依怙贔屓えこひいき)” の例文
まあ、こうした点でですな、依怙贔屓えこひいきと言っちゃ聞えが悪いが、われわれもお坊様のことではあり、道中十分に気を配るつもりですがね。
従って批判する場合、依怙贔屓えこひいきがないといえよう。うなぎの焼き方についても、東京だ大阪だと片意地かたいじはいわないが、まず批判してみよう。
鰻の話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「待ってくれ。そう言われると、おれが宿場の世話をした時分には、なんだか依怙贔屓えこひいきでもしたように聞こえる。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すると私の顔をじっと見ていたが、何を云い出すかと思うと、奥さんは依怙贔屓えこひいきをしていけない、井上ばかり大事にして僕を疎外する、と云うんでしょう。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
世には判官贔屓ほうがんびいきという言葉があるといって、よく、義経の悲劇的美化や同情に反駁はんばくする者もあるが、しかし、頼朝もずいぶん依怙贔屓えこひいきの強い方の人である。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでも、きざに、とりすまして、その三種類の外国煙草を、依怙贔屓えこひいきなく、一本ずつ、順々に吸ってみる。
秋風記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
……依怙贔屓えこひいきになりますから、ありようをざっくばらんに申上げますが、どちらかといえば、鷹にとんび
ミネは閑子が女教師時代に依怙贔屓えこひいきのなさで同僚と気が合わなかったこと、幾つかあった縁談の相手が、いつも経済力のある女としての彼女を求めることへの反発から
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
去年使ふてやつた恩も忘れ上人様に胡麻摺り込んで、たつ此度こんどの仕事をうと身の分も知らずに願ひを上げたとやら、清吉の話しでは上人様に依怙贔屓えこひいき御情おこゝろはあつても
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
能楽上の一大倶楽部クラブを起し、天下の有志を集めて依怙贔屓えこひいきなく金春こんぱる金剛こんごう観世かんぜ宝生ほうしょう喜多きたなどいふ仕手しての五流は勿論、わきの諸流も笛、つづみ、太鼓などの囃子方に至るまで
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
依怙贔屓えこひいきでない程度で、「地上のにじ」と題した彼女の作品が、どうにか二等くらいに当選すべき運命にまでぎつけた時になって、栗原夫人の名をつかったことが暴露した結果
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ただその中の善い人間即ちノアという者を救うたというような依怙贔屓えこひいきをする者である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
神様は依怙贔屓えこひいきなしに人間の一人一人に、その素質にふさわしい使命を授けてくれるのだという気がしたのである。獣医は体温器を抜きとって、見しらべてから助手の手に渡した。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
始終しじゅうう身構えにして居るから、私の処には官軍方の人も颯々さっさと来れば、賊軍の人も颯々と出入りして居て、私は官でも賊でも一切いっさい構わぬ、何方どちらに向ても依怙贔屓えこひいきなしにあつかって居るから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もとより依怙贔屓えこひいきによってオーロラのほうをすぐれてると思ったが、そういうふうにして比較してるうちに、たがいに知りもしない二人の娘の間に、架空の友情を頭の中で組み立てるようになり
「それでも、火には依怙贔屓えこひいきというものが絶対にないではございませんか、焼けるものと、焼けないものとは、火の力の度の加減があるのみで、この地上で、火に焼けないものとて、何一つもありません」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
依怙贔屓えこひいきをするなどという陰口もうるさい。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たゞす役目なり奉行ぶぎやうには依怙贔屓えこひいきありてそれがしばかり片落かたおとしに爲給したまふならんと言せもはて大岡殿おほをかどの發打はつた白眼にらま依怙贔屓えこひいきとは慮外りよぐわい千萬なり此梅を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一、荷物送り出しの節、心安き牛方にても、初めて参りそうろう牛方にても、同様に御扱い下され、すべて今渡いまどの問屋同様に、依怙贔屓えこひいきなきよう願いたきこと。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それみろ。——神仏にもわからぬことを、どうして、僧正にだけわかるか。ごまかしだっ、依怙贔屓えこひいきだっ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
去年使うてやった恩も忘れ上人様に胡麻摺ごますり込んで、たってこん度の仕事をしょうと身の分も知らずに願いを上げたとやら、清吉せいきちの話しでは上人様に依怙贔屓えこひいきのおこころはあっても
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彦三郎御長屋中に怪敷あやしきひとあるとの事なれば此御家主へ相談は如何いかゞに候はんとたづぬるに權三打笑うちわらひ爰の家主いへぬしは店子の中に依怙贔屓えこひいきおほく下の者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とかく角十の取り扱い方には依怙贔屓えこひいきがあって、駄賃書き込み等の態度は不都合もはなはだしい、このまま双方得心とくしんということにはどうしても行きかねる、今一応仲間のもので相談の上
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
司馬懿しばいの催しに応じて、参軍してから後は、自分より後輩の秦朗しんろうという者を重用して、それがしを軽んじるのみか、軍功を依怙贔屓えこひいきになし、あまっさえそれがしが不平を洩らしたと称して
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人手に掛し抔といまはしき儀を訴出る者の有べきことには九助が申上る事而已のみ御取上に相成只々私しを御しかりおそれながら御奉行樣の依怙贔屓えこひいきと申ものと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たしかだから、おれは、この鐘をかんのだ。いいか、考えてもみろ、まだ十歳を出たばかりの範宴を、座主の依怙贔屓えこひいきから、輿論よろんと、非難を押しきって、今朝の大戒を、強行するのじゃないか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
依怙贔屓えこひいきである)と、ののしった一山いっさん大衆だいしゅも、今では、口を黙して
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)