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狐疑
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こぎ
ふりがな文庫
“
狐疑
(
こぎ
)” の例文
歳子はさすがに
狐疑
(
こぎ
)
した。「これはどういふ青年なのであらう。兄がこの近所に学校の後輩の家があるといつたが、大方それだらうか。」
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかしながら
狐疑
(
こぎ
)
は待ちかまえていたように、君が満足の心を充分味わう暇もなく、足もとから押し寄せて来て君を不安にする。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そこに見られる
冴
(
さ
)
えたる美、
躊躇
(
ちゅうちょ
)
なき勢い、走れる筆、悉くが
狐疑
(
こぎ
)
なき仕事の現れではないか。懐疑に強い者は、信仰に弱い。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
こゝには神も人に
交
(
まじは
)
つて人間の姿人間の情を
裝
(
よそほ
)
つた。されば流れ出づる感情は往く處に往き、
止
(
とゞま
)
る處に止りて毫も
狐疑
(
こぎ
)
踟蹰
(
ちゝう
)
の態を學ばなかつた。
新しき声
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
狐疑
(
こぎ
)
して
居
(
ゐ
)
るやうな
其
(
その
)
容貌
(
ようばう
)
とは
其處
(
そこ
)
に
敢
(
あへ
)
て
憎惡
(
ぞうを
)
すべき
何物
(
なにもの
)
も
存在
(
そんざい
)
して
居
(
ゐ
)
ないにしても
到底
(
たうてい
)
彼等
(
かれら
)
の
伴侶
(
なかま
)
の
凡
(
すべ
)
てと
融和
(
ゆうわ
)
さるべき
所以
(
ゆゑん
)
のものではない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
▼ もっと見る
しかし正成はそんな
狐疑
(
こぎ
)
にとらわれているのではなかったのである。ちょっと思案のいろはあったが、後ろの蔦王へ
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人の思いはただ、歩行や歌ってる血潮や吹きつける空気などの快さばかりに向いていた。アンナの舌はほどけてきた。彼女はもう
狐疑
(
こぎ
)
してはいなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私はその時自分の考えている通りを
直截
(
ちょくせつ
)
に打ち明けてしまえば好かったかも知れません。しかし私にはもう
狐疑
(
こぎ
)
という
薩張
(
さっぱ
)
りしない
塊
(
かたま
)
りがこびり付いていました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
愚者にとりては
狐疑
(
こぎ
)
して決せざる場合にいくぶんの用ありとするも、余は古き『易経』などによるに及ばず、むしろ近世の学術上に考えて新法を作るがよいと考え
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
結局は、やればやり得る学位を、無用な
狐疑
(
こぎ
)
や第二義的な些末な考査からやり惜しみをするということが、こういう不祥事やあらゆる
依怙沙汰
(
えこざた
)
の原因になるのである。
学位について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「はだしで来たわけじゃ、ないだろうね。」私は
尚
(
なお
)
も、しつこく
狐疑
(
こぎ
)
した。甚だ不安なのである。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ただ彼には弱者の能力の程度がうまく
呑
(
の
)
み込めず、したがって、弱者の
狐疑
(
こぎ
)
・
躊躇
(
ちゅうちょ
)
・不安などにいっこう同情がないので、つい、あまりのじれったさに
疳癪
(
かんしゃく
)
を起こすのだ。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そこで此歌でも、
毫
(
ごう
)
もこだわりのない純粋な響を伝えているのである。もの云いに
狐疑
(
こぎ
)
が無く不安が無く、子をおもうための願望を、ただその儘に云いあらわし得たのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
今まで文芸などに遊んでおった身で、これが果してできるかと自問した。自分の心は無造作にできると明答した。文芸を三、四年間
放擲
(
ほうてき
)
してしまうのは、いささかの
狐疑
(
こぎ
)
も要せぬ。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
仮
(
かり
)
に其の詞を
容
(
い
)
れて、つらつら経久がなす所を見るに、
九六
万夫
(
ばんぷ
)
の
雄
(
ゆう
)
人に
勝
(
すぐ
)
れ、よく
士卒
(
いくさ
)
を
習練
(
たなら
)
すといへども、
九七
智を用ふるに
狐疑
(
こぎ
)
の心おほくして、
九八
腹心
(
ふくしん
)
爪牙
(
さうが
)
の家の子なし。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
一 事に臨み猶豫
狐疑
(
こぎ
)
して果斷の出來ざるは、畢竟憂國之志情薄く、事の輕重時勢に暗く、且愛情に牽さるゝによるべし。眞に憂國之志相貫居候へば、決斷は依て出るものと奉
レ
存候。
遺訓
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
ここには何も異常な困難が
呈示
(
ていじ
)
されているのではなかった。かれをなえさせるのは、もう何物によっても満たされえぬどんよくとなって現われている
厭気
(
いやき
)
——そこから来る
狐疑
(
こぎ
)
であった。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
敵味方
狐疑
(
こぎ
)
の事、並びに
薬師寺
(
やくしじ
)
の兵城の囲みを解く事
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼の直覚は
狐疑
(
こぎ
)
しなかった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
