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喀血
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かっけつ
ふりがな文庫
“
喀血
(
かっけつ
)” の例文
喀血
(
かっけつ
)
がないので急激な変化は見せなかったが、暑気がひどくこたえたらしく、衰弱が日ましに加わって行くのが誰の眼にも見えた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
眼前に
喀血
(
かっけつ
)
の恐ろしきを見るに及び、なおその病の少なからぬ費用をかけ時日を費やしてはかばかしき快復を見ざるを見るに及び
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
ところで、わしたち一家は、寒い部屋に間借りしてるので、女房はこの冬風邪をひきましてな、
咳
(
せき
)
がひどく、果ては
喀血
(
かっけつ
)
するまでになった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
アパリに居る時も、夕刻になるとひどく疲れたり肩が
凝
(
こ
)
ったりしたが、カガヤン渓谷を上るあの難行軍の途中、彼は思いがけぬ
喀血
(
かっけつ
)
をした。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「実は——」と正太は沈痛な語気で、「
熱田
(
あつた
)
へ遊びに参りましたら、その帰り道で洗礼を受けました——二度、
喀血
(
かっけつ
)
しました」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
そして私ははじめて節子がけさ私の知らない間に少量の
喀血
(
かっけつ
)
をしたことを聞かされた。彼女は私にはそれを黙っていたのだ。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
無理に、——この
執拗
(
しつよう
)
な咳と喘鳴と、関節の
疼痛
(
とうつう
)
と、
喀血
(
かっけつ
)
と、疲労との中で——生を引延ばすべき理由が何処にあるのだ。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
辰弥が十三になった年の冬、父は
喀血
(
かっけつ
)
をして倒れた。医者の診察によると、古い肺結核の再発で、すぐに入院しなければだめだ、ということであった。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私の
喚
(
わめ
)
いたのと、隣室から二人の看護婦の
駈
(
か
)
け込んで来たのが、同時であった。続いて真っ赤なものがまたどっと!
喀血
(
かっけつ
)
であった。大喀血であった。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
数年前、菱山修三が外国へ出帆する一週間ぐらい前に階段から落ちて
喀血
(
かっけつ
)
し、生存を絶望とされたことがあった。
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その途中あんまり疲れたので、とある丘の上の青い麦畑の横に腰を
卸
(
おろ
)
すと不意に眼がクラクラして
喀血
(
かっけつ
)
した。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼が
咳
(
せ
)
き入つて叫んだ。明子が
枕許
(
まくらもと
)
のコップを口に当てがつてやると彼は待ち兼ねたやうに二度目の多量の
喀血
(
かっけつ
)
をした。血がコップを
溢
(
あふ
)
れて明子の手の甲を汚した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
渡辺君にはこの二日間が精神的にも肉体的にも非常に影響したと思いますが、一月十四日とかに
喀血
(
かっけつ
)
し、一か月の間に四十回も喀血して、つい二、三日前召された。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
この間は
喀血
(
かっけつ
)
なさったし、あまりかんばしいお体ではないんだけど。アダリンと膏薬を買ってくる。
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
「そのまま
喀血
(
かっけつ
)
でもして死んだら余りにみじめだと思って心配しましたが、いい工合におさまって」
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
優しいはずの湖水の眺めが、まっ暗な幻影で
覆
(
おお
)
われていた。
殆
(
ほとん
)
ど自殺未遂者のような顔つきで、彼はそのひとり旅から戻って来た。すると、間もなく彼の妻が
喀血
(
かっけつ
)
したのだった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
喀血
(
かっけつ
)
したのである。彼はその夜から熱を発して、十日あまり陣屋のうちに寝込んでいた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あなた、おからだを悪くしていらっしゃるんじゃない?
