つら)” の例文
そこまでがほんとの話で、突然いきなり、まつはつらいとみなおしゃんすけれどもなア——とケロケロとうたいだすのだった。そして小首をかしげて
三年越しの流浪にて、乞食こつじきの境遇にも、忘れ難きは赤城の娘、姉妹あねいもとともさぞ得三に、憂いつらい目を見るならむ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黄生こころまどひて、一手に香玉、一手に絳雪を捉へて放たず、相対してつらき限りを泣きつくせり。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
女もしばらくは言い出づる辞もなく、ただつらそうに首をばれて、自分のひざ吹綿ふきわたいじっていたが
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
返事はなくて吐息折々に太く身動きもせず仰向ふしたる心根のつらさ、其身になつてもお力が事の忘れられぬか、十年つれそふて子供まで儲けし我れに心かぎりの辛苦くらうをさせて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
捨てこそ有なれと思ふも果敢はかなき小女氣むすめぎなり彼の一しやう苦勞くらうは他人によりさうの玉手千人まくらし一てんくちびる萬客になめらるゝと云ふつらつとめの其中の心の底を打明て語るお方は唯一人と小夜衣がまこと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それが松浦佐夜姫まつらさよひめであるとか、昔から今まで、親子の別れ、主從のわかれ、いづれもつらいが、男女ふうふの死別ほどのはあるまいなどといはれてゐる。
ああ、窮った、窮った。やっぱり死ぬのか。死ぬのはいいが、それじゃどうも欣さんに義理が立たない。それが何よりつらい! といって才覚のしようもなし。……
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
返事へんじはなくて吐息といき折々おり/\ふと身動みうごきもせず仰向あほのきふしたる心根こゝろねつらさ、其身そのみになつてもおりきことわすれられぬが、十ねんつれそふて子供こどもまでもうけしれにこゝろかぎりの辛苦くろうをさせて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『すがた秀れこころ優しき卿に添ひあくがれては、長生不老の思ひせぬものやなからむ。ただ一日離り居ればとて、なほ千里の別しつるここちやせむ。あだぶしの夜こそつらからめ。』
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
並みの懐子ふところごとは違って、少しの苦しみやつらいくらいは驚きゃしないから
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
それは当然死よりもつらくまた出来にくかったであろうが、正しい取るべき道は、最初倉持との恋愛がきざした時に、いさぎよ良人おっとに打明けるべきであった。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
返事はなくて吐息折々に太く身動きもせず仰向あほのきふしたる心根のつらさ、その身になつてもお力が事の忘れられぬか、十年つれそふて子供までもうけし我れに心かぎりの辛苦くろうをさせて
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
食を乞うということはよくよくつらいものだ。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
さこそは、さこそはつらき露なりけめ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
おもへば浅きことなり——誠入立いりたちぬる恋のおくに何物かあるべきもしありといはゞみぐるしく、憎く、憂く、つらく、浅間しく、かなしく、さびしく
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しめる涙はつらくとも
都喜姫 (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
腕力をもってくるなら、反抗する決心もあるが、沁々しみじみと訴えられるのはつらい。自分の思想を守るのに、そんなことで屈伏したり、陥落は出来ないとも思った。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お雪には、モルガンに、他に増花ますはなが出来たといううわさがたつことが、何よりもつらいのだった。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それがまた、川上との縁は自分の方かられ込んだのでもあり、養母も川上の男らしいところを贔屓ひいきにしていただけに、言うのもつらかったが、聴く方の腹立ちは火の手が強かった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
つらかったのは宮崎家の人となってから、れぬ上に、幼児は二人になり、竜介氏は喀血かくけつがつづいて——ただ一人のたよりの人は喀血がつづく容体で——その時の心持ちはと、あるとき
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「噂が立ってしまってから、打明うちあけるのはつらいが、あて、どうしたら好いのか——」
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「あたしはありとあるつらい経験をもっていて、いろいろな涙の味を知りつくしている。だから、どんな芝居を見ても面白い、感動する。なぜならそのどれにも共鳴するものをみつくしているからだ」
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
顔見られるようでつらかったが、すまあしてやっとる。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)