かさ)” の例文
積まれ積まれる白紙は、所定の、高さにかさむと、目の廻る速度でまた除去して、くうにし、空へまた奔って来て乗る白紙へ備えねばならぬ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
背後うしろうねつて切出きりだしたやうな大巌おほいはが二ツ三ツ四ツとならんで、うへはうかさなつて背後うしろつうじてるが、わし見当けんたうをつけて、心組こゝろぐんだのは此方こツちではないので
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしこれを菫菫菜と菫の字を二つかさねて用いた時にはここに始めてそれがスミレとなる。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
山の根にって、広いほりをめぐらし、千松万柳、門への道は、り橋だった。正門の次に内門をひかえ、白壁高く、楼に楼をかさね、武器庫、厩長屋うまやながや、およそそなわらざるはない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そはともあれわれ今日は大王の御命おおせを受け、和主を今宵招かんため、今朝けさより里へ求食あさり来つ、かくまで下物さかなは獲たれども、余りにかさ多ければ、独りにては運び得ず、思量しあんにくれし処なり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
一事件をる度に二人が胸中に湧いた恋の卵はかさを増してくる。機に触れて交換する双方の意志は、ただちに互いの胸中にある例の卵に至大な養分を給与する。今日の日暮はたしかにその機であった。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かさにかかッて極付きめつけれど、文三は差俯向いたままで返答をしない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
日はひるすこし過ぎ、空は高いが、何処どこからとなく、うつすらした雲のかさが、白くよどむで来ては掻き消えてゆく。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
背後うしろうねって切出したような大巌おおいわが二ツ三ツ四ツと並んで、上の方へかさなってその背後へ通じているが、わしが見当をつけて、心組こころぐんだのはこっちではないので
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またかく真直な上に多くの節がかさなっていますのでこれを婦人の貴い貞節に喩られています。松は豪壮勇偉な男子おとこ、竹は貞節ある淑徳な女子おなご、これは誠に相応ふさわしい双璧ではありますまいか。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
とかくして一町ばかり来るほどに、肴大方取下してければ、はや用なしと車を飛び下り。投げたる肴を一ツに拾ひ集め、これを山へ運ばんとするに。かさ意外おもいのほかに高くなりて、一匹にては持ても往かれず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
トお政がかさに懸ッて極付きめつけかけたので、文三は狼狽あわてて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それを文庫へしまって、さあ寝支度も出来た、行燈あんどう雪洞ぼんぼりに移して、こいつを持つとすッと立って、絹の鼻緒のすがったかさね草履をばたばた、引摺って、派手な女だから
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はじのあさみどりなる、内あかく紫くろき、かさ厚く七重八重なる、葉牡丹は大いにうれし。牡丹とも見ずや葉牡丹、やすきその株ながら、株立つとこの庭もに、豐かなり乏しともなし。
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
かさに懸ッて極付きめつける。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
はじのあさみどりなる、内あかく紫くろき、かさ厚く七重八重なる、葉牡丹は大いにうれし。牡丹とも見ずや葉牡丹、やすきその株ながら、株立つとこの庭もに、豊かなり乏しともなし。
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
日本の国と人とに今はひたすら取りすがってはいるものの、由来小悪こわるで狡くて、勝ってはおごり、弱みにつけこみやすいのが日本人のある階級の特性である。善良で無智と見ると何処までもかさにかかる。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
土間のも夕寒むからしまだいねでかさみおぼめくうつつ家禽いへとり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
風速の御穂の御宮のきだはしは真砂吹きあげて松葉かさめり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うちかさむ若葉くらきに子が遊ぶ鏡の反射そこらひらめく
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
岩清水かさみたる杉の葉の下べ紅せり水漬みづかぬはまだ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
寂ふかく雪に焼けつつ鉾杉の叢葉むらはかさも春立たむとす
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
靄ごもりかさむ若葉の緑金りよくこんはただ一方ひとかたを陽の照らふらし
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夏向ふ霞にあかる若葉木の木群こむらのみどり盛りかさむなり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
夏向ふ霞にあかる若葉木の木群こむらのみどり盛りかさむなり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
野茨のいばらはいとどしろきにかさ厚き薔薇さうびは濡れて肉いろの花
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
野茨のいばらはいとどしろきにかさ厚き薔薇さうびは濡れて肉いろの花
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
照りかさ内紫うちむらさき
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)