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篠懸
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すずかけ
ふりがな文庫
“
篠懸
(
すずかけ
)” の例文
並み木に多いのは
篠懸
(
すずかけ
)
である。
橡
(
とち
)
も
三角楓
(
たうかへで
)
も極めて少ない。しかし勿論派出所の巡査はこの木の古典的趣味を知らずにゐる。
都会で
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すらすらと歩を移し、露を払った
篠懸
(
すずかけ
)
や、
兜巾
(
ときん
)
の
装
(
よそおい
)
は、弁慶よりも、
判官
(
ほうがん
)
に、むしろ新中納言が山伏に
出立
(
いでた
)
った
凄味
(
すごみ
)
があって、且つ色白に美しい。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それがまた新に青くなつて、一樣になつて、歸り來る時、葉の
裁方
(
たちかた
)
にまで
變
(
かはり
)
が無い、白楊の葉は
心
(
しん
)
の臟、橡の樹のは
掌
(
てのひら
)
、
篠懸
(
すずかけ
)
の樹のは
三叉
(
みつまた
)
の
鋒
(
ほこ
)
の形だ。
落葉
(旧字旧仮名)
/
レミ・ドゥ・グルモン
(著)
病院境いの鉄柵までには夾竹桃などの咲いた芝生があって、テレスに添うては
篠懸
(
すずかけ
)
の一列の木かげが、あたりを青く染めたように、濶い葉を繁らせていた。
草藪
(新字新仮名)
/
鷹野つぎ
(著)
そうして必ずしも
兜巾
(
ときん
)
篠懸
(
すずかけ
)
の
山伏姿
(
やまぶしすがた
)
でなく特に護法と称して名ある山寺などに従属するものでも、その仏教に対する信心は
寺侍
(
てらざむらい
)
・寺百姓以上ではなかった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
一本の
篠懸
(
すずかけ
)
の樹が緑の葉をさらさらと鳴らしている中庭を通って行ける裏手の一つの建物の中では、教会のオルガンが造られているということであったし
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
それは彼女が、ルブラン氏を促してベンチを去り道を
逍遙
(
しょうよう
)
した幾日かのうちの、ある日のことだった。晩春の強い風が吹いて
篠懸
(
すずかけ
)
の木の
梢
(
こずえ
)
を揺すっていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
はじめて街路樹に
篠懸
(
すずかけ
)
(プラタナス)が採り上げられたころ。宛かも新潮社版の翻訳小説に接したときのやう、そこに私たちは近代都市の「
呼吸
(
いぶき
)
」を感じた。
大正東京錦絵
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
と、この九人の一行は、その翌日も熊野街道を、うち連れ立って辿っていたが、その姿は武士でも農夫でもなく、
兜巾
(
ときん
)
篠懸
(
すずかけ
)
金剛杖の、田舎山伏となっていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
マルセーユの駅は美しい
篠懸
(
すずかけ
)
の樹の並んだ小高い街の上にあった。車から降りたときは、一同の顔は朝靄の冷たさと出発の緊張とで青味を帯んで小さく見えた。
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
と新九郎はふと見上げると、額に
兜巾
(
ときん
)
をつけ柿色の
篠懸
(
すずかけ
)
を身にまとった、これこそ本物の修験者であった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
柿色の
篠懸
(
すずかけ
)
に初夏の風をなびかせて、最上川の緑を縫った棧道をさかのぼり、
陸奥
(
むつ
)
の藤原領へ越える峠の一夜、足をとどめた
生月
(
いけづき
)
の村の方からくる源遠き峡水であるから
姫柚子の讃
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
その
御蔭
(
おかげ
)
で私はとうとう「旅の
衣
(
ころも
)
は
篠懸
(
すずかけ
)
の」などという文句をいつの間にか覚えてしまった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
伸子がよく子供の時分、大きなリボンをつけて遊びに来た
瓢箪池
(
ひょうたんいけ
)
のわきに出た。葉の青々した
篠懸
(
すずかけ
)
の下に池に向って空いたベンチが一つあった。いい加減歩いた彼女らはそこにかけた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
楠
(
くす
)
が萠え、ハリギリが萠え、
朴
(
ほう
)
が萠え、
篠懸
(
すずかけ
)
の並木が萠える。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
〽旅の衣は
篠懸
(
すずかけ
)
の、旅の衣は篠懸の、露けき袖やしぼるらん
ながうた勧進帳:(稽古屋殺人事件)
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
篠懸
(
すずかけ
)
ガブリエレ・ダンヌンチオ
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
南陽丸の船長竹内氏の話に、
漢口
(
ハンカオ
)
のバンドを歩いていたら、
篠懸
(
すずかけ
)
の並木の下のベンチに、
英吉利
(
イギリス
)
だか亜米利加だかの船乗が、日本の女と坐っていた。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
十二因縁に
象
(
かたど
)
った十二の
襞
(
ひだ
)
の頭巾を冠り、柿の
篠懸
(
すずかけ
)
の古きを纏い、
八目
(
やつめ
)
の
草鞋
(
わらじ
)
を足に取り
穿
(
は
)
き、飴色の
笈
(
