くるひ)” の例文
それから紫檀したん茶棚ちやだなひとふたかざつてあつたが、いづれもくるひさうななまなものばかりであつた。しか御米およねにはそんな區別くべつ一向いつかううつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
又一方には貸倒かしだふれの損耗あるを思へば、所詮しよせんたふし、仆さるるはあきなひの習と、お峯はおのづかこころを強うして、この老女ろうによくるひを発せしを、夫のせるわざとはつゆも思ひよするにあらざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ふねよりふねわたりて、其祝意そのしゆくいをうけらるゝは、当時そのかみ源廷尉げんていゐ宛然えんぜんなり、にくうごきて横川氏よこかわしとも千島ちしまかばやとまでくるひたり、ふね大尉たいゐ萬歳ばんざい歓呼くわんこのうちにいかりげて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
朗々のどかなりしもてのひらをかへすがごとくてんいかりくるひ、寒風ははだへつらぬくやり凍雪とうせついる也。
昨夕ゆふべ飲んだ麦酒ビールこれくらべるとおろかなものだと、代助はあたまたゝきながら考へた。さいはひに、代助はいくらあたま二重にぢうになつても、脳の活動にくるひを受けた事がなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はつと驚ろいた三四郎の足は、早速さそくの歩調にくるひが出来た。其時透明な空気の画布カンヷスなかくらゑがかれた女のかげ一歩ひとあし前へうごいた。三四郎もさそはれた様に前へ動いた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)