見掛みか)” の例文
「ちつとも此邊このへんぢやあ見掛みかけないですからね、だつて、さう遠方ゑんぱうからるわけはなしさ、誰方どなた御存ごぞんじぢやありませんか。」
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
是は見掛みかけによらぬ重要な問題であって、記録にまったくかえりみられなかった常民の精神史が、この方面からも少しずつ、わかってくるような気がする。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
モン長 げに、幾朝いくあさも/\、まだつゆなみだ置添おきそへ、くもには吐息といきくもくはへて、彷徨うろついてゐるのを見掛みかけたとか。
門柱もんちゅうそのはすべて丹塗にぬり、べつとびらはなく、その丸味まるみのついた入口いりぐちからは自由じゆう門内もんない模様もよううかがわれます。あたりにはべつ門衛もんえいらしいものも見掛みかけませんでした。
戦慄すべき思い出——などと書いたが、見掛みかけは、それほど戦慄すべき事件でもなかった。
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その後、羅府ロスアンゼルス動物園へ、選手一同おもむいた折にも、おおきな象の二三頭が、放しいになって自由に散歩しているあいだを、内田さんと手をつなぎ歩いているあなたの姿をお見掛みかけしたことがあります。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
このあたり見掛みかける妖精達ようせいたちがいしてみな年齢としわかいものばかり、性質せいしつ無邪気むじゃきで、一こう多愛たあいもないが、おな妖精ようせいでも、五百ねん、千ねん功労こうろうたものになると、なかなか思慮しりょ分別ふんべつもあり
九時頃くじごろだが、商店しやうてんまち左右さいうきやくつのに、人通ひとどほりは見掛みかけない。しづかほそまちを、四五間しごけんほどまへつて、小兒こどもかとおもちひさな按摩あんまどのが一人ひとりふえきながら後形うしろむきくのである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あの……じつは、貴方あなたをお見掛みかまをしましたから、ことをおねがまをしたいとぞんじまして、それだもんですから、つい、まだお知己ちかづきでもございませんのに、二階にかいまどからみませんねえ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
地方の盛場さかりばには時々見掛みかける、吹矢ふきや機関からくりとは一目ひとめて紫玉にも分つた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)