おい
)
を背に背負い、金剛杖を突き反らした筋骨逞しい大男。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
雨露に汚れた柿いろの
篠懸
(
すずかけ
)
を着て、金剛杖を立て、
額
(
ひたい
)
に、例の
兜巾
(
ときん
)
とよぶものを当てていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
六月の前衛たる赤い
蝶
(
ちょう
)
は、五月の後衛たる白い蝶と相交わっていた。
篠懸
(
すずかけ
)
は新しい樹皮をまとっていた。マロニエのみごとな木立ちは微風に波打っていた。実にそれは光り輝いた光景であった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しやしやと來て
篠懸
(
すずかけ
)
の葉をひるがへす青水無月の雨ぞ此の雨
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
牡丹に唐獅子
篠懸
(
すずかけ
)
に巡査也久良伎
大正東京錦絵
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
あゝ、神寂びし
篠懸
(
すずかけ
)
よ
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
市場のまん中には
篠懸
(
すずかけ
)
が一本、四方へ枝をひろげてゐた。彼はその根もとに立ち、枝越しに高い空を見上げた。空には丁度彼の真上に星が一つ輝いてゐた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
各〻両手をついて
寂
(
しん
)
としていると、悠々然と上座の
褥
(
しとね
)
へついて威風
四辺
(
あたり
)
を払った人物は、
赭顔
(
あからがお
)
の円頂に
兜巾
(
ときん
)
を頂き、
紫金襴
(
しきんらん
)
の
篠懸
(
すずかけ
)
に
白絖
(
しろぬめ
)
の大口を
穿
(
うが
)
って、銀造りの戒刀を横たえたまま
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一人は能の
安宅
(
あたか
)
の弁慶、兜巾をいただき、
篠懸
(
すずかけ
)
をかけ、大口を穿き金剛杖をついて、威風堂々たる人物であり、一人はこれも羽衣へ出る、腰簑をつけた
瀟洒
(
しょうしゃ
)
とした漁夫で、手に櫂を持っており
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しやしやと来て
篠懸
(
すずかけ
)
の葉をひるがへす青水無月の雨ぞ此の雨
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
おれの
行
(
ゆ
)
く手には
二人
(
ふたり
)
の男が、静に
竹箒
(
たかぼうき
)
を動かしながら、路上に
明
(
あかる
)
く散り乱れた
篠懸
(
すずかけ
)
の落葉を掃いてゐる。
東洋の秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
風ひびく
葉廣
(
はびろ
)
篠懸
(
すずかけ
)
諸枝
(
もろえ
)
立ちあざやけきさ
青
(
を
)
の
火立
(
ほだち
)
騰
(
あが
)
れり
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「なにをっ」柿色の
篠懸
(
すずかけ
)
を躍らして
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もし火星の住民も我我の五感を超越した存在を保つてゐるとすれば、彼等の一群は今夜も亦
篠懸
(
すずかけ
)
を黄ばませる秋風と共に銀座へ来てゐるかも知れないのである。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
風ひびく
葉広
(
はびろ
)
篠懸
(
すずかけ
)
諸枝
(
もろえ
)
立ちあざやけきさ
青
(
を
)
の
火立
(
ほだち
)
騰
(
あが
)
れり
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
もし火星の住民も我我の五感を超越した存在を保っているとすれば、彼等の一群は今夜も亦
篠懸
(
すずかけ
)
を黄ばませる秋風と共に銀座へ来ているかも知れないのである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いや、路の右左に枝をさしかはせた
篠懸
(
すずかけ
)
にも、露に洗はれたやうな薄明りが、やはり黄色い葉の一枚
毎
(
ごと
)
にかすかな陰影を
交
(
まじ
)
へながら、
懶
(
ものう
)
げに
漂
(
ただよ
)
つてゐるのである。
東洋の秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし後には夕明りが、
径
(
みち
)
を挟んだ
篠懸
(
すずかけ
)
の若葉に、うっすりと
漂
(
ただよ
)
っているだけだった。
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
仏蘭西
(
フランス
)
公園やジェスフィルド公園は、散歩するに、持って来いだ。殊に仏蘭西公園では、若葉を出した
篠懸
(
すずかけ
)
の間に、西洋人のお袋だの乳母だのが子供を遊ばせている、それが大変
綺麗
(
きれい
)
だったっけ。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
路をさし
挾
(
はさ
)
んだ
篠懸
(
すずかけ
)
も、ひつそりと黄色い葉を垂らしてゐる。
仄
(
ほの
)
かに霧の懸つてゐる
行
(
ゆ
)
く手の
樹々
(
きヾ
)
の
間
(
あひだ
)
からは、唯、噴水のしぶく音が、百年の昔も変らないやうに、
小止
(
をや
)
みないさざめきを送つて来る。
東洋の秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
篠
漢検準1級
部首:⽵
17画
懸
常用漢字
中学
部首:⼼
20画
“篠懸”で始まる語句
篠懸乾