トップ
>
落付
>
おちつき
ふりがな文庫
“
落付
(
おちつき
)” の例文
彼はこうした気分を
有
(
も
)
った人にありがちな
落付
(
おちつき
)
のない態度で、
千駄木
(
せんだぎ
)
から
追分
(
おいわけ
)
へ出る通りを日に二返ずつ規則のように往来した。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
須磨子は雪国の信濃に生れただけあつて、降り積る雪を押し分けて香ぐはしい顔を持ち上げる高原の花のやうな
落付
(
おちつき
)
と根強さとを持つてゐた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それを聞くと同時に、四郎の顔から、今までの
含羞
(
はにかみ
)
や気弱さが、まるで拭ったように消え去った。彼は、くそ
落付
(
おちつき
)
に落付いて挨拶を
交
(
か
)
わした。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
よもや
今更
(
いまさら
)
忘
(
わす
)
れもしめへと云ふと長庵
落付
(
おちつき
)
はらひ夫は
其方
(
そなた
)
が殺した話し此長庵は知らぬ事御奉行樣宜敷御
推察
(
すゐさつ
)
願ひますと申立れば越前守殿
兼
(
かね
)
て目を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
私はこの何だか
落付
(
おちつき
)
のない、地底の呼吸を聞き
取
(
とら
)
れるように覚える製造場の中へ入って見たくなった。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
却
(
かえ
)
って下品となり、
落付
(
おちつき
)
は失われ、淋しさは言葉となったために実感を失い、結局何ら人を打つところのない単なる風景の説明に終っていることに気付かずにいられない。
意慾的創作文章の形式と方法
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
新「ヘエ、お
出
(
いで
)
なさい、
此方
(
こちら
)
へお這入りなすって、ヘエ有難う、まア大きに
落付
(
おちつき
)
ました様で」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「それ、
底
(
そこ
)
の
方
(
はう
)
へ
廻
(
まは
)
つて
零
(
こぼ
)
れらな」
勘次
(
かんじ
)
は
先刻
(
さつき
)
から、
怒
(
おこ
)
つたやうな
羞
(
はに
)
かんだやうな、
何
(
なん
)
だか
落付
(
おちつき
)
の
惡
(
わる
)
い
手持
(
てもち
)
のない
顏
(
かほ
)
をして、
却
(
かへつ
)
て
自分
(
じぶん
)
をば
凝然
(
ぢいつ
)
と
見
(
み
)
もせぬ
卯平
(
うへい
)
の
目
(
め
)
から
外
(
そ
)
れるやうに
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
良人
(
おっと
)
の
方
(
ほう
)
でも
少
(
すこ
)
しも
弱味
(
よわみ
)
を
見
(
み
)
せず、
落付
(
おちつき
)
払
(
はら
)
った
様子
(
ようす
)
をしていました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
しかし時によると、その身構えをさらりと投げ出して、飢えたような相手の眼に、
落付
(
おちつき
)
を与えて
遣
(
や
)
りたくなる場合もあった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
聞くに今宵は原の御泊なりと云に
漸々
(
やう/\
)
心も
落付
(
おちつき
)
夫より願書を認め是お節明日中には
御巡見樣
(
ごじゆんけんさま
)
方へ御願ひ申上るにより必ず氣を大丈夫に持申上る事を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
壕
(
ごう
)
にすみ、雨にぬれ、行きたくても行き場がないよとこぼしていたが、そういう人もいたかも知れぬが、然し、あの生活に妙な
落付
(
おちつき
)
と
訣別
(
けつべつ
)
しがたい愛情を感じだしていた人間も少くなかった筈で
堕落論〔続堕落論〕
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
宮川も、すこし
落付
(
おちつき
)
をとりもどして、逆襲したのだった。
脳の中の麗人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何か用を
拵
(
こしら
)
えて狭い
家
(
うち
)
の中を始終ぐるぐる廻って歩かないと承知しなかった。その
落付
(
おちつき
)
のないがさつな態度が健三の眼には
如何
(
いか
)
にも気の毒に見えた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夫よりして友次郎
夫婦
(
ふうふ
)
は
路次
(
ろじ
)
の
油斷
(
ゆだん
)
なく少しも早く江戸に
到
(
いた
)
り
如何
(
いか
)
にもして身の
落付
(
おちつき
)
を定めんものと
炎暑
(
えんしよ
)
の強きをも
厭
(
いと
)
はず夜を日に
繼
(
つい
)
で
行
(
ゆく
)
程
(
ほど
)
に
早晩
(
いつしか
)
大井川を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それが
嘲笑
(
ちょうしょう
)
の意味でなくって、好意から来たものか、また好意らしく見せるつもりなのか、私は即坐に解釈の余地を
見出
(
みいだ
)
し得ないほど
落付
(
おちつき
)
を失ってしまうのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分
(
じぶん
)
のすぐ
前
(
まへ
)
の
人
(
ひと
)
が
立
(
た
)
つた
時
(
とき
)
は、
愈
(
いよ/\
)
わが
番
(
ばん
)
が
回
(
まは
)
つて
來
(
き
)
たと
云
(
い
)
ふ
意識
(
いしき
)
に
制
(
せい
)
せられて、
一層
(
いつそう
)
落付
(
おちつき
)
を
失
(
うしな
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
翌日
(
よくじつ
)
になつても
宗助
(
そうすけ
)
の
心
(
こゝろ
)
に
落付
(
おちつき
)
が
來
(
こ
)
なかつた
事
(
こと
)
は、
略
(
ほゞ
)
前
(
まへ
)
の
日
(
ひ
)
と
同
(
おな
)
じであつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
と誠吾は
落付
(
おちつき
)
払つてゐた。代助は少し
忌々
(
いま/\
)
しくなつたので
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
付
常用漢字
小4
部首:⼈
5画
“落付”で始まる語句
落付払