朱鷺とき)” の例文
高島田に奴元結やっこもとゆい掛けて、脂粉こまやかに桃花のびをよそおい、朱鷺とき縮緬ちりめん単衣ひとえに、銀糸のなみ刺繍ぬいある水色𧘕𧘔かみしもを着けたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生は桜色と朱鷺とき色との中間ぐらいの淡紅色で、この種のものの中で一番感じがよい。乾燥したものはいくぶん代赭たいしゃ色に近い。
くちこ (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
朱鷺ときといふ美しい鳥があるが、この鳥は種族の見さかひなく挑まれる限りどの鳥の相手にでもなつて交尾する。さうしてこの鳥は今や絶滅に瀕してゐる。
最も早熟な一例 (新字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
四時に迎えを出すことにして、家へ帰って、こちらはすぐ着付……長襦袢は朱鷺とき色縮緬の古代霞のぼかし。単衣は、鶸茶ひわちゃにけまんを浮かせたあの厚手の吉野。
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
妖艶な臙脂べに色の夜会服を纏ったスペイン人らしい若い女や、朱鷺とき色の軽羅うすものをしなやかに肩にかけている娘、その他黄紅紫白とりどりに目の覚めるような鮮な夜会服を着た美しい女達が
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
この猴文字の神トットの使者たるのみならず、時としてトット自身もこの猴の形を現じた(第七図)。トットは通常人身朱鷺とき頭で現じたのだ。エジプト人この猴を極めて裁判にくわしとした。
ほのあかき朱鷺ときの白羽の香のつつみ牡丹ぞと思ふ花はけつつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うす暗い部屋の隅の、朽葉くちは色の長椅子に、白い薄紗ダンテールの服に朱鷺とき色のリボンの帯をしめた十七、八の少女が、靴の爪さきをそろえて、たいへん典雅なようすで掛けている。
もすそひらいて、もだくるしむがごとくにえつゝ、本尊ほんぞんたるをんなざうは、ときはや黒煙くろけむりつゝまれて、おほき朱鷺ときかたちした一団いちだんが、一羽いちはさかさまうつつて、水底みなぞこひとしく宿やどる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
香ひたつ朱鷺ときいろ牡丹籠にあふれ時計と置くにひと花しづか
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
菅子はもうそこに、袖を軽く坐っていたが、露の汗の悩ましげに、朱鷺とき色縮緬の上〆うわじめの端をゆるめた、あたりは昼顔の盛りのようで、あかるい部屋に白々地あからさまな、きぬばかりがすずしい蔭。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薄紗ダンテール朱鷺とき色の下着が、花弁のように四方へ垂れさがった中心から、薄卵色の靴下をはいた足が雄蕊のようにのびあがって、ちょうど大きな胡蝶蘭カトレヤの花が咲きだしたようだったわ」
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
朱鷺とき色の大きな翼裾ウイングと白のジョーゼットの釣鐘裾クローシュだ。白のジョーゼットのほうはちょっとドガの踊り子のようになる。園遊会には向くがサロンにいると子供っぽく見えるおそれがある。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鮮紅からくれなゐと、朱鷺ときと、桃色もゝいろと、薄紅梅うすこうばいと、と、しゆと、くすんだかばと、えたと、さつ點滴したゝべにと、むらさききり山氣さんきして、玲瓏れいろうとしてうつる、窓々まど/\あたかにし田毎たごとつきのやうな汽車きしやなかから
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うつすりと淺葱あさぎに、朱鷺ときに、くさはなあやつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
朱鷺とき色のの長襦袢の袖が落ちる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)