合間あいま)” の例文
彼はこまを握る合間あいま合間に顔をあげて、星尾助教授の手の内を後からみたり、川丘みどりの真白な襟足えりあしのあたりをぬすして万更まんざらでない気持になっていた。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、指を湿らせる合間あいまに、水をほめる前に、先刻話しかけたつづきを、思出したようにいうのだった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かみさんのくずは、子供こども世話せわをする合間あいまには、はたかって、おっと子供こども着物きものっていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
明くる日、帰宅せられた時はなかなかの混雑でしたが、少しの合間あいまに赤い袖無しを著て、ちょこちょこと座敷へ出て、「御無事でおめでとう」と、丁寧に挨拶あいさつをなさいました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
この浜町という所は——この附近全体がそうではあるが——恰も五本の指をひろげた様に細高い丘が海中に突出して、その合間あいま合間が深い入江となって居るという風の所である。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
荒筵の遥かの奥の方から、祈祷の声が絶えず聞こえ、りんを振る音が合間あいま合間に聞こえた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その土煙の舞いあが合間あいまに、薄紫の光がほどばしるのも、昼だけに、一層悲壮だった。しかし二千人の白襷隊しろだすきたいは、こう云う砲撃の中にを待ちながら、やはり平生の元気を失わなかった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
木彫もくちょうをやってる彼の人たちの、腕を一つ見てみよう位の気は起りそうなもの、こっちでは随分毎日仕事の合間あいまに石屋のこつこつたたいている処を見て、もうあの獅子の頭が見えて来た
おもなる仕事しごと矢張やは御神前ごしんぜん静座せいざして精神統一せいしんとういつをやるのでございますが、ただ合間あいま合間あいまわたくしはよく室外そとて、四辺あたり景色けしきながめたり、とりこえみみをすませたりするようになりました。
正吉しょうきちは、つとめるようになってから、こんな場所ばしょへは、先輩せんぱいにつれられたり、また社員しゃいんたちときたことがあるけれど、小原おばら高橋たかはしも、きわめてまれなことだけに、はなし合間あいまに、あたまげて
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
生活難の合間あいま合間に一頁二頁と筆をった事はあるが、きょうもよおすと、すぐやめねばならぬほど、うえさむさは容赦なくわれを追うてくる。この容子ようすでは当分仕事らしい仕事は出来そうもない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは彼に巻きつき、四肢を緊めつけしぼりあげ、その怖ろしい分泌物を彼の全身にみ込ませるのだった。彼は涙をぼろぼろこぼしながら、敵に投げつける呪詛の文句の合間あいま合間あいまに神に祈った。
シューラはきだした。そして、なみだ合間あいまにこういった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
夕方ゆうがたになると、保名やすなはたけからいてあたらしい野菜やさいや、仕事しごと合間あいまもりった小鳥ことりをぶらげてかえってますと、くず子供こどもいてにっこりわらいながら出てて、おっとむかえました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
現に彼処あすこに教場に先生の机がある。先ず私たちは時間の合間あいま合間に砂糖わりの豌豆豆えんどうまめを買って来て教場の中で食べる。その豌豆豆が残るとその残った豌豆豆を先生の机の抽斗ひきだしの中に入れて置く。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)