抵当かた)” の例文
旧字:抵當
まとまりかけた縁談も滅茶滅茶、そのうわさを聞くと大川原五左衛門は、早速貸金の抵当かたにお関をよこせと乗込んで来る始末だったのです。
こんどは何かまとまったようがあるとかで、守口もりぐちの双葉屋という遊女屋から、お仙のからだを抵当かたに、百両ほど借りてしまった。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
抵当かたにおいて、さて猶太人に向つて、⦅いいかえ猶太ジュウ、おいらはかつきり一年たつたら、この長上衣スヰートカを請け出しに来るだから
沙汰なしに金の抵当かたに書入れられてたまるものか、手前てめえのような奴になんと言ったって再び娘は遣りゃアしねえからそう思いなよ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「向うの話ばかり聞いていても駄目、実地に行って様子を見て、それから抵当かたになりそうなものの目利めききをした上で……」
かつて親類の破産者からそれを借金の抵当かたに取った細君の父は、同じ運命のもとに、早晩それをまた誰かに持って行かれなければならなかったのである。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お前に送った十五ルーブリも、ご承知の通り、この年金を抵当かたにして、当地の商人ヴァシーリイ・イヴァーヌイチ・ヴァフルーシンから借りたものです。
だから露西亜の俘虜は何時でも借金だらけで「霊魂たましひ」が抵当かたになるものなら、書入れに少しの躊躇ちうちよもしないが
王九媽は單四嫂子のためにいろいろ指図をして、一串ひとさしの紙銭を焼き、また腰掛二つ、著物五枚を抵当かたにして銀二円借りて来て、世話人に出す御飯の支度をした。
明日 (新字新仮名) / 魯迅(著)
賄代まかないだい抵当かたに着物があるじゃないか。このお方はお侍じゃ、貴様達をだま所存つもりではないように見受ける。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
利右衛門が、まだ上総の御馬囲場でつまらぬ野馬役をしているとき、長崎屋市兵衛に五十両という金を借り、その抵当かたに妹のお小夜を長崎屋へ小間使につかわした。
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
失敗に次ぐ失敗を重ねた結果、十年あまりのあいだに田地山林は手放す、屋敷の地所まで売って今は、この家構えさえ年貢や借金の抵当かたに取られている始末になっていた。
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それにわしらが知っているのも知らねえのもあったが、田地のいい所は四、五年まえから大抵よそへ抵当かたにはいっている。それが四方から一度に取り立てに来たんだから、いやもうらちはねえ
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一時はうどんの玉を売り歩いていたが、朋輩のすぐいちの増造に貸した金の抵当かたにとってあった人力車が流れ込んで来たので、他吉は再びそれをひいて出た。が、間もなく円タクの流行だ。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
『なにをっ、手前こそ何だってこんな無茶な駈け方をさらしゃあがるんだ? 眼のくり玉を居酒屋へ抵当かたにでもおいて来やがったのかい?』
「可愛らしい正直者だのう、おめえは。受取はいい。間違ったら、そこに持っている首を抵当かたにもらいに行くばかりだ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えッ、黙らないか、武士に向って誘拐かどわかしとは何だ。——借金の抵当かたに、今晩は拙者が直々じきじきれ帰り、内祝言ないしゅうげんを済ませて、宿の妻にするに何の不思議だ。
「どうしてったってお前、三百両の抵当かたに持って来ようておみやげだから、やにっこい物は持って来られねえ」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
眞「もしお梅はん、大事に気晴しのなるようにして呉れんなさませ…あゝわしゃなア済まぬがかね十両借りたいが、袈裟文庫を抵当かたに置くから十両貸してくんなさませ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おらが友達が一人印度にるだが、何でもその話によると、向うでは畑を抵当かたに借金をしようちふんで、持地もちぢをぐるり一廻り検分して帰ると、もう借金かねの返済期になつとるので
人の評判では借金の抵当かたに取った女房だそうである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『あはははは。まさか、首を抵当かたに金も貸すまい。——ほかの御一統には、面目次第もないが、貴公たちから、違約の罪、よろしく詫びておいてくれ』
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黙れッ、借金の抵当かたに取って行くのだ——その方は何者だッ、余計な口を出すと、ためにならんぞッ」
店の造作ぞうさくするに金が入るとかの為に少しの間女郎になれとか、抵当かたに書入れるとか云うなれば、夫婦相談で出来まいものでもないけれども、私は本当に呆れたよ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「うむ、僅か三十文の銭のために縄目なわめの恥にかかるのはいやじゃ、この一腰ひとこし抵当かたにとってくれ」
