ゆあみ)” の例文
様々のあわれはあるが、春の温泉でゆの曇りばかりは、ゆあみするものの肌を、やわらかにつつんで、古き世の男かと、われを疑わしむる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白樺しらかんばよ、蓬生よもぎふ大海原おほうなばらゆあみする女の身震みぶるひ、風がその薄色の髮に戲れると、おまへたちはなにか祕密を守らうとして象牙の戸のやうにあしを合せる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
御念ごねんおよばぬ、じやうぬまそこく……霊泉れいせんゆあみさせて、きづもなく疲労つかれもなく苦悩くなうもなく、すこやかにしておかへまをす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
市九郎はくしけずらざれば、頭髪はいつの間にか伸びて双肩を覆い、ゆあみせざれば、垢づきて人間とも見えなかった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
およそ男女交際の清濁は其気品の如何に関することにして、例えば支那主義の眼を以て見れば、西洋諸国の貴女紳士が共に談じ共に笑い、同所にゆあみこそせざれ同席同食
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
頭の上の浴槽の中には五六人の女たちが、立ったりかがんだりして、いい気持そうにゆあみしています。
足の裏 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ゆあみすれば、下立おりたちてあかを流し、出づるを待ちて浴衣ゆかたを着せ、鏡をすうるまで、お静は等閑なほざりならず手一つに扱ひて、数ならぬ女業をんなわざ効無かひなくも、身にかなはん程は貫一が為にと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
●さて一人の哥妓げいしや梯上はしごのうへにいでゝしきりに岩居がんきよぶ、よばれてろうにのぼれり。は京水とゝもに此よくす、楼上ろうしやうにははや三弦さみせんをひゞかせり。ゆあみしをはりて楼にのぼれば、すで杯盤はいばん狼藉らうぜきたり。
まず娘どもをゆあみさせ新鮮潔白な絹衣を着せ、高壇に上って早朝より日中まで立たしむると、熱国の強日にさらされ汗が絹衣にとおる。一々それを新衣にえしめ、汗にうるおうた絹衣を収めて王に呈す。
それから物を忘れさせるレエテの水の雫にゆあみさせて遣れ。
ゆあみして櫛梳くしけづりけむペリカンの濡れたるはね桃色細毛ももいろほそげ
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
衣裳をも同処おなじところおかず、同じ所にてゆあみせず、物を受取渡す事も手より手へじきにせず、よるゆくときは必ずともしびをともしてゆくべし、他人はいふに及ばず夫婦兄弟にても別を正くすべしと也。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
貫一も遂に短き夢を結びて、常よりははやかりけれど、目覚めしままに起出おきいでし朝冷あさびえを、走り行きて推啓おしあけつる湯殿の内に、人は在らじと想ひしまなこおどろかして、かの男女なんによゆあみしゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
函嶺はこねを絞る点滴したたりに、自然おのずからゆあみした貴婦人のはだは、滑かに玉を刻んだように見えた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
●さて一人の哥妓げいしや梯上はしごのうへにいでゝしきりに岩居がんきよぶ、よばれてろうにのぼれり。は京水とゝもに此よくす、楼上ろうしやうにははや三弦さみせんをひゞかせり。ゆあみしをはりて楼にのぼれば、すで杯盤はいばん狼藉らうぜきたり。
ゆあみの出来るように、浅く窪んだ