北側きたがは)” の例文
卯平うへい田圃たんぼいて北側きたがはみちあるいたのでかれにはこと/″\夜明よあけごとしろつめたいしももつおほはれてはたけのみがうつつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其方そのかたさしてあゆむ人はみな大尉たいゐかうを送るの人なるべし、両国橋りやうごくばしにさしかゝりしは午前七時三十分、や橋の北側きたがは人垣ひとがきたちつどひ、川上かはかみはるかに見やりて、みどりかすむ筑波つくばの山も
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
この火山島かざんとう直徑ちよつけいわづか三粁さんきろめーとる小圓錐しようえんすいであつて、その北側きたがは人口じんこう二千五百にせんごひやくまちがあり、北西ほくせい八合目はちごうめ噴火口ふんかこうがある。火孔かこう三箇さんこ竝立へいりつして鎔岩ようがんたゝへ、數分間すうふんかんおきにこればしてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
どうしてこの明るい家の中に、こんなくらさがあるのだらうとかんがへた。北側きたがはに一れんかべがあるこれだ。——しかし、私は間もなく周囲しうゐの庭にみだれてゐるとりどりのはないろまよひ出した。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
眼に入るものといへば何時も眼に馴れたものばかりだ………北側きたがはのスリガラスの天井、其所そこから射込さしこむ弱い光線、うす小豆色あづきいろかべの色と同じやうな色の絨繵じうたん、今は休息きうそくしてゐる煖爐だんろ、バツクのきれ
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
北側きたがはとこがあるので、申譯まをしわけためへんぢくけて、其前そのまへ朱泥しゆでいいろをしたせつ花活はないけかざつてある。欄間らんまにはがくなにもない。たゞ眞鍮しんちゆう折釘丈をれくぎだけが二ほんひかつてゐる。其他そのたには硝子戸がらすどつた書棚しよだなひとつある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)