淡白たんぱく)” の例文
そこで彼はニヤニヤと笑うと、扉の前を淡白たんぱくに離れ、廊下の上をコトコトと駈け出していった。そして何処かに、姿は見えなくなった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
武村兵曹たけむらへいそう相變あひかはらず淡白たんぱくで、慓輕へうきんで、其他そのほか三十有餘名いうよめい水兵等すいへいら一同いちどう元氣げんきよく、だいなる希望きぼう待望まちのぞみつゝ、勤勉きんべんはたらいてる。
味は淡白たんぱくであって美味うまくないから、だれも食料として歓迎かんげいしない。しかれども方法をもってすれば、砂糖さとうが製せられるから捨てたものではない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
やうやなほしてやつたれいが、たつた五りやうであつたのには、一すんりやう規定きていにして、あまりに輕少けいせうだと、流石さすが淡白たんぱく玄竹げんちくすこおこつて、の五りやうかへした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
日本のことわざにまじわりはたんとして水のごとしというのがある、日本人は水のごとしだ、清浄せいじょうだ、淡白たんぱくだ、どんな人とでも胸をひらいてまじわることができる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかしながらつひそのにん彼等かれらあひだ發見はつけんされなかつた。彼等かれら怨恨うらみすべ勘次かんじの一しんあつまつた。それでも淡白たんぱく彼等かれら怨恨うらみは三にん以上いじやうあつまつてくちひらけばかなら笑聲せうせいたぬほどのものであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
曇日くもりびなので蝙蝠かほもりすぼめたまゝにしてゐるせいか、やゝ小さい色白いろじろの顏は、ドンヨリした日光ひざしの下に、まるで浮出うきだしたやうに際立きわだってハツキリしてゐる。頭はアツサリした束髪そくはつしろいリボンの淡白たんぱくこのみ
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
氏は、金銭にもどちらかとえば淡白たんぱくな方でしょう。
梨花淡白柳深青 〔梨花りか淡白たんぱくにしてやなぎ深青しんせい
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「ぼくらはただ、自由かってな生活がしたいのだ。だが、それは理由のおもなるものではない。淡白たんぱく直言ちょくげんすれば、ぼくらは富士男君の治下に立つことが不満でならないのだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
但馬守たじまのかみ玄竹げんちくあいしたのは、玄竹げんちく岡部美濃守をかべみののかみ頓死とんし披露ひろうするにもつと必要ひつえう診斷書しんだんしよを、なんもとむるところもなく、淡白たんぱくあたへたといふこゝろ潔白けつぱくつたのがだい一の原因げんいんである。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)