技巧よりの解放、自然に托された創造、
狐疑
(
こぎ
)
なき自由、あの無駄なき単純、これらの美こそは多量より起る諸徳ではないか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
云い渡したが、なお
狐疑
(
こぎ
)
して、たれひとり出て来ようとはしない。眼と眼を見あわせ、仲間と仲間とささやき合い、依然、銭の山は置かれてあった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると自分の領分でない世界の中に迷い込んだ。また、みずから演劇の筋を立ててみることもあったが——(彼は何物にたいしても
狐疑
(
こぎ
)
しなかったのである)
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
愚者にとりては
狐疑
(
こぎ
)
して決せざる場合にいくぶんの用ありとするも、余は古き『易経』などによるに及ばず、むしろ近世の学術上に考えて新法を作るがよろしいと考え
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
かつて叡智に輝やける
眉間
(
みけん
)
には、短剣で切り込まれたような
無慙
(
むざん
)
に深い
立皺
(
たてじわ
)
がきざまれ、細く小さい二つの眼には
狐疑
(
こぎ
)
の
焔
(
ほのお
)
が青く燃え、侍女たちのそよ風ほどの失笑にも
古典風
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
敵味方
狐疑
(
こぎ
)
の事、並びに
薬師寺
(
やくしじ
)
の兵城の囲みを解く事
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それにも、道誉はちょっと
狐疑
(
こぎ
)
した。が、すぐ手をあげて「みんな遠くで、暫時、休息していろ」と、いいつけた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
否、それが唯一の歩いている道路なのだ。不信や
狐疑
(
こぎ
)
は工藝に美を許さない。それは宗教においても同じである。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
元来彼女には
狐疑
(
こぎ
)
心がなかったし、
嫉妬
(
しっと
)
の感情とはどんなものだかまだ知らなかった。彼女はすべてを与えるつもりでい、また代わりに何かを求めようとはしなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
お互い同じ祖先の血筋を感じ合い、同じ宿命に殉じましょうという深い諦念と理解に結ばれた愛情でもないという理由から、この王子の愛情の本質を矢鱈に
狐疑
(
こぎ
)
するのも、いけない事です。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かれに、
狐疑
(
こぎ
)
と
逡巡
(
しゅんじゅん
)
をいだかせ、その間に、われは心耳心眼を
研
(
と
)
いで、
悔
(
く
)
いなき剣の行きどころを決する。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこには少しの
狐疑
(
こぎ
)
だにない。あの驚くべき筆の走り、形の勢い、あの自然な
奔放
(
ほんぽう
)
な味わい。既に彼が手を用いているのではなく、何者かがそれを動かしているのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
滑稽
(
こっけい
)
にも、自分を理解させようとし、説明し、議論した。もとよりなんの役にもたたなかった。それには時代の趣味を改造しなければならなかったろう。しかし彼は少しも
狐疑
(
こぎ
)
しなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
さいごに三越にはいり、薬品部に行き、店の
雑沓
(
ざっとう
)
ゆえに少し大胆になり、大箱を二つ求めた。黒眼がち、まじめそうな細面の女店員が、ちらと
狐疑
(
こぎ
)
の
皺
(
しわ
)
を
眉間
(
みけん
)
に浮べた。いやな顔をしたのだ。
姥捨
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「…………」提婆のことばには
曖昧
(
あいまい
)
らしさがなかった。信じることをいっている眼であった。人々も彼の態度にその真剣さを見てから
狐疑
(
こぎ
)
を離れて熱心な耳を傾けだした。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
クリストフはうれしくもあるがまだ多少
狐疑
(
こぎ
)
しながら、その様子をながめた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
……敵も、
狐疑
(
こぎ
)
してか、急には近づかず、ただ遠巻きの
潮
(
うしお
)
を、また山鳴りを、
谺
(
こだま
)
にしていた。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狐疑
(
こぎ
)
されているのも、その作用の一波であり、丹羽長秀が調停にうごくと、北畠家の内部にも、忽ち、かれと旧縁のある人々が、和平派として排斥されたり、また、信雄自身が
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
のみならず、眼は
狐疑
(
こぎ
)
をあらわし、
暗
(
あん
)
にあんたやわれわれを、
忌
(
い
)
み恐れる風もみえた
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
陳登はそれより前に、城内へ帰っていたので、彼が
狐疑
(
こぎ
)
しているていを見ると
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なんの
狐疑
(
こぎ
)
を」と、宇都宮公綱は、兵七百の先に立って
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
狐疑
(
こぎ
)
したままで、ついつい、追撃にも出ずにしまった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“狐疑”の意味
《名詞》
(狐は用心深いとされることから)疑い、躊躇うこと。
(出典:Wiktionary)
狐
漢検準1級
部首:⽝
9画
疑
常用漢字
小6
部首:⽦
14画
“狐疑”で始まる語句
狐疑逡巡
狐疑心
狐疑深
狐疑的
狐疑鈍渋