かんじ)” の例文
じつまをすとわたしうたがつてゐるのです。しかもつとも、わたくし或時あるときなんもののやうなかんじもするですがな。れは時時とき/″\おもことがあるです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と、いうようなかんじもした。また、あの黒い鳥はなみの鳥でない、あの鳥が来てから何か自分の家に不幸が起るようなことがあるまいかとも思った。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
御殿の様な奥まった広い座敷のとこへでもこれを立てけておいて御覧なさい、随分ずいぶんいやなかんじのするものだ。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
不思議なのは、それが昨夜ゆうべ私が立っていたところと、ものの半町はんちょうへだっていない所なので、これを見た時には、私は実に一種物凄いかんじもよおしたのであった。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
かんじの宜い絵じゃありませんか。何んて深味のある緑色でしょうね……貴郎もりそう思われて?」
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蘿月は何というわけもなく、長吉が出水でみずの中を歩いて病気になったのは故意こいにした事であって、全快するのぞみはもう絶え果てているような実に果敢はかないかんじに打たれた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それから丁度大川端を通ると、秋の事で柿を売つてる男が有つて、どうしてもかう収穫の時分のかんじが表はれてゐるので、書き附けて手紙を上げて、果物売を描いて下さいと願つた。
丁度ちょうどその間四五ちょうばかりというものは、実に、一種何物かに襲われたかのようなかんじがして、身体からだが、こう何処どことなく痳痺まひしたようで、とても言葉に言い現わせない心持こころもちであった、しかし
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
じつもうすとわたしうたがっているのです。しかしもっとも、わたくし或時あるときなんもののようなかんじもするですがな。それは時時ときどきこうおもうことがあるです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
而して熟々つくづくと穏かな容貌かおつきが慕わしうなり、又自分も到底この先生のようではないけれど、やはり帰趨きすうなき、漂浪児であるという寂しいかんじになった。
蘿月らげつなんふわけもなく、長吉ちやうきち出水でみづの中を歩いて病気になつたのは故意こいにした事であつて、全快ぜんくわいするのぞみはもう絶え果てゝゐるやうなじつ果敢はかないかんじに打たれた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
前置まえおきづきだが、ようするにことというものは何だか一種凄みのあるものだということにすぎぬ、これからはなすことも矢張やっぱりことに関係したことなので、そののち益々ますます自分はことを見ると凄いかんじおこるのである。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
いかに達雄が絶望し、狼狽ろうばいしたかは、三吉に悲惨なかんじを与えた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
決してかんじのいい人間ではなかった。
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はじめて私は幾十尺上って来たかと驚いた。右を見るとまたしても、太い、高い、黒い二本の烟突が目につく。私は飽迄あくまでこの烟突に圧迫せられているかんじがする。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は暫らくたたずんで、是等これらの物悲しい、静かな景色を眺めていたが、急に鳥を撃つのは可哀そうだというようなかんじがして、そのまま墓場を出ると普通人の通る村道に出た。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この時、翁はやっと頭を上げて、側の色硝子の張ってある高窓の方を見ると、急に張りつめていた胸の力が衰えて、遠いかんじがして、知らずに眼に熱い涙が湧いて「ハーッ。」と溜息を洩らすのである。
(新字新仮名) / 小川未明(著)