苛責かしやく)” の例文
解釋かいしやくしたとき御米およねおそろしいつみをかした惡人あくにんおのれ見傚みなさないわけかなかつた。さうしておもはざる徳義上とくぎじやう苛責かしやく人知ひとしれずけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うゑ苛責かしやくとに疲れ果てて、最早助けを呼ぶ力もなく、僅かに顏を擧げて夢心地に、灯をかざしてゐる救ひの手の、誰彼の顏を眺めるのでした。
はまだほんのりとあかるかつたので勘次かんじはそつちこつちとから草刈籠くさかりかご背負せおつたまゝあるいた。かれれでも良心りやうしん苛責かしやくたいして編笠あみがさかほへだてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これ等のことが皆私にとつては苛責かしやくであつた。——洗煉された、長く尾を曳いた苛責であつた。
何をしに来たのかと苛責かしやくに似た気持ちも感じられて、一日一日気忙きぜはしく戦争に追ひたてられてゐる、内地の様子が、意味もなく、ゆき子の頭の中に、あはのやうに浮いては消えてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
貴方あなたは一生涯しやうがいだれにも苛責かしやくされたことく、健康けんかうなることうしごとく、嚴父げんぷ保護ほごもと生長せいちやうし、れで學問がくもんさせられ、それからしてわりやく取付とりつき、二十年以上ねんいじやうあひだも、暖爐だんろいてあり
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いやしくも精神的要求の豊かな人が自分を無良心だと思はずに、その門に冷淡で無頓着である事は出来る事ぢやありません。その苛責かしやくと拘泥に打ち克つて、大した格別な動機もなくて信者になつたものです。
罪と苛責かしやくに吠えるのか
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
しかもその苛責かしやくわかつて、ともくるしんでれるものは世界中せかいぢゆう一人ひとりもなかつた。御米およねをつとにさへこのくるしみをかたらなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三十も年上の、この病人臭い老人と一緒にゐるのは、假りに夫婦といふ名はあつたにしても、まだ/\若くてあぶらが乘つて、溌剌としてゐる、お春の若さにはたまらない苛責かしやくだつたのでせう。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
その告知こくちが私に傳へた感じは喜びと呼ばれるものよりは、何かもつと強烈なもの——何か苛責かしやくするやうな、氣の遠くなるやうなものであつた。それは殆んど恐怖のやうだつたと、私は思ふ。
ひとつには良心りやうしん苛責かしやく餘所よそにしてさうしてまたそれが何處どこまでも發見はつけんせられないものであるならば他人ひとものることは口腹こうふくよく滿足まんぞくせしむるには容易よういかつ輕便けいべん手段しゆだんでなければならぬはずである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)