くみ)” の例文
この時火を焚き付けていた悪者は、もう火が燃え上ったので此方こちらに歩いて来たが男の前にあった桶を一つ持って渓川へ水をくみに行った。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くみまゐりし者は當時は拙者弟子なれども元は師匠ししやう天道てんだうが弟子にてかれは師匠が未だ佐渡さど淨覺院じやうがくゐんの持主たりし時門前にて有しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひたひたと木の葉から滴る音して、くみかえし、むすびかえた、柄杓ひしゃくの柄を漏るしずくが聞える。その暗くなった手水鉢の背後うしろに、古井戸が一つある。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、かれは背中を向けたまま、無造作に、舟のアカくみを取って、手を伸ばし、川の水をすくって、お綱の側へ置いた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へだては中垣なかがき建仁寺けんにんじにゆづりてくみかはす庭井にはゐみづまじはりのそこきよくふか軒端のきば梅一木うめひとき両家りやうけはる
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宿しゆくを通してまちの中に清き流れありてこれを飮用のみゝづにも洗ひ物にも使ふごとし水切みづぎれにて五六丁も遠き井戸にくみに出る者これを見ばいかに羨しからん是よりがんとり峠といふを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
先生のきょ、同じく戒心かいしんあるにもかかわらず、数十の生徒せいとともな跣足せんそく率先そっせんして池水いけみずくみては門前に運び出し、泥塗満身でいとまんしん消防しょうぼう尽力じんりょくせらるること一霎いっしょう時間じかんよっかろうじてそのさいまぬかれたり。
それから後は、水車を二つ並べて、水をくみ出してしまふのです。
ふしぎな池 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
帰りはくみ取舟になるわけである。
つにさてじようさまのこゝろくみとりたまひてかとうれしきにもこゝろぽそく立上たちあがをとこかほそとうかゞひてホロリとこぼすなみだ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くみて後に御膳ごぜんを差上べしといひおもての方へ出行たりあとに寶澤は手早く此夏中このなつちうえんの下へ埋置うづめおき二品ふたしな毒藥どくやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
偖は人にてもきられて居たるやと見ればには飛石とびいしにも草履ざうりにて血を踏付ふみつけたる跡ありけるによつて草履を返し見れば血の付て居ざるにそさて不思議ふしぎなることなりとて血をあらおとさんと夫婦水をくみきて庭石にはいし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)