諸声もろごえ)” の例文
わあッと、暁の空に向って、突然、諸声もろごえがあがった。まだ敵と接するには不意過ぎた。とび方面に立ち昇った黒煙を見出したのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
舟は木の葉のようにもまれている。若者は舟の傍木へ肩を掛ける。陸からは綱を引くものが諸声もろごえに力のリズムを響かせる。
生きること作ること (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
といまだ謂いもはてざるに、満堂たちまち黙を破りて、どっ諸声もろごえをぞ立てたりける、喧轟けんごう名状すべからず。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この楽器のうちにひそみしさまざまのいとの鬼、ひとりびとりにきわみなきうらみを訴えおわりて、いまや諸声もろごえたてて泣きとよむようなるとき、いぶかしや、城外に笛の音起りて
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その姿を見かけると、富士と、八ヶ岳とが、諸声もろごえで大菩薩に呼びかけて言うことには
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
アコ長ととど助、屋敷の門前へ四ツ手をすえ、諸声もろごえ
引きしぼったかぶら矢はうなりを曳いて雲間に破軍はぐんの笛をふいた。と共に、一万余の諸声もろごえが、三度、山こだましてあかつきを揺りうごかした。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といまだいひもはてざるに、満堂たちまち黙を破りて、どっ諸声もろごえをぞ立てたりける、喧轟けんごう名状すべからず。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まさたけなわになりて、この楽器のうちにひそみしさまざまのいとの鬼、ひとりびとりにきわみなきうらみを訴へをはりて、いまや諸声もろごえたてて泣響なきとよむやうなるとき、いぶかかしや、城外に笛の起りて
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
歌詞はもとより俚翁りおうか文字のない市人の作でつたないが、領民の真情は、おのずからその張りあげる諸声もろごえのうちにこもっている。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
テケテケテン、テトドンドンと、村のどこかで……遠い小学校の小児こども諸声もろごえに交って、しずかえて、松葉が飛歩行とびあるくような太神楽だいかぐらの声が聞えて、それが、こだまに響きました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人へ、計ると、「それこそ、同意」と、すぐ五百余騎を、鳥雲に備え立て、山麓まぢかへ迫ってからにわかにを鳴らし諸声もろごえあげて決戦を挑んだ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれ、」とけたたましく諸声もろごえに叫ぶのを耳にも入れず、蝶吉はそのままかいなのばして
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とたんに四面四山は耳もろうせんばかりな陣鉦じんがね陣鼓じんこ陣螺じんらの響きであり山の人間どもの諸声もろごえだった。——無我夢中で秦明は兵とともに逃げなだれた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お立ち——、(陰より諸声もろごえ。)
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
厳かな閲兵えっぺいの後、李天王りてんのう李成りせい聞大刀もんだいとう聞達ぶんたつ、二将の号令のもとに、全軍、中書台ちゅうしょだいに向って、最敬礼をささげ、また、三たびの諸声もろごえを、天地にとどろかせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(と諸声もろごえすごし。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
諸声もろごえあげて、反軍の将士が、そこでどよめきをあげた頃——城頭のやぐらでは、一味の者が、白旗を振って
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸声もろごえ
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのうちに、北軍の松田隊に揚っていた諸声もろごえがふと急変した。陽声から虚声になったのだ。わあッ——と、まるで嬰児あかごが泣くときのような退く息を示したのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こたえる諸声もろごえは、雲にこだまし、いななく馬の声は、宇治川の瀬々に、白い波がしらを寄せに寄せて行く。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとここのときの声にあわせて、三条河原の空でも、わああっと、武者の諸声もろごえがわきあがっていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
工匠たくみらは工匠たちと、商人あきゅうどは商人たちと——またその家族たちと——人々はこぞって親鸞の徳をたたえ、国主の善政に感謝し、法悦の諸声もろごえは、天地あめつちちあふれていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耳をすませば、噂どおりな天狗の諸声もろごえに似たものが虚空こくうを駆けるかとも思われてくる。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、全軍の士は、伊賀路を南下がりに来つつ、諸声もろごえあげて、よろこびに踊りあった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それっと、合図の諸声もろごえあげながら、一団になって、まっしぐらに敵中へ駈け入った。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっと奇形なのは、征途に去る者、残る者の悲壮もよそに、折々鎌倉の夜の闇を、あやしくゆするかねだった。しかも何百人が、幾組にもなって、鉦叩き踊りに狂う念仏の諸声もろごえなのだ。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わけて八幡宮の東の鳥合とりあいヶ原は、その上覧桟敷さじきやら御愛育のたくさんな御犬寮もある所なので、一犬の吠えが万犬の吠えをよび、その諸声もろごえは、鎌倉の海のとどろも打消して、陰々滅々いんいんめつめつ
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸声もろごえを合わせたので、つばさやすめていたクロは、さらにはねをうっていあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、生ける心地もなく隠れていた田楽役者たちも、そこかしこから「……おおうい」と、一せいにこたえて躍り立ち、華雲殿のむねも動くかのような妖しい諸声もろごえをここに揺り起した。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口々の名乗り声、凱歌の諸声もろごえ、全山をゆるがして、しばし鳴りもやまなかった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの河内平野に沸いた物狂わしい屍山血河しざんけつがの勝どきとはことなって、しずかな青葉のうちから、よろこぶとも泣くともつかない、ただ高い感動にせまった人々の諸声もろごえが、わあっと、こだまし合って
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義貞の語尾について、全軍は、わあっ……と三たびの諸声もろごえをあわせた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祈祷きとうの衆僧と、信玄幕下の諸将も、伽藍がらんいっぱいに立ちこめる護摩のけむりの中に、いならんでいた。——そして時折鳴る敵国調伏ちょうぶくの鐘の音、誦経ずきょう諸声もろごえは、この烈石山雲峰寺のふもとまで聞えた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう聞くと、沿道の民は、諸声もろごえあげて、どっと歓び合った。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五名の魔形まぎょうの者が諸声もろごえあわせていどみかかっているのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸声もろごえあわせて働いているのが見られた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、諸声もろごえあげて感泣した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、ほかの諸声もろごえ
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、諸声もろごえあわせて
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)