仁慈じんじ)” の例文
先生の仁慈じんじ惻隠そくいん、忠義慨然、呂望りょぼうの才をべ子房の大器をほどこすを。備、これを敬うこと神明の如く、これを望むや山斗さんとの如し。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内藤駿河守正勝は初老を過ごすこと五つであったが、性濶達かったつ豪放で、しかも仁慈じんじというのだから名君の部に属すべきお方、しかし、欠点は豪酒にあった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そんな曖昧あいまいな動物かも知れないものは勿論仁慈じんじに富めるビジテリアン諸氏は食べたり殺したりしないだろう。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いかに自分は仁慈じんじの君主であるか、いかに自分は天意を受けて君主の寵位に在るものであるかを、どうして国民に知らしめようかしらと苦心した帝王が東洋の昔にも西洋の昔にも沢山あるが
見て大勢の人々成程なるほど天下の名奉行とほめるも道理もつとも此混雜このこんざつの中にても仁慈じんじ御差※おさしづされば其下に使へる役人もかくの如しと感じあへり此の時お政は大岡殿と聞て悦ぶこと限りなく是は全く神佛かみほとけ御引合おひきあはせ成べし既に駈込訴訟かけこみそしよう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
めづらしやおたかさま今日けふ御入來おいで如何どういふかぜふきまはしか一昨日をとゝひのお稽古けいこにも其前そのまへもおかほつひにおせなさらずお師匠ししやうさまもみなさまも大抵たいていでないおあんがな一日いちにちうはさしてをりましたとうれしげに出迎でむか稽古けいこ朋輩ほうばい錦野にしきのはなばれて醫學士いがくしいもと博愛はくあい仁慈じんじきこえたかきあに
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小楠公しょうなんこう仁慈じんじは、もし小楠公のなした戦いが、ただの武家と武家の権力争いや、領地のうばいあいの如き合戦だったら、あの大慈悲心はわきあがって来なかったにちがいない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ながし先頃大岡殿の申されしに父富右衞門は蘇生そせいせまじきものにもあらずとは此事なりと喜悦よろこぶこと限り無く只々たゞ/\ひとへにめい御奉行大岡樣の御仁慈じんじなりと奉行所の方に向ひ伏拜ふしをがみ/\感涙かんるゐとゞめあへざりしも道理だうりなりさてこゝに亦穀屋平兵衞のせがれ平吉は段々だん/\吟味ぎんみの末杉戸屋富右衞門は全く無實むじつの罪なること明白にあらはれ其節の盜賊たうぞく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかしご仁慈じんじあついお心より、求めるに求めがたく、お悩みのご様子にちがいないと、それがしどもの凡慮ぼんりょを以ても、お察しいたしておりましたので……かくは計ろうて参りました。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かうむり御吟味あきらかなる而已のみならず御仁慈じんじの程まことに以て恐れ入奉つる何さま世間のうはさに相違も之無き賢明けんめいの御奉行なり其御裁許ごさいきよあづかること此身の本望ほんまうと申すべしかへす/″\も私しの惡行今更後悔仕つり候然る上は三五郎女房にようばうふみ元栗橋の隱亡をんばう彌十等私しへかゝり合の者共の儀は私し故に罪科ざいくわも蒙り候ことゝ存じ奉つるに付わたくし身分は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)