しゝ)” の例文
案「狼は出ねえが、うわばみしゝが出まさア、なアに出ても飛道具とびどうぐウ持っているから大丈夫でいじょうぶでござりやす、あんた方の荷物をお出しなせえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「山國でしゝおほかみを捕る虎挾とらばさみといふわなに首を突つ込んで山猫のやうな顏をして、もがきじにに死んで居たのを、今朝になつて見付けましただ」
しゝ飛出とびだしたやうにまたおどろいて、かれひろつじ一人ひとりつて、店々みせ/\電燈でんとうかずよりおほい、大屋根おほやねいし蒼白あをじろかずた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しゝの出るのは五段目やとか、ありがた山の時鳥ほとゝぎすとか、いづれあやめとひきぞわづらふとか、坊主まる儲けとか、出まかせな駄洒落を、年中繰返して居る。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
此少年は此等あたりに、冬になると出るしゝの話を面白く話して聞かせた。『大きいのはあれ位ありますぜ』かう言つて、谷の流れに架つて終日米をいてゐる野碓の小屋を指し示した。
春雨にぬれた旅 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
と云ったが、脊中の刺青がれましてしゝ滅茶めっちゃになりましたから、直ぐ帰りに刺青師ほりものしへ寄って熊にほりかえて貰い、これからくまの亥太郎と云われました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼處かしこに、はるかに、みづうみ只中たゞなかなる一點いつてんのモーターは、ひかりに、たゞ青瑪瑙あをめなううりうかべる風情ふぜいがある。また、ふねの、さながら白銀しろがねしゝけるがごとえたるも道理ことわりよ。
十和田の夏霧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのふたになつて居る腰張の中に、山國で、しゝや熊を捕る恐しい虎挾とらばさみといふわなを仕掛け、不心得な者が奧に積んである千兩箱に手を掛けると、上から虎挾みの齒が恐ろしい力で落ちて來て
これを持って熊かしゝかは知らぬが殺して出よという、神様のおつげか知らん、あゝ有難し有難し、いやしかし此の穴の深さはのくらいあるか知れぬ、ことけものも沢山いる様子ではあり
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
陰々いん/\たるみぎはこそ御占場おうらなひばしようするので——(小船こぶねとほるさうである)——画工ゑかきさんと英雄えいゆうとは、そこへ——おのおの……畠山はたけやまうまではない、……しゝいだき、鹿しかをかつぐがごと大荷おほにのまゝ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
殺したのは、武藝の心得のあるものだといふことだけはね。細身の短刀でたゞ突き上げただけぢや、あんな傷にはならないよ。下からゑぐり氣味に突いたのだ——ところが、お瀧の傷はたゞしゝ突きに眞つ直ぐに突いてゐる、——これはどういふわけだ