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匕首
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あひくち
ふりがな文庫
“
匕首
(
あひくち
)” の例文
眞新しい紅白の鈴の
緒
(
を
)
で縛り上げられた中年者の男が、二た突き三突き、
匕首
(
あひくち
)
で
刺
(
さ
)
されて、見るも
無慙
(
むざん
)
な死にやうをして居るのです。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼女はその
匕首
(
あひくち
)
を身辺から離さないで、最後の最後の用意としてゐた。さうした最後の用意が、如何なる場合にも、彼女を勇気付けた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
わしはその時これまでついぞ経験したことのない得体の知れない悪魔が、わしの心の奥で
匕首
(
あひくち
)
のやうな白い歯を見せて笑つてゐるのを見つけたのだ。
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
初め
剃刀
(
かみそり
)
を
弄
(
いぢ
)
つてゐたのを看護婦が
騙
(
だま
)
して取り上げたんやが、其の次ぎにまた
匕首
(
あひくち
)
を弄つてたのを見付けたんで、取り上げて了ふと、それから
暴
(
あば
)
れ出したんだすな。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
あんないけない奴だし、——それに始終
匕首
(
あひくち
)
を持つてゐると言ふんぢや無いの。なんしろ昨日の今日だからね。又、しよびかれたりしたんぢや始まらないからね。いゝね?
疵だらけのお秋
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
▼ もっと見る
直
(
すぐ
)
に
風呂敷
(
ふろしき
)
の結び目がずつと
抜
(
ぬ
)
けてしまつて、
後
(
うしろ
)
へ荷物を
投
(
はふ
)
り出し、
直
(
すぐ
)
と
匕首
(
あひくち
)
を
抜
(
ぬ
)
いて
追剥
(
おひはぎ
)
と
闘
(
たゝか
)
ふくらゐでなければ、
迚
(
とて
)
も
薬屋
(
くすりや
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ、
私
(
わたし
)
が
行
(
ゆ
)
けば大丈夫でございます
塩原多助旅日記
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
高島田
(
たかしまだ
)
の
前髮
(
まへがみ
)
に
冷
(
つめた
)
き
刃
(
やいば
)
あり、
窓
(
まど
)
を
貫
(
つらぬ
)
くは
簾
(
すだれ
)
なす
氷柱
(
つらゝ
)
にこそ。カチリと
音
(
おと
)
して
折
(
を
)
つて
透
(
す
)
かしぬ。
人
(
ひと
)
のもし
窺
(
うかゞ
)
はば、いと
切
(
せ
)
めて
血
(
ち
)
を
迸
(
ほとばし
)
らす
匕首
(
あひくち
)
とや
驚
(
おどろ
)
かん。
新婦
(
よめぎみ
)
は
唇
(
くちびる
)
に
含
(
ふく
)
みて
微笑
(
ほゝゑ
)
みぬ。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
壻この約を婦に聞きて、婦の衣裳を纏ひ、婦の
面紗
(
おもぎぬ
)
を被りて出でぬ。好くこそ來つれと引き寄せ給ふ殿の胸には、
匕首
(
あひくち
)
の刃深く刺されぬ。これは昔がたりなり。われも此の如き貴人を知りたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
君もし血気の壮士なりとせんか、
当
(
まさ
)
に
匕首
(
あひくち
)
を懐にして、先生を刺さんと誓ひしなるべし。その文を猥談と称するもの明朝に
枝山
(
しざん
)
祝允明
(
しゆくいんめい
)
あり。允明、字は
希哲
(
きてつ
)
、
少
(
をさな
)
きより文辞を攻め、奇気
甚
(
はなはだ
)
縦横なり。
八宝飯
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
覆面も 麻藥も
鑢
(
やすり
)
も
匕首
(
あひくち
)
も 七つ道具はそろつてゐる
駱駝の瘤にまたがつて
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
東照公の横ツ腹に
匕首
(
あひくち
)
を加へたものである。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
匕首
(
あひくち
)
の
鞘
(
さや
)
が一本、
蝋塗
(
ろぬり
)
のありふれた品で、あんなのは何處にでもありますが、——それが六七間離れた橋板の上に棄ててありました」
銭形平次捕物控:166 花見の果て
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一句一句鋭い
匕首
(
あひくち
)
の切先で、抉られるやうに、読み了つた直也は最後の一章に来ると、鉄槌で横ざまに殴り付けられたやうな、恐ろしい打撃を受けた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「大事の/\
匕首
(
あひくち
)
がない。
腎張
(
じんばり
)
さんが盜んだんやろ、お父さんに申譯おまへん。」
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
匕首
(
あひくち
)
でも脇差でも出刄庖丁でもなく、
狼
(
おほかみ
)
の
牙
(
きば
)
でないとすれば、その武器は佐太郎には想像も出來なかつた種類のものらしいのです。
