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ぶどうだな
ふりがな文庫
“
葡萄棚
(
ぶどうだな
)” の例文
それは彼が少年の頃、死別れた一人の姉の写真だったが、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の下に
佇
(
たたず
)
んでいる、もの柔かい少女の姿が、今もしきりに
懐
(
なつか
)
しかった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
入口の庭には
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
があり裏には野菜
畠
(
ばたけ
)
のあるような田舎風の家で、岸本は巴里の方から来た主婦や主婦の姪と一緒に成った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
八幡
(
やわた
)
の町の梨畠に梨は取り尽され、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
からは明るく日がさすようになった。
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
の茎は倒れて見通す稲田の眺望は軟かに黄ばんで来た。
草紅葉
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
柵の向うは廓外のしもたやの縁先になっていて、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
やへちまの棚があって、柵には朝顔の
蔓
(
つる
)
なんかが
絡
(
から
)
みついていた。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
隣家の
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
、打捨てて手を入れようともせぬ庭の雑草の中に美人草の美しく交って咲いているのも今更に目につく。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
これより先、じつは俺は足の先をすでにかじられかかったんだ。けれどもだ、縁の先には大きな
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
があって、来年新芽を吹きだしたら、俺は
王侯
(
おうこう
)
の気持になれそうだ。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
母屋の
廂
(
ひさし
)
から葉の厚い
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
を冠った通路を一筋隔てて、自然木に彫刻をした柱などで凝った風に建てられた湯殿は、先代からの遺物として、かなり古めかしいものであった。
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
僕は僕の生きている限り、あの池だの
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
だの緑色の
鸚鵡
(
おうむ
)
だのと一しょに、やはり夢に見る娘の姿を懐しがらずにはいられまいと思う。僕の話と云うのは、これだけなのだ。
奇遇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
石榴
(
ざくろ
)
の濃緑の葉が油光りして、そうしてその真紅の花が烈日を受けてかっと咲き、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の青い小粒の実も、日ましにふくらみ、少しずつ重たげな長い
総
(
ふさ
)
を形成しかけていた時に
薄明
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
美
(
うる
)
わしい白雲が、
眩惑
(
げんわく
)
せる人の眼にただ輝ける跡をのみ残して空を
過
(
よぎ
)
ってゆくように、流れ去る時間、春の
懶
(
ものう
)
さで人を包む、なま温かい
息吹
(
いぶ
)
き、肉体の金色の熱、日に照らされた愛の
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
眼をかえすと、
狛犬
(
こまいぬ
)
だの、ごしょぐるまだの、百度石だの、灯籠だの、六地蔵だの、そうしたもののいろ/\並んだかげに、
水行場
(
みずぎょうば
)
のつづきの、白い障子をたてたうちの横に
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
が傾いている。
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
遥か奥の
方
(
かた
)
には、葉のやや枯れかかった
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
が、影を
倒
(
さかしま
)
にうつして、
此処
(
ここ
)
もおなじ
溜池
(
ためいけ
)
で、門のあたりから間近な橋へかけて、
透間
(
すきま
)
もなく
乱杭
(
らんぐい
)
を打って、
数限
(
かずかぎり
)
もない材木を水のままに
浸
(
ひた
)
してあるが
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今朝大雪、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
堕
(
お
)
ちぬ。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
姉よ、あなたはいる、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の下のしたたる朝露のもとに。あんなに美しかった
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
に嘗ての姿をとりもどすかのように、みんな
初々
(
ういうい
)
しく。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
掩
(
おお
)
い冠さったような
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の下には、清水が
溢
(
あふ
)
れ流れている。その横にある高い土蔵の壁は日をうけて白く光っている。
百合
(
ゆり
)
の花の
香
(
におい
)
もして来る。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
唯
(
ただ
)
勝手口につづく
軒先
(
のきさき
)
の
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
に、今がその花の咲く頃と見えて、
虻
(
あぶ
)
の
群
(
む
)
れあつまって
唸
(
うな
)
る声が独り夏の日の永いことを知らせているばかりである。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その微笑の意味が清三にはどうしてもわからなかった。学校では暑中休暇を誰もみんな待ちわたっている。暑い夏を
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の下に寝て暮らそうという人もある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その前には見事な
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
があり、葡萄棚の下には石を
畳
(
たた
)
んだ、一丈ばかりの泉水がある。僕はその池のほとりへ来た時、水の中の金魚が月の光に、はっきり数えられたのも覚えている。
奇遇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
外壁に取りついてる
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の中には、小鳥のさえずりが起こってくる。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
昔の家の裏にあった
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の下にたたずんでいる少女の写真は、すぐに見つかった。これが、広島へ来るまで彼の念頭にあった、死んだ姉の面影だった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
勝手口は
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
のかげになって日の光も和げられ、
竹藪
(
たけやぶ
)
の間から流れて来る風はひやりとするほど
爽
(
さわや
)
かである。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
重い戸を閉めて置いて、三吉は蔵の
石階
(
いしだん
)
を下りた。前には
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
や井戸の屋根が
冷
(
すず
)
しそうな蔭を成している。横にある高い石垣の側からは清水も落ちている。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
木小屋の前の
空地
(
あきち
)
、池をおおう
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
、玉すだれや雪の下なぞの葉をたれる
苔蒸
(
こけむ
)
した
石垣
(
いしがき
)
から、熟した
栗
(
くり
)
の落ちる西の木戸の外の稲荷の
祠
(
ほこら
)
のあたりへかけて
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
まだ一方には
鉋屑
(
かんなくず
)
の
臭気
(
におい
)
などがしていた。湯場は新開の畠に続いて、
硝子
(
ガラス
)
窓の外に
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の釣ったのが見えた。青黒く透明な鉱泉からは薄い湯気が立っていた。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この家の土間は
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
などに続いて、その横に牛小屋が作ってある。三頭ばかりの
乳牛
(
ちちうし
)
が飼われている。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
主婦は岸本のために
何処
(
どこ
)
からか机を借りて来て、それを二階の部屋の窓の側に置いてくれた。
蔓
(
つる
)
の延びて来ている
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
を越して窓の外にはバビロン新道が見えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
以前姉に連れられて見て廻った味噌倉も、土蔵の白壁も、達雄の日記を読んだ二階の窓も、無かった。
梨畑
(
なしばたけ
)
、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
、お春がよく
水汲
(
みずくみ
)
に来た大きな石の井戸、そんな物は皆などうか成って了った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
林檎畠、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
なぞを渡って来る涼しい風は、私達の興を助けた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
葡
漢検準1級
部首:⾋
12画
萄
漢検準1級
部首:⾋
11画
棚
常用漢字
中学
部首:⽊
12画
“葡萄”で始まる語句
葡萄
葡萄酒
葡萄牙
葡萄蔓
葡萄色
葡萄園
葡萄畑
葡萄圃
葡萄豆
葡萄茶