不可いけね)” の例文
小間使が言った千破矢の若君という御容子ごようすはどこへやら、これならば、不可いけねえの、居やがるのと、いけぞんざいなことも言いそうな滝太郎。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
していらっしゃるのだ、それだのにお前が早桶の側へ行って、おい/\泣くもんだから不可いけねえよ
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「どうも不可いけねえ、固くるしいね。あっしにゃアどうにも太刀打ち出来ねえ。へいへいどうぞお心安くね。お尋ねにあずかりやした山東庵京伝、正に私でごぜえやす。とこうバラケンにゆきやしょう。アッハハハハどうでげすな?」
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
無法なことをいうと吃逆しゃっくりを出させるぞ。ヘッ、不可いけねえ、ヘッ、いやどうしやがった、ヘッ、何のこッたい、ヘッ驚きましたな。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「生意気なことをいったって、不可いけねえや、かしこまってるなあ冬のこッた。ござったのは食物でみねえ、夏向は恐れるぜ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浮舟さんが燗部屋かんべやさがっていて、七日なぬかばかり腰が立たねえでさ、夏のこッた、湯へへえっちゃあ不可いけねえと固く留められていたのを、悪汗わるあせひどいといって
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……あれ、あんなあの、握飯にぎりめしこさえるような手附をされる、とその手で揉まれるかと思ったばかりで、もうたまらなく擽ったい。どうも、ああ、こりゃ不可いけねえ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもつたのは空頼そらだのみで「あゝ、わるいな、あれが不可いけねえ。……なかへふすぶつたけむりつのはあたらしくえついたんで……」ととほりかゝりの消防夫しごとしつてとほつた——
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「これから女形おんながた演処しどころなんだぜ。居所がわりになるんだけれど、今度は亡者じゃねえよ、きてる娘の役だもの。裸では不可いけねえや、前垂まえだれを貸しとくれよ。誰か、」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、中洲の清元の。なるほどこいつあ大望だ、親の敵より大事おおごとに違えねえ、しかし飛んだ気になったぜ、愛、おめえありゃあ不可いけねえや、まるで組合が違ってらあ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そりゃ不可いけねえだ。何でも、は、お前様めえさまに気を着けて、のみにもささせるなという、おっしゃりつけだアもの。眼を潰すなんてあてごともない。飛んだことをいわっしゃる。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええ、驚かしちゃあ不可いけねえ、張店はりみせ遊女おいらんに時刻を聞くのと、十五日すぎに日をいうなあ、大の禁物だ。年代記にも野暮の骨頂としてございますな。しかも今年はうるうがねえ。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手前その病気だけは治さないと不可いけねえぜと、わっしあこれでもたまにゃあ親身になっていうんです、すると何と、殺されても恨まないから五合ごんつく買っとくんなさい、とこうでしょう
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おい、それだつても無銭たゞぢやあ不可いけねえよはゞかりながら神方万金丹しんぱうまんきんたん、一てふびやくだ、しくばひな、坊主ばうず報捨はうしやをするやうなつみつくらねえ、それともうだおまへいふことをくか
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御容子ごようすにも御身分にもお似合い遊ばさない、ぞんざいなことばっかし。不可いけねえだの、居やがるだのッて、そんなことは御邸の車夫だって、部屋へ下って下の者同士でなければ申しません。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そばへ来られてはなんねえだ、とづかを刻んで、急いでしゃくると、はあ、不可いけねえ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
波がたいらだで、なおと不可いけねえ。火のやつめ、苦なしでふわふわとのしおった、その時は、おらが漕いでいる艪の方へさ、ぶくぶくと泳いで来たが、急にぼやっと拡がった、狸の睾丸きんたま八畳敷はちじょうじきよ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「むむ、じゃ話すだがね、おらが饒舌しゃべったって、みんなにいっちゃ不可いけねえだぜ。」
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
学海施一雪紅楼夢——や不可いけねえ。あのひげが白い頸脚えりあしへ触るようだ。女教員渚の方は閑話休題として、前刻さっき入って行った氷月の小座敷に天狗てんぐの面でもかかっていやしないか、悪くひねって払子ほっすなぞが。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(こいつあ口伝くでんだ、見ちゃ不可いけねえ、目をつぶっていておくんなさい。)
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なにが、不可いけねえ。なん内職ないしよくぐれえ。」
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お医者は直ぐに呼んで来たがね、もう不可いけねえッて、今しがた帰ったんで。わっしあ、ぼうとして坐っていましたが、何でもこりゃ先生に来て貰わなくちゃ、仕様がないと、今やっと気が附いて飛んで行こうと思った処で。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不可いけねえぜ。」と仮色こわいろのように云った。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不可いけねえ不可え、薄目を開けてら。)
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「素直にかねえじゃ不可いけねえぞ。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……不可いけねえてんだ、お前さん。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不可いけねえ。」
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)