銭形平次捕物控:198 狼の牙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
……この
匕首
(
あひくち
)
はなあ、阿母さんのお父さん……竹ちやんの
祖父
(
おぢい
)
さんの
記念
(
かたみ
)
や、これをお前にあげるよつてなア、……阿母さんが死んだら、これを阿母さんやと思うて、大事にするんやで。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
匕首
(
あひくち
)
で相手を刺し殺す代りに、精神的にあの男を滅ぼして御覧に入れますから。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「それから取つ組合ひが始まつたが、恐ろしく強い野郎で、その上
匕首
(
あひくち
)
を持つてやがる。切尖を除けるはずみに、鼠坂を
逆落
(
さかおと
)
しだ」
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
平次は落着拂つてその下を見ると、底の方へ押込むやうに入れてあるのは、
一振
(
ひとふり
)
の
匕首
(
あひくち
)
、拔いて見ると、思ひの外の凄い道具です。
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お樂はすつかり氣が變つて源助の言ふ事を聞かなかつたので、前から抱き寄せるやうにして、隱し持つた
匕首
(
あひくち
)
で一と突きにしたのです。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それはもういゝ。が、一つだけ、小三郎が踊り舞臺の後ろの樂屋へ、
匕首
(
あひくち
)
を忘れて來たと言つてるが、それを師匠は見なかつたのか」
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
間違ひもなく鋭い
匕首
(
あひくち
)
で一とゑぐりにされ、曲者は匕首を水の中に捨てて、
舷
(
ふなばた
)
の裏から、半弓の矢を取出し、皆んなに見せたのでせう。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「變でせう、親分、——勘六ほどの惡黨が、人を殺した現場に、ノツソリ血だらけな
匕首
(
あひくち
)
を持つて立つてゐる筈はないぢやありませんか」
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
傷口は
喉笛
(
のどぶえ
)
から右耳の下へ
斜
(
なゝめ
)
に割いた凄まじいもので、得物は
匕首
(
あひくち
)
か脇差か、肉のハゼて居るところを見ると、相當刄の厚いものらしく
銭形平次捕物控:203 死人の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お前が
匕首
(
あひくち
)
で突いたのは、忠義な下女のお常だ。振袖の下へ
鎖帷子
(
くさりかたびら
)
を着せて置いたので、
力任
(
ちからまか
)
せで
刺
(
さ
)
した匕首も、五分とは斬らなかつたよ
銭形平次捕物控:100 ガラツ八祝言
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
平次は龍の口から取つた
匕首
(
あひくち
)
のこみを其穴にはめると、匕首は丁度床に植ゑたやうに、物凄い刄先を上にしてピタリと
樹
(
た
)
ちます。
銭形平次捕物控:016 人魚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
輕捷
(
けいせふ
)
で素早くて、手に了へない上に、何處に隱し持つて居たか、細い
錐
(
きり
)
のやうな
匕首
(
あひくち
)
が、相手の急所を狙つて縱横に飛ぶのです。
銭形平次捕物控:319 真珠太夫
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
主人の久兵衞は、
匕首
(
あひくち
)
らしいもので、
喉
(
のど
)
をゑぐられてこと切れ、その側に内儀のお篠は氣を
喪
(
うしな
)
つたまゝ、縛られてゐるではありませんか。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「町内の
油蟲
(
あぶらむし
)
——
釣鐘
(
つりがね
)
の勘六が、血だらけの
匕首
(
あひくち
)
を持つて、ぼんやり立つてゐるところを、多勢の人に見られてしまつたんで」
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「例へばだよ八、——そいつは自害でなくて殺しで、死んでから、
下手人
(
げしゆにん
)
が死體に
匕首
(
あひくち
)
を握らせたとお前は言ふつもりだらう」
銭形平次捕物控:158 風呂場の秘密
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
右の大動脈を切つて、それはひどい血でしたが、死骸の右手には、血だらけの
匕首
(
あひくち
)
を持つて居り、自害と見られないこともなかつたのです。
銭形平次捕物控:308 秋祭りの夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それに、わざ/\自分が忘れて行つた
匕首
(
あひくち
)
で、そんなことをする馬鹿もないでせう。その上、猪之松が上州から來たのはお秀の世話ですよ。
銭形平次捕物控:125 青い帯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
外へ出て少し歩くと、鼻の先は直ぐ新場橋、
濠
(
ほり
)
の水は汚れて、
匕首
(
あひくち
)
の一本や二本呑んだところで容易に搜しやうはありません。
銭形平次捕物控:146 秤座政談
