懇々こんこん)” の例文
むろんそうした生徒は、先生に、「これは君までの話だ、他の生徒には絶対にもらさないように。」と懇々こんこんめされるのが常である。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
寄手の将の木下殿より懇々こんこんと、時勢のくところを説かれ、大義のため小義をすてよとのおすすめに屈し、遂に、これへ同道いたしました。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正直か不正直かは長い目で見ていれば自然に判る。まず当分はなんにも言わずに辛抱しているがよかろうと、彼は栄之丞を懇々こんこん説いてなだめた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
老人らが懇々こんこん吾人ごじんに身のおさめ方について説いてくれるときでも、この老いぼれめが維新前いしんぜんの話をしているわいと、馬耳東風ばじとうふうに聞き流すことが多い。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
総監がうのには、この位なことで、貴方あなたを社会的にほうむってしまうことは、何とも遺憾なことなので告訴を取り下げるように懇々こんこん云って見たが、頑として聴かない。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
竜神りゅうじんさんはいとどさしく、いろいろとははいたわってくださいましたので、ははもすっかり安心あんしんして、丁度ちょうど現世げんせでするようにわたくしうえ懇々こんこんとおたのみするのでした。
又砂糖の製造所があって、大きな釜を真空にして沸騰を早くするとうことをやって居る。ソレを懇々こんこんと説くけれども、此方こっちしって居る、真空にすれば沸騰が早くなると云うことは。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
道庵は懇々こんこんと説きさとすようなことを言って、わけもわからずに源助を感心させ
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは一つは唯継事ただつぐこと近頃不機嫌ふきげんにて、とかく内を外に遊びあるき居り候処さふらふところ、両三日前の新聞に善からぬ噂出うはさいで候より、心配のあまり様子見に参られ候次第にて、其事に就き私へ懇々こんこんの意見にて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
河野氏に懇々こんこんさとされたぐらいでは折角せっかくの思い付を止めるはずがない。其夜彼等は脱獄し海上三里を泳ぎ渡り羽田からおかへ上がったが其儘そのまま何処へ行ったものかようとして知ることが出来なかった。
何のためにこんな道を通るか、とか、この先、どこへ行くつもりか、とか、いろいろしちくどく訊問されたうえ、乾板を没収され、懇々こんこんと将来をいましめられて放免されたのは夕方の六時ごろ。
と言って懇々こんこん説諭をしたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
今、あれ程激しい稽古をつけて汗ばみもせず毛皮の上にゆたりと坐った左典、千浪と御方を近く寄せて、何やら懇々こんこんと一刻あまり説きさとした。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これをれ知らずしてみずから心をなやますは、誤謬ごびゅうはなはだしき者というべし。故に有形なる身分の下落げらく昇進しょうしんに心を関せずして、無形なる士族固有の品行を維持いじせんこと、余輩の懇々こんこん企望きぼうするところなり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
忠孝節義を説き、放蕩無頼の徒をさとしては正道に向わしめ、波風の立つ一家を見ては、その不和合を解き、家々の子弟や召使を懇々こんこんと教え導き、また、台所生活にまで入って、薪炭の節約を教えたり
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
てめえも真人間になれと懇々こんこんいわれたので、それ以来、泥足を洗って、てめえのような凡くらに、きょうまで、おとなしく仕えていたが、もうめた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これも懇々こんこんとさとされて引下ったことがある
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
、城下まで出して下さい。郝昭とは、ずいぶん親しかった間がらでしたが、自分が西川せいせん流落りゅうらくして以来、つい無沙汰のままに過ぎていました。懇々こんこん、利害を
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、たった今、禅尼から懇々こんこんと、出家召されよとさとされて「はい」と答えて来たことも忘れていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸洞しょどうの長老は、みな大反対で、兄の頑迷をさとし、長く蜀帝に服し奉れと、懇々こんこん、意見しましたところ、遂に、兄もとうてい、丞相の武威と温情に敵し難いことを悟って
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きのうも、余が刎頸ふんけいの友、加藤遠江守とおとうみのかみどのから、そち達と同じような忠言を懇々こんこんと申された。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふたりとも、きょうばかりは、夜前やぜん、父上から懇々こんこんいわれましたので、至極、とりすましておりますが、もう仕方のない悪戯わるさやら、にくていばかり申して母を困らせておりまする
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
命冥加いのちみょうがな奴めが」と、捕えておいた河和田かわだの平次郎の側へ来て、懇々こんこんと、説諭を加え
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、懇々こんこんということには、この山越えが昼でも男の足に骨の折れること。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その老臣に、懇々こんこん、亡きあとを頼んでった信長の父も、おそらくは
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その間に、日吉は納屋から出されて、母に懇々こんこんと何かさとされていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……そしてお別れ申すとき、お父上から懇々こんこん申しつけられたとおりを守って上杉家の出来事、御城下のうごき、御家中の取沙汰など、絶えず事細ことこまやかに、お文を以て甲府へ密報しておりました……。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし……」懇々こんこんと、さとしかけると
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)