喀血
(
かっけつ
)
なさったでしょう」
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
実に盛大な
喀血
(
かっけつ
)
をしたのである。身体の調子がどうもおかしいとは思っていたが、肺がそんなに悪くなっているとは知らなかった。これで俺もお
陀仏
(
だぶつ
)
か。病院にかつぎこまれた俺は
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「敏子が十ぐらいの時に二三度
喀血
(
かっけつ
)
した経験があ」り、「肺結核の症状が二期に及んでいると云われ」たのは事実であるが、それでも「医師の忠告を無視して不養生の限りを尽し」て
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
六畳の座敷は、畳がほけて、とんと打ったら夜でも
埃
(
ほこ
)
りが見えそうだ。宮島産の丸盆に
薬瓶
(
くすりびん
)
と
験温器
(
けんおんき
)
がいっしょに乗っている。高柳君は演説を聞いて帰ってから、とうとう
喀血
(
かっけつ
)
してしまった。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
五分刈
(
ごぶが
)
りに刈った頭でも、
紺飛白
(
こんがすり
)
らしい着物でも、ほとんど清太郎とそっくりである。しかしおとといも
喀血
(
かっけつ
)
した
患者
(
かんじゃ
)
の清太郎が出て来るはずはない。
況
(
いわん
)
やそんな
真似
(
まね
)
をしたりするはずはない。
春の夜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
昂奮
(
こうふん
)
が
崇
(
たた
)
ったのか、寒い夜気がこたえたのか、帰途につこうとしていた清逸はいきなり激しい咳に襲われだした。
喀血
(
かっけつ
)
の習慣を得てから咳は彼には大禁物だった。死の
脅
(
おびやか
)
しがすぐ彼には感ぜられた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
武男が艦隊演習におもむける二週の後、川島家より手紙して山木を招ける
数日前
(
すじつぜん
)
、
逗子
(
ずし
)
に療養せる浪子はまた
喀血
(
かっけつ
)
して、急に医師を招きつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
幕府はすでに
憚
(
はばか
)
るべき人と、憚るべき
実
(
じつ
)
とがない。井伊大老は
斃
(
たお
)
れ、岩瀬肥後は
喀血
(
かっけつ
)
して死し、安藤老中までも傷ついた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
秋のはじめ、ちょうど去年と同じころに
喀血
(
かっけつ
)
して、冬いっぱい重態が続いた。春さきに医者から「これはいけない」と云われたこともあったそうである。
おばな沢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その若い娘がそれから五六日後の或夜中に突然
喀血
(
かっけつ
)
して死に、その白いスウェタア姿の青年も彼女の知らぬ間に療養所から姿を消してしまった事を知ったとき
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その間に、カチェリーナはやや落ち着いて、
喀血
(
かっけつ
)
も一時とまった。彼女は病的な、けれど心の底までしみこむような目で、哀れなソーニャをじっとみつめていた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
しかし、少しの過労が直ぐに
応
(
こた
)
えて、倒れたり
喀血
(
かっけつ
)
したりするのには、彼も閉口した。如何に彼が医者の言を無視しようとも、之ばかりはどうにもならぬ現実である。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
既に少くも二回は
喀血
(
かっけつ
)
を経験している男が、雪どけの
氾濫
(
はんらん
)
や
泥濘
(
でいねい
)
と闘い単身がた馬車に揺られどおしで横断して、首尾よく目的地に着いて冷静きわまる科学的データの
蒐集
(
しゅうしゅう
)
に従い
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
突然に私が
喀血
(
かっけつ
)
致しまして、程近い綜合病院に入院致しますと、その夜のうちに
行方
(
ゆくえ
)
不明になりました事に
就
(
つ
)
きまして、新聞社や、そのほかの皆様から寄せて頂いております御同情の
勿体
(
もったい
)
なさ。
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
敏子が十ぐらいの時に二三度
喀血
(
かっけつ
)
した経験があり、肺結核の症状が二期に及んでいると云われ、医師に注意を促がされたことがあったが、案ずるほどのこともなく自然に
治癒
(
ちゆ
)
してしまったので
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
僕たちは結核患者だ。今夜にも急に
喀血
(
かっけつ
)
して、鳴沢さんのようになるかも知れない人たちばかりなのだ。僕たちの笑いは、あのパンドラの
匣
(
はこ
)
の
片隅
(
かたすみ
)
にころがっていた小さな石から発しているのだ。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
大屋五郎と別れると間もなく、それがぐッとこたえたんでしょうね、稽古の晩、舞台で