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
危機
(
きき
)
一髮のところへ、平次得意の投げ錢が飛びました。二の腕の
關節
(
くわんせつ
)
を
永樂錢
(
えいらくせん
)
に打たれて、思はず
匕首
(
あひくち
)
を取落したところへ、飛込んだ平次。
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それにしちや、
匕首
(
あひくち
)
のないのが變ぢやありませんか。曲者は鞘だけ捨てて、血染の刄物を持つて逃げたことになりますが」
銭形平次捕物控:166 花見の果て
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
あわてて抱き起しましたが、最早虫の息もなく、
匕首
(
あひくち
)
か何にかで喉笛を一とゑぐりされて、聲も立てずに死んだことでせう。
銭形平次捕物控:214 鼬小僧の正体
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「下男の爲吉ですよ。裏門の外で、土手つ腹をゑぐられて、
匕首
(
あひくち
)
は、爲吉本人の物だから、だらしが無いぢやありませんか」
銭形平次捕物控:267 百草園の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
これは人に切られたものとわかり、よく突つ込んで訊くと、右太吉との
嫉妬
(
しつと
)
の爭ひから、
匕首
(
あひくち
)
で斬られた傷とわかりました。
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ハツハツ、むきになりやがつたな。まア宜い、
匕首
(
あひくち
)
の鞘は暮までに搜すとして、矢張り元柳橋のお幾のところへ行かうか」
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、便所の
草履
(
ざうり
)
をはいて細工をしたり、
匕首
(
あひくち
)
を聟の部屋の
花瓶
(
くわびん
)
に入れるやうなことは、品吉でなければ出來ない藝當です。
銭形平次捕物控:100 ガラツ八祝言
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
三好屋の隱居を殺したのも、植惣の主人を刺したのも、同じ
匕首
(
あひくち
)
らしく、唯一と突で急所を誤らなかつたのは、何と言つても恐ろしい手際です。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「もう一つ、
匕首
(
あひくち
)
は誰の品か、判らなきや、何處から出たか搜してくれ、これは下つ引を二三人歩かせたら、判るだらう」
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
わざと自分の
匕首
(
あひくち
)
で爺やを刺したのは金之丞の喰へないところで、錢形平次の智惠の底の底まで
見破
(
みやぶ
)
つたつもりの細工さ。
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「足跡や雨戸の氣のきかない細工を見ると、下手人は間違ひもなく家の中のものだが、娘の
喉
(
のど
)
に突つ立つてゐる
匕首
(
あひくち
)
は、誰も見たことのない品だ」
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「何んだつて
匕首
(
あひくち
)
なんかで殺しなすつたんです。不都合があるなら無禮討ちにしたつて構はない相手ぢやありませんか」
銭形平次捕物控:106 懐ろ鏡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
成程さう言へば血潮は刄形に附いて居て、自分で自分の着物で
匕首
(
あひくち
)
を拭かなければ、こんな型が付く道理はありません。
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
音松は空家の奧の六疊の押入に首を突つ込み、床板を
剥
(
はが
)
したまゝ背中から
匕首
(
あひくち
)
を突つ立てられてこと切れて居たのです。
銭形平次捕物控:110 十万両の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ところで、八。お前も飛んだ命拾ひをしたかも知れないよ。萬七親分の繩目は、俺がどうにでもしてやるが、有太郎の
匕首
(
あひくち
)
は防ぎやうがないぜ」
銭形平次捕物控:214 鼬小僧の正体
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
傷は右首筋、
匕首
(
あひくち
)
か何んかで、廻しながらザクリと切つたもの、返り血を受けないために、恐らくは後ろから手を廻して刄物を引いたものでせう。
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
主人廣田利右衞門の寢間の用
箪笥
(
だんす
)
が開いて、中を掻き廻した上、時計が無くなつてゐるし、仕事場では弟子の爲三郎といふのが、
匕首
(
あひくち
)
で正面から胸を
銭形平次捕物控:184 御時計師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“匕首”の解説
匕首(あいくち、ひしゅ)または合口(あいくち)は、鍔(つば)の無い短刀のこと。本来の日本語では「合口」であったが、中国の「匕首」(ひしゅ、)と混同され、現在はどちらの表記でも「あいくち」で意味が通る。また、本来の「匕首」は、その形状・定義も合口とは厳密には異なる。
(出典:Wikipedia)
匕
漢検1級
部首:⼔
2画
首
常用漢字
小2
部首:⾸
9画
“匕首”で始まる語句
匕首傷
匕首拵
匕首一閃