取揃とりそろ)” の例文
その外にまだ珍らしいものばかり取揃とりそろえたいと思いますから用意の出来次第御通知申上げます。どうぞ是非阿父様とお二人でいらしって下さい
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
床間とこのまには百合の花も在らず煌々こうこうたる燈火ともしびの下に座を設け、ぜんを据ゑてかたはら手焙てあぶりを置き、茶器食籠じきろうなど取揃とりそろへて、この一目さすがに旅のつかれを忘るべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いそいで御頼申升よ御藥取に𢌞らねばとかけ行に、女房も無言で塵除ちりよけはづして金紋の車念入に拂、あづかりの前掛てうちん取揃とりそろえれば亭主の仕度も出來ぬ
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
さてまた文右衞門の女房は勝手かつてにて番茶ばんちやを入れ朶菓子だぐわしなどを取揃とりそろへて持出もちいでたるに長八は大橋が義氣ぎきの強きを彌々感じ心中に成程なるほどかくまで零落れいらくなしても武士の道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一巻ずつそれを御丁寧に取揃とりそろえて、いよいよ恭しく三位の前にし進めると、三位は座右から、あらかじめ備えられた一つの彩色図を出して、大久保に示し
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
廊下にとも金行灯かなあんどん二尺にしゃく四方もある鉄網てつあみ作りの行灯を何十台も作り、そのほか提灯ちょうちん手燭てしょく、ボンボリ、蝋燭ろうそく等に至るまで一切取揃とりそろえて船に積込つみこんだその趣向は
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
不味まづさうに取揃とりそろへられた晝食ひるめしへると、かれ兩手りやうてむねんでかんがへながら室内しつないあるはじめる。其中そのうちに四る。五る、なほかれかんがへながらあるいてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
騷ぎは昨夜の宵のうちで、部屋の血も一應は清めてありますが、何も彼もまだ其儘で、お鮒の死骸は、部屋の隅に寢かしたまゝ、その枕元の供へ物も、まだ取揃とりそろはぬまゝです。
翌々日は整然ちゃんと結構な品物ばかり取揃とりそろえて風呂敷に包み、大伴蟠龍軒の名前を聞いてるから、本所割下水へくと、結構なあつらえ物をした上に始めての交際つきあいだと云うので、多分の目録をくれ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
取揃とりそろえて少しも座右から離さなかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
不味まずそうに取揃とりそろえられた昼食ひるめしえると、かれ両手りょうてむねんでかんがえながら室内しつないあるはじめる。そのうちに四る。五る、なおかれかんがえながらあるいている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
持て來し國土産くにみやげと心もあつ紙袋かみぶくろ蕎麥粉そばこ饂飩粉うどんこ取揃とりそろへ長庵の前へ差出せば然もうれしげに禮をのべの中にあつらおきさけさかな居間ゐまならべサア寛々ゆる/\と久しぶりにて何は無とも一こんくまんと弟十兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
必要物は一円か二円の鍋をさえ買わないで贅沢物には五百円も千円もする名画をかけておくのはどういうわけか。人の家庭は先ず生活上の必要物から取揃とりそろえてその後に贅沢物を買わねばならん。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
出しやりし後に天一をよびちかづけ今日は次助佐助は客人きやくじんの山案内につかはし留主なれば太儀ながら靈具れいぐは其方仕つるべしと云に天一かしこまり品々の靈具を取揃とりそろへ先住のつかへ供にとゆくあとより天忠は殊勝氣しゆしようげ法衣ほふい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)