どの女の葛籠つづらには麻布ぬのがどれだけ入つてゐるとか、また堅気な男が祭りに衣類なり家財なりの何品なにをいつたい酒場へ抵当かたに置いたとかいふことを、細大漏らさず知つてゐる。
ゴオゴリの『死霊しりやう』を読むと、名義だけは生きてゐるが、実はとつくに亡くなつてゐる農奴を買収し、遠い地方へ持ち込んで、そこで銀行へ抵当かたに入れて借金をする話が出てゐるが
零落れいらくした旧主に高利の金を貸し、その抵当かたに、旧主の家族を追い出して、旧主の家にそちが住んでみい、世間はそちを、愈〻いよいよ、悪鬼か蛇蝎だかつのようにいうぞ
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又女房を金の抵当かたに取るなどとはしたないことはなさる筈がない、そんなことは下々しも/″\ですること、先生はよもや御得心のことではあるまい、何か頓と分りませんから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
常雇じょうやといの作男で、納屋に寝泊りして働いているが、何でも少しばかりの借金の抵当かたに祖先伝来の田地を寅旦那に捲上まきあげられ、娘のお美代を売っても追っ付かないから
「先生、その軍用金は、軍用金として御使用御随意ですが、それを先生に御用立てる前に抵当かたをいただいてありますから、あとでかれこれおっしゃってはいけませんよ」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三年もすれば一人残らず農奴を借金の抵当かたに入れてしまうが、肥り肉の方は泰然と構えていながら、いつの間にか——何処か町はずれに、細君の名前で買った家がひょっこりあらわれる。
下の伯母さんに三円お金のかりがございまして、そのお金の抵当かたに、身に取りまして大事な観音様をお厨子ずしぐるみに取られ、母は眼病でございまして、其の観音様を信じ
「蕎麦屋さん。実あ、金はないんだよ。これを抵当かたに、もう一杯喰べさせてくれるかい」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを抵当かたに取って置いてくれ、祖先伝来の由緒ある刀だ、位負けがするとたたりのある刀だ、承知の上でこれを引取ってもらいたい——と出るので、普通のものがオゾケをふるう。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分の身に著けてゐた赤い長上衣スヰートカをば、せいぜい値段の三が一そこそこで、その当時ソロチンツイの定期市に酒場を出してゐた猶太人のとこへ飲代のみしろ抵当かたにおくやうな羽目になつただよ。
待っていたのじゃ、持ち物なり、衣類なり、抵当かたにおいて、すぐ連れて行ってくれい
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それからこの一品、どうやら、わっしどもには不似合いな品でございますが、せっかく殿様から抵当かたに下すった品でございますから、持って帰って大切にお預かり申して置きます……」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
即座に調達ちょうだつ出来兼できかねます処から、予ての約束通り百両の金の抵当かたに一時女房お村を預けて置きました、それからようやく百両の金を算段して持参いたし、女房と証文を返してくれと申入れました処
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
抵当かたに、十両ばかり工面しておくんなさい。そして、野郎に嫌が応でも二升五合賭で果し合いを申込んで、こっちが飢え死するか、伝公の奴が血ヘドを吐くか、最後の勝負をしてやります
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを抵当かたに金を貸してくれと申してまいりました、旦那はアいう気象ですから、金は貸すが品物は預からぬと云って、暫く押問答して居りますと、亥太郎さんがなんと云ってもきませんので
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「がんりき、それでは抵当かたの品をやる、それによって融通しろ」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『一体、あの家を抵当かたに取って、そちはすぐ転売する気か、他へ売るにしても、半年や一年は空けておかねばなるまい。それよりも、そちの生涯の一善になれば、こんなよい事はあるまいが』
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
良人が注文して彫らせた観音さまで金無垢きんむくでがんすから、つぶしにしてもえらく金になると、良人も云えば人さまも云いやすが、金才覚かねさいかくの出来るまで三円の抵当かたに此の観音さまをお厨子ずしぐるみ預かって
「へえ、たった今、食い逃げの抵当かたに取った代物しろものでござります」
虎「誠にお気の毒ですねえ、おや大層まア立派な観音さま、なんだか知りませんが、まア/\金の抵当かたに預って置きましょう、成程たけ一寸八分いっすんはちぶもありましょう、これなれば五円や十円のものはあろう」
「こっちも、買うという話じゃない。抵当かたになら、あの山の茶畑に見込があるから、預かってもいいということなのだ。だが、そう後腐あとくされがあるようじゃ困るから、百さん、気のどくだが、この話はまず、破談だな」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眞「今えから袈裟文庫けさぶんこ抵当かたに預ける」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)