喀血
(
かっけつ
)
しちまって、——それからしばらく病院にいましたが、それきり立ち上れないで、死んじまったんです。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
喀血
(
かっけつ
)
の前にはきっとこの感じが先駆のようにやってくるのだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
まさは下働きのお吉ばあさんを医者へ走らせ、おしのをしずめようと手を尽したが、そのうちおしのは激しく
咳
(
せき
)
こみ、絶息するかと思われたとき
喀血
(
かっけつ
)
した。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
数度の
喀血
(
かっけつ
)
、その
間々
(
あいあい
)
には心臓の
痙攣
(
けいれん
)
起こり、はげしき苦痛のあとはおおむね
惛々
(
こんこん
)
としてうわ言を発し、今日は昨日より、
翌日
(
あす
)
は今日より、衰弱いよいよ加わりつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
でも、もうかれこれ一年になるんですからね……ねえ、叔母さん、僕ね、去年二回
喀血
(
かっけつ
)
したでしょう。……最初の時は、どういうもんだか気持がよかったくらいでしたよ。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
実際イエールでの
喀血
(
かっけつ
)
後、
凡
(
すべ
)
てのものに底が見えて来たように感じた。私は最早何事にも希望を抱かぬ。死蛙の如くに。私は、凡ての事に、落着いた絶望を以て這入って行く。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
旅が終りに近づきかけた或る朝、村瀬が突然ホテルのベッドの上で
喀血
(
かっけつ
)
した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
それは自分の最初の
喀血
(
かっけつ
)
でした。雪の上に、大きい日の丸の旗が出来ました。自分は、しばらくしゃがんで、それから、よごれていない個所の雪を両手で
掬
(
すく
)
い取って、顔を洗いながら泣きました。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
園君に託してお届けいたし
候
(
そうろう
)
連日の乾燥のあまりにや健康思わしからず一昨日は続けて
喀血
(
かっけつ
)
いたし候ようの始末につき今日は英語の
稽古
(
けいこ
)
休みにいたしたくあしからず
御容赦
(
ごようしゃ
)
くださるべく候なお明日は健康のいかんを
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
龍助は帰朝してから半年ほど、東京で画の仲間と生活をもったが、佐知子はチロルで
喀血
(
かっけつ
)
して以来ずっと健康をとりもどせずにいると云って須磨の家に残っていた。
正体
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
気圧なんかが急に変ったりすると、あんな人達の中からも
喀血
(
かっけつ
)
したりする人がすぐ出るのよ。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そして今度は結核性の
喀血
(
かっけつ
)
を
齎
(
もた
)
らすことになったのである。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
「
喀血
(
かっけつ
)
した。」
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
父は座蒲団を並べた上に寝ていたが、
喀血
(
かっけつ
)
をしたのだろう、口のまわり、着物の
衿
(
えり
)
、そして畳の上まで血が飛び散ってい、それを店の者たちが
拭
(
ふ
)
き取っているところだった。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私ははげしい
喀血
(
かっけつ
)
後、
嘗
(
かつ
)
て私の父と旅行したことのある大きな湖畔に近い、或る高原のサナトリウムに入れられた。医者は私を肺結核だと診断した。が、そんなことはどうでもいい。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
自分でも気づかなかったが、あの夜、高雄に闇討をしかけて、顛倒したとき、ふいに
喀血
(
かっけつ
)
したという。高雄が去ってから四半
刻
(
とき
)
も動くことができず、這うようにして宿所へ帰った。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
が、その晩、勤めから帰って来ていつものように何事もなさそうにしている夫を見ると、突然その夫を
狼狽
(
ろうばい
)
させたくなって、二人きりになってからそっと朝の
喀血
(
かっけつ
)
のことを打明けた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
“喀血”の意味
《名詞》
喀血(かっけつ)
肺や気管支の粘膜から出た血を吐くこと。
(出典:Wiktionary)
“喀血”の解説
喀血(かっけつ)とは、気管や呼吸器系統から出血し、口から血を出すこと。気道出血(airway bleeding)。
(出典:Wikipedia)
喀
漢検1級
部首:⼝
12画
血
常用漢字
小3
部首:⾎
6画
“喀血”で始まる語句
喀血患者