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一事
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いちじ
ふりがな文庫
“
一事
(
いちじ
)” の例文
窓外の地上に
落
(
おち
)
散
(
ち
)
っていたガラスの破片にさえ一つの指紋もなかった。この
一事
(
いちじ
)
を
以
(
もっ
)
てしても、賊が並大抵の奴でないことが分るのだ。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
従来の浮世絵が取扱ひ来りし美麗なる画題中に極めて
突飛
(
とっぴ
)
なる醜悪の異分子を
挿入
(
そうにゅう
)
したる
一事
(
いちじ
)
は
甚
(
はなはだ
)
注意すべき事とす。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
けれども、桂正作の父の気象はこの
一事
(
いちじ
)
でも解っている。小松山の
麓
(
ふもと
)
に移ってこの
方
(
かた
)
は、純粋の百姓になって正作の父は働いているのを僕はしばしば見た。
非凡なる凡人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
さしも願はぬ
一事
(
いちじ
)
のみは玉を転ずらんやうに何等の
障
(
さはり
)
も無く
捗取
(
はかど
)
りて、彼が
空
(
むなし
)
く貫一の
便
(
たより
)
を望みし一日にも似ず、三月三日は
忽
(
たちま
)
ち
頭
(
かしら
)
の上に
跳
(
をど
)
り
来
(
きた
)
れるなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
あゝ、
人間
(
にんげん
)
の
萬事
(
ばんじ
)
は
實
(
じつ
)
に
天意
(
てんゐ
)
の
儘
(
まゝ
)
だと、
私
(
わたくし
)
も
深
(
ふか
)
く
心
(
こゝろ
)
に
感
(
かん
)
ずると
共
(
とも
)
に、
忽
(
たちま
)
ち
回想
(
くわいさう
)
した
一事
(
いちじ
)
がある。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
居士
(
コジ
)
は、
人命犯
(
じんめいはん
)
には
必
(
かな
)
らず萬已むを得ざる原因ある
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひ、
財主
(
ざいしゆ
)
の
老婆
(
ろうば
)
が、
貪慾
(
どんよく
)
を
憤
(
いきど
)
ふるのみの
一事
(
いちじ
)
にして
忽
(
たちま
)
ち
殺意
(
さつい
)
を
生
(
せう
)
ずるは殺人犯の原因としては甚だ淺薄なりと
言
(
い
)
ひ
「罪と罰」の殺人罪
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
仍
(
よつ
)
て
速
(
すみやか
)
に
館
(
やかた
)
に
召返
(
めしかへ
)
し、
座
(
ざ
)
に
引
(
ひ
)
いて、
昌黎
(
しやうれい
)
面
(
おもて
)
を
正
(
たゞし
)
うして
云
(
い
)
ふ。
汝
(
なんぢ
)
見
(
み
)
ずや、
市肆
(
しし
)
の
賤類
(
せんるゐ
)
、
朝暮
(
てうぼ
)
の
營
(
いとな
)
みに
齷齪
(
あくさく
)
たるもの、
尚
(
な
)
ほ
一事
(
いちじ
)
の
長
(
ちやう
)
ずるあり、
汝
(
なんぢ
)
學
(
まな
)
ばずして
何
(
なに
)
をかなすと、
叔公
(
をぢさん
)
大目玉
(
おほめだま
)
を
食
(
くら
)
はす。
花間文字
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
この書の
記
(
き
)
する所は、わたくしのために
創聞
(
そうぶん
)
に属するものが
頗
(
すこぶ
)
る多い。
就中
(
なかんずく
)
異
(
い
)
とすべきは、独美に
玄俊
(
げんしゅん
)
という弟があって、それが宇野氏を
娶
(
めと
)
って、二人の間に出来た子が京水だという
一事
(
いちじ
)
である。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
されど
一事
(
いちじ
)
に
即
(
そく
)
し、
一物
(
いちぶつ
)
に
化
(
か
)
するのみが詩人の感興とは云わぬ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鈴江が、捜査係長に
訊
(
たず
)
ねられた
一事
(
いちじ
)
がある。
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼はそれどころではないのだ。この化物みたいな、恐ろしい不可思議力の本体をつきとめること、彼の頭はただその
一事
(
いちじ
)
で一杯になっていたのだ。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これ
一事
(
いちじ
)
を
究
(
きわ
)
め
貫
(
つらぬ
)
かんと欲すればおのづから
関聯
(
かんれん
)
して他の事に及ぶが故なり。
細井広沢
(
ほそいこうたく
)
は書家なれど講談で人の知つたる
堀部安兵衛
(
ほりべやすべえ
)
とは同門の
剣客
(
けんかく
)
にて絵も上手なり。
小説作法
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
この
一事
(
いちじ
)
