きれ)” の例文
「向うは向う。こっちはこっちだ。なにも真似をするこたあねえ。第一おらあ毛唐けとうのものはきれえだ。おれの仕事は日本流で行くんだ」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「口のへらねえ野郎だ」松田は手を止めて栄二を睨みつけた、「いつでもひとをへこましゃあがる、そんなにおれがきれえなのか」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「うん、俺ああの野郎のつらを見るのが心底しんそこきれえなんだ。声を聞くのも虫が好かねえんだ。弟の方はさうでもねえけんど。」
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
牛蒡ごばうもうつかりしてなはしばつてけちや、其處そこからくされがへえつてひでえもんだな、わらぽどきれえだとえんのさな」勘次かんじ横合よこあひからいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それにわしゃア馬が誠にきれえだ、たまには随分小荷駄こにだのっかって、草臥くたびれ休めに一里や二里乗る事もあるが、それでせえ嫌えだ、矢張やっぱり自分で歩く方がいだ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
血の河を流して人のどてを突切るからそう思え、おいらは悪人でねえから血を見るのもきれえだし、見せるのもいやなんだが、てめえたちがあんまり執念しつこいから、一番
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぢいさんな、陰気ツ臭いのが何よりきれえだつて、いつも口癖のやうに云つてゐさしたつけよ。」
野の哄笑 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
そりやお前達も百も承知で、承知だからこそわつしの言ふなりにこの中へ入つて來たんだらうが、とにかく、××の御用、つて奴がきれえなら、こゝにぢつとしてゐねえよ。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
かねて間瀬の人柄を憎んでゐたヒサゴ屋が、太平に対する同情よりも個人的な怒りから立上つて、面白くねえ野郎だ、貴様ののさばるのが俺は何よりきれえなんだ、と威勢はよいがよろけてゐる。
外套と青空 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「俺だってきれえじゃァなかった。——毒のないい人間だった。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「ばッ、ばかなまねをしなさんな。だからおら侍はきれえだ。侍くらい理屈のわかりそうな顔をして、ものの分らねえハンチクはありゃしねえッ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸「ウン余り外へ出るのがきれえで、芝居は厭だ花見は厭だといって、うちに居て草双紙を見るのがいてえんだ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちくいふなきれえだから、そんだがあの阿魔あまもづう/\しい阿魔あまだ、此間こねえだなんざおつかこたおもさねえかつちつたら、おもさねえなんてかしやがつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「岡っ引はでえきれえだ」文次は土間へ唾を吐いた、「世の中に岡っ引くれえ嫌えな者はありゃあしねえ」
あすなろう (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
むこなんぞ、承知しようちするもんぢやねえ、あゝだ泥棒野郎どろぼうやらうきれえだ、はたけでもでも油斷ゆだんなんねえから」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
相応に薬礼をよこすから、足をめていたものゝ実は己ア医者は出来ねえのだ、もっと傷寒論しょうかんろんの一冊位は読んだ事は有るが、一体病人はきれえだ、あの臭い寝床の側へ寄るのはいやだから
「おれは諄いこたあきれえだ」と栄二は答えた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
何かお前様めえさまを追出させるようにたくんだに違ええだ、本当にあのくれえ憎らしい野郎も無えもんだ、ちょいと何一つくれるんでもおめえさんと番頭とではこう違うだ、こんな物はおらきれえだ
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
山「いつもお前は船はきれえだというが、どうだい釣は、こわえ事はあるめえ」
酒飲さけのみで小理窟をいう客はたれでもきれえだ、向うはやさしい客でい座敷だ、向うへくのは当りめえの話で貴方あんた御扶持を出して抱えて置くじゃアなえし、仕様ねえから早く帰っておくんなさえ……なにする
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
亥「己は弱い者いじめはきれえだが食逃げとはなんでえ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)