女主人をんなあるじ)” の例文
かれとらへられていへ引返ひきかへされたが、女主人をんなあるじ醫師いしやびにられ、ドクトル、アンドレイ、エヒミチはかれ診察しんさつしたのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なんとなく浮世うきよからはなれた樣子やうすで、滅多めつたかほせない女主人をんなあるじが、でも、端近はしぢかへはないで、座敷ざしきなかほどに一人ひとりた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その瞬間女主人をんなあるじは、雑誌記者がてつきり自分の愛を求めに来たのだと思つて、栗鼠りすのやうな速さで眼を前に坐つた若い男の額に鼻に、口もとに、走らせた。
スタニスラウスは目を高い腕附きの椅子からそらして、ちよつとアウグステをばさんの陰気な額の上に休ませて、更に一転して、大いに意味ありげに女主人をんなあるじイレエネの顔に注いだ。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
彼等のしゆうダニーロは、じつと物思ひに沈み、その緋色のジュパーンの袖が独木舟の縁から下へ垂れて水をしやくつてをり、また彼等の女主人をんなあるじカテリーナは静かにわが児を揺ぶりながら
其昔、町でも一二の浜野屋の女主人をんなあるじとして、十幾人の下女下男を使つた祖母が、癒る望みもない老の病に、彼様ああして寝てゐる心は怎うであらう! 人間ひとの一生の悲痛いたましさが、時あつて智恵子の心を脅かす。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
が、れもれもぢきかれ疲勞つからしてしまふ。かれそこでふとおもいた、自分じぶん位置ゐち安全あんぜんはかるには、女主人をんなあるじ穴藏あなぐらかくれてゐるのが上策じやうさくと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ともゑくづしたやうな、たゝきのながれこしらへて、みづをちよろ/\とはしらした……それも、女主人をんなあるじの、もの數寄ずきで……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ある日、近ごろ懇意にしはじめたなにがし夫人が訪ねて来たので、未亡人は自慢の温室へ案内をした。お客はかねてから女主人をんなあるじがほんたうに花を知らないのを聞いてゐたので、一寸からかつてみたくなつた。
そこで女主人をんなあるじは指尖でベルを押した。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
家主いへぬし女主人をんなあるじところ見知みしらぬひとさへすればれもになる。もん呼鈴よびりんたび惴々びく/\しては顫上ふるへあがる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
女主人をんなあるじにてなか/\の曲者くせものなり、「小僧こぞうや、紅葉さんの御家へ參つて……」などと一面識いちめんしきもない大家たいかこえよがしにひやかしおどかすやつれないから不思議ふしぎなり。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
唯吉たゞきちやとつておく、おさんのせつでは、うもひとめかけ、かくしづまであらうとつた……それ引越ひつこして當時たうじ女主人をんなあるじふにつけて、には片隅かたすみわつた一本ひともとやなぎ、これがると屋根やね
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)