であるとはいえないだろう。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
「さああの後に
蹤
(
つ
)
いて
一同
(
みんな
)
も飛び降りるんだ。」
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
水熊の板前善三郎が、迷惑そうに
蹤
(
つ
)
いている。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
私が下駄を
穿
(
は
)
いて
蹤
(
つ
)
いて行きました。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
未納、
蹤
(
つ
)
いて行こうとする。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
ただ黙々と
蹤
(
つ
)
いて歩く。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
井荻は後ろから
蹤
(
つ
)
いて来てあなたが旨く主治医さんに言い含めが出来る自信がおありなら、そう仰言ったらいいでしょう。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
花嫁は自分の存在を証明するやうに、わざと邪慳に
良人
(
をつと
)
の
腕
(
かひな
)
をとつた。発明家の花聟はひきずられるやうに
蹤
(
つ
)
いて往つた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
蹤
(
つ
)
いて来たお冬は、あまりの怖ろしさに顔を
反
(
そむ
)
けながらも、女の本能に還って、顔見知りの子供の名を呼んでおります。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私たちは紅い火焔菜の根を
掌
(
て
)
のひらにのせた場長さんの後に
蹤
(
つ
)
いて、濡れ雫の蝙蝠傘をすぼめすぼめ這入って見た。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
しかし、父が恭一をつれてさっさと土堤の方へ歩き出したのを見ると、彼も仕方なしにそのあとに
蹤
(
つ
)
いた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
庄吉の
蹤
(
つ
)
けて行く人は、町家の旦那らしく、結城紬に、雪駄の後金を鳴らして、急いでいた。往来の人々は、誰も彼も不安そうに、急ぎ、口早に話し合っていた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
お宮も黙ってとぼとぼと
蹤
(
つ
)
いて来ていたが、ふと月を見上げて『いい月だわねえ』と、いいながら真白い顔をこちらに振り向けた時には、まだ眼に涙を滲ませていて
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
余り
扮
(
いでた
)
ちが仰々しいので可笑しくなった。これで頂上まで僅に一里半しかない山に登るのだから誠に呆気ない。焦茶色の耳の立った小さな犬が二
疋
(
ひき
)
、後から
蹤
(
つ
)
いて来る。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「家中の男という男は、一人残らずトウベツに行っておる、間に合せの小屋がけをして、伐木に従事しておる、相田どのはそれを指図なされておる、——
蹤
(
つ
)
いてまいるか?」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
その跡を
蹤
(
つ
)
けてはるばるあの方が、『
月長石
(
ムーン・ストーン
)
』のように追ってきたんじゃないかしら……。
人外魔境:10 地軸二万哩
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
自分の
堪
(
た
)
えられぬ苦しさを訴えたり、涙をこぼしたり、そうかと思うと、自分のあとを
蹤
(
つ
)
けて何かしら不潔な
厭
(
いと
)
わしい、むさ苦しいものが、僧院にまで入り込んで来たような気がしたりした。
大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そこへも爺さんと婆さんは
蹤
(
つ
)
いて来た。
平山婆
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そんな折には早く
絶念
(
あきらめ
)
をつけて、物の半町と
後
(
あと
)
を
蹤
(
つ
)
けないうちに
横町
(
よこまち
)
へ逸れるなり、
理髪床
(
かみゆひどこ
)
へ飛び込むなりするが
可
(
い
)
い。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
蹤
(
つ
)
いて來たお冬は、あまりの怖ろしさに顏を反け乍らも、女の本能に還つて、顏見知りの子供の名を呼んで居ります。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
よしと籠ぐるみ受取ると、途中までお伴してお
藷
(
いも
)
を買ひにまゐりますと鞄をかかへて
蹤
(
つ
)
いて来る。何処の藷畑だと訊くと、蜜柑山のそばでございませうと云ふ。
蜜柑山散策
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「きみが木々の間を泳ぎまわりおじさんに
蹤
(
つ
)
いているあいだ、おじさんはきみを大事にしているんだ、きみは何処にでも匿すことが出来るし邪魔にはならない。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そうして
水天宮
(
すいてんぐう
)
前の大きな四つ
辻
(
つじ
)
を
鎧橋
(
よろいばし
)
の方に向いて曲ると、いくらか
人脚
(
ひとあし
)
が薄くなったので、頬を抑えながら後から黙って
蹤
(
つ
)
いて来たお宮を待って肩を並べながら
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
蹤
漢検1級
部首:⾜
18画
“蹤”を含む語句
蹤跡
先蹤
追蹤
前蹤
後蹤
游蹤
血蹤
踪蹤
蹤蹈
蹤蹟
遊蹤
遺蹤