詮術せんすべ)” の例文
わたくしまった途方とほうれ、くにもかれないような気持きもちで、ひしとまくらかじりつくよりほか詮術せんすべもないのでした。
ぬぐひ私し弟十兵衞事は三州藤川在岩井村の百姓にて豫々かね/″\正直者しやうぢきものに候へ共不事の物いり打續き年貢の未進みしん多分たぶんに出來上納方に差支さしつかへ如何とも詮術せんすべなき儘文と申あね娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この出水も気になるし、お銀の帰りも気になるけれど、なんとも詮術せんすべはありません。竜之助は一人で蒲団ふとんを取り出して、荒々しくそれをべて横になりました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何うも御尊父さまの御腹立ごふくりゅうの処はかねて承知致し罷り有るが、実は茂之助殿の儀に就いて奈何いかにとも詮術せんすべ有る可からざる処の次第柄に至りまして、何とも申し様も有りません
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
匈奴きょうどこの国にこうした時、王、金銀異色の大鼠を祭ると、敵兵の鞍から甲冑から弓絃ゆづるまで、ひもや糸をことごとく鼠群が噛み断ったので、匈奴軍詮術せんすべを知らず大敗した、王
かゝる山間の、人の通ふとも見えぬ小径の奥に立て籠もり、禁断の像を祭り居る今の和尚は、よも一筋縄にかゝる曲者くせものにはあらじ。よし/\吾に詮術せんすべあり。吾をかたきとせば究竟のかたきとならむ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「さては彼の虎めにはれしか、今一足早かりせば、阿容々々おめおめかれは殺さじものを」ト、主人あるじ悶蹈あしずりしてくやめども、さて詮術せんすべもあらざれば、悲しみ狂ふ花瀬をかして、その場は漸くに済ませしが。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
深山越みやまごしの峠の茶屋で、すさまじき迅雷じんらい猛雨に逢って、げも、引きも、ほとんど詮術せんすべのなさに、飲みかけていた硝子盃コップを電力遮断の悲哀なる焦慮で、天窓あたまかぶったというのを、改めて思出すともなく
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
他に詮術せんすべのあらばこそ、口惜くちをしけれど吾はたゞ
ようやくのことで弱音よわねを吐き出した時分は、もう真夜中で、彼等としては、こうも行ったら、ああも戻ったらという、思案と詮術せんすべも尽き果てたから、鈍重な愚痴を
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたくしとしては内心ないしん多大ただい不安ふあんかんじながら、そうおこたえするよりほか詮術せんすべがないのでございました。
如何にも殘念に思ひ足摺あしずりしてなげかなしみけれども今さら詮術せんすべなければ養父の所持したる品々を賣拂うりはらひ諸入用の勘定等をなし又門弟のうち世話になりたる者へは夫々に紀念分かたみわけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『五雑俎』にまた曰く壮士水碓みずぐるまを守りしが虎につかまれ上に坐らる、水碓飛ぶがごとくまわるを虎が見詰め居る内にその人甦った、手足おさえられて詮術せんすべない、ところが虎の陽物翹然にょっきり口に近きを見
ファッツ今は詮術せんすべ尽き焼糞やけくそになって取って還し一生懸命象に武者ぶり懸るとたん、ちょうど毒が廻って大象が倒れた、定めて小男は圧し潰されただろうと思うて一同城壁を下りて往き見ると
相應さうおうせし縁邊なりとは言難ければ御深切しんせつの程有難ありがたけれど此義はおことわり申すべしと言れて望を失ひたる忠兵衞今は詮術せんすべなければ昨日きのふ息子せがれ長三郎が花見に出たる其折にはからこゝの雪隱に入り水をいたゞき手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
既に大阪市中にては小売の白米一升につき銭七百文に至れば、其日稼そのひかせぎの貧民等は又如何いかんとも詮術せんすべなく殆ど飢餓に及ばんとするにぞ、九条村且つ難波村など所々に多人数寄り集まり不穏の事を談合して
閑田耕筆かんでんこうひつ』三に、摂州高槻辺の六歳の男児馬を追って城下に出て帰るに、雨劇しく川みなぎりて詮術せんすべなきところに、その馬その児をくわえて川を渡し、自ら先導して闇夜を無難に連れ帰ったので