末座まつざ)” の例文
虎松も招ばれて末座まつざに割のわるい一役をつとめさせられたが、お開きと共に折詰を下げてイの一番に帯刀の邸をとび出した。
くろがね天狗 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれは師匠よりも末座まつざに控えて、舞台に両手をついているあいだに、絶えず片袖で眼をふいているのがわたしの眼についた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はいる前によくくつをふき、みんなに一人一人ひとりひとりとしの順に挨拶あいさつをし、それから部屋へやのいちばん末座まつざにいって坐った。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
一同いちどうこれはとおそつゝしみけるに、やゝありて幸豐公ゆきとよぎみ御顏おんかほなゝめ見返みかへたまひ、「もくもく」とたまへば、はる末座まつざかたにて、いらへつ、白面はくめん若武士わかざむらひすこしくれつよりずりでたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
哄笑こうしょうを揺すりあげながら、言い合わしたように、皆じろりと小気味よさそうな一べつ末座まつざへ投げると、いよいよ小さくなった神尾喬之助は、恐縮きょうしゅくのあまり、今にも消え入りそうに
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それはせき末座まつざつらなつてつた一個ひとり年老としをいたる伊太利イタリー婦人ふじんで、このをんな日出雄少年ひでをせうねん保姆うばにと、ひさしき以前いぜんに、とほ田舍ゐなかから雇入やとひいれたをんなさうで、ひくい、白髮しらがあたまの、正直しやうじきさう老女らうぢよであるが
あわて押止め然ば其段いま一應いちおう申上べしまづ/\御待下されと待せ置ておくへ行き暫時ざんじにして出來り然らば其儘そのまゝにて對面たいめんあるべしとの事なりと告れば伊賀亮はも有べしとやが粗服そふくのまゝ天忠に引れて本堂の座敷ざしきへ到ればはるか末座まつざに着座させられぬ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
出す者なし此時末座まつざより一人の老人らうじん進み出ではゞかりながら御役人樣方へ申上ます私しは當村の草分くさわけ百姓にて善兵衞と申す者なるが當時たうじ此村は高廿八石にて百しやう二十二軒あるはなは困窮こんきうの村方なればかく御大勢長く御逗留ごとうりう有ては必死と難澁なんじふに及ぶべし澤の井の一でうさへ相分り申せば早速さつそく當村を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)