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一場
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いちじょう
ふりがな文庫
“
一場
(
いちじょう
)” の例文
帽子を
目深
(
まぶか
)
に、
外套
(
がいとう
)
の襟を立てて、
件
(
くだん
)
の紫の煙を吹きながら、目ばかり出したその清い目で、
一場
(
いちじょう
)
の光景を
屹
(
きっ
)
と
瞻
(
みまも
)
っていたことを。
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それと共に、
妄
(
みだ
)
りに自分で
拵
(
こしら
)
えたこの
一場
(
いちじょう
)
の架空劇をよそ目に見て、その
荒誕
(
こうたん
)
を
冷笑
(
せせらわら
)
う理智の力が、もう彼の中心に働らいていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女流の文学者と交際し神田青年会館に開かれる或婦人雑誌主催の文芸講演会に
臨
(
のぞ
)
み
一場
(
いちじょう
)
の演説をなす一段に至って、筆を
擱
(
お
)
いて歎息した。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そしてかかる惨劇の起る動機はと問えば、多くは地上の権力者の
只
(
ただ
)
一片の野心、
只
(
ただ
)
一場
(
いちじょう
)
の出来心に過ぎないのである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
いわばそれらが舞台をなし、いつかしら、ここの群集のうえには、
一場
(
いちじょう
)
の法楽の天国が、理窟なしに
降
(
お
)
りていた。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
に幕府が最後の死力を張らずしてその政府を
解
(
と
)
きたるは時勢に応じて
好
(
よ
)
き
手際
(
てぎわ
)
なりとて、
妙
(
みょう
)
に説を
作
(
な
)
すものあれども、
一場
(
いちじょう
)
の
遁辞
(
とんじ
)
口実
(
こうじつ
)
たるに過ぎず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
中川「しかし
一場
(
いちじょう
)
の談話位ではとても委しい事を申上げられません。西洋の料理法には必ず養鶏法の伴うものですから私も近い内に家庭の養鶏法と題する書物を ...
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
動かしたのなら有難いけれども多分
一場
(
いちじょう
)
の笑い草にしてやろうという
慰
(
なぐさ
)
み半分のいたずらであるとしか思えなかったしそれに人前で聴かせるほどの自信もなかった。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
妾にも
一場
(
いちじょう
)
の演説をとの勧め
否
(
いな
)
みがたく、ともかくもして
責
(
せ
)
めを
塞
(
ふさ
)
ぎ、更に婦人の設立にかかる婦人
矯風会
(
きょうふうかい
)
に臨みて再び
拙
(
つたな
)
き談話を試み、一同と共に撮影しおわりて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
その後故あって廃業して仕舞い
一場
(
いちじょう
)
の
昔譚
(
むかしばなし
)
を今日に残したその妻も今は
疾
(
と
)
く亡き人の数に入った。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
その小乗の教は一切の事皆式に依りて行へとなり。孔子の道も
孝悌
(
こうてい
)
仁義
(
じんぎ
)
より初めて諸礼法は仏家の小乗なり。その
一以貫之
(
いつもってこれをつらぬく
)
は此教を一にして
執中
(
しっちゅう
)
に至り初て仏家大乗の
一場
(
いちじょう
)
に至る。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
こうしている内にも、女中がこちらへやって来ないものでもない。そうすれば彼は夢の様に助かることが出来るのだ。この苦しみを
一場
(
いちじょう
)
の笑い話として
済
(
すま
)
して了うことが出来るのだ。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
潮音の旧い社友で、土地の歌壇で元老株のお医者さんの
山下秀之助
(
やましたひでのすけ
)
君が
一場
(
いちじょう
)
の歓迎の辞を述べて、これが済むと、また皆が私の方を向く。講演は嫌いだから初めからお断りしてある。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
そこへ
前垂掛
(
まえだれが
)
けの米屋の主人が、「お
鍋
(
なべ
)
や、お鍋や」と手を打ちながら、彼自身よりも
背
(
せ
)
の高い、
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しの下女を呼び出して来た。それから、——筋は話すにも足りない、
一場
(
いちじょう
)
の
俄
(
にわか
)
が始まった。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
正賓は
肋
(
あばら
)
を
傷
(
きずつ
)
けられて卒倒し、
一場
(
いちじょう
)
は無茶苦茶になった。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は
一場
(
いちじょう
)
の
風波
(
ふうは
)
が彼に
齎
(
もたら
)
したこの自信を抱いてひそかに喜こんだ。今までの彼は、お延に対するごとに、
苦手
(
にがて
)
の感をどこかに起さずにいられた事がなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
... 私は
一場
(
いちじょう
)
の
茶話
(
さわ
)
だと思っていましたが上等のアイスクリームは全く紙へ包めるものでしょうか」お登和嬢
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
で——時には、彼らを、床に坐らせ、師範席から高く見おろして、
一場
(
いちじょう
)
の
訓諭
(
くんゆ
)
を
垂
(
た
)
れることがある。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただその命名につきて
一場
(
いちじょう
)
の奇談あり、迷信の
謗
(
そし
)
り
免
(
まぬ
)
かれずとも、事実なれば
記
(
しる
)
しおくべし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
あの手負いが、今まで人に気づかれぬはずはありませんから、その噂が耳ざとい女中達に
伝
(
つたわ
)
っていないとすると、昨夜の事は、いよいよ
一場
(
いちじょう
)
の悪夢に過ぎなかったのかも知れません。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
妾宅の台所にてはお妾が心づくしの手料理白魚の
雲丹焼
(
うにやき
)
が出来上り、それからお取り
膳
(
ぜん
)
の差しつ押えつ、まことにお
浦山吹
(
うらやまぶ
)
きの
一場
(
いちじょう
)
は、次の
巻
(
まき
)
の出づるを待ち給えといいたいところであるが
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「くれぐれも、こよいのことは、水にながされよ。——北ノ庄殿へはわしから申した。なんの、大腹な筑前どののこと、若い者の
一場
(
いちじょう
)
の
戯言
(
ざれごと
)
などに気を悪うするものかと」
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼には夫人の持ってくる偏見と反感を、
一場
(
いちじょう
)
の会見で、充分
引繰
(
ひっく
)
り
返
(
かえ
)
して見せるという覚悟があった。少くともここでそれだけの事をしておかなければ、自分の未来が危なかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
妾は近頃になく心の
清々
(
すかすが
)
しさを感ぜしものから、
譬
(
たと
)
えば
眼
(
まなこ
)
を過ぐる
雲煙
(
うんえん
)
の、再び思いも浮べざりしに、
図
(
はか
)
らずも
他日
(
たじつ
)
この女乞食と、思い
儲
(
もう
)
けぬ処に
邂逅
(
であ
)
いて、小説らしき
一場
(
いちじょう
)
の物語とは成りたるよ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
そこには実に、殆ど信ずべからざる、
一場
(
いちじょう
)
の物語があるのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、そこの
門扉
(
もんぴ
)
へ、一
箭
(
せん
)
を射て引っ返した、などという
一場
(
いちじょう
)
の勇壮なる話もある。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし「菊池千本槍」の起りは、そんな考証にかかわりなく、箱根竹ノ下の合戦のさい、必要上、非常手段として、それに似た物をつかったという
一場
(
いちじょう
)
の戦場談から始まったものだった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“一場”の意味
《名詞》
ある場所。
その場限りであること。
一席、一回。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
場
常用漢字
小2
部首:⼟
12画
“一場”で始まる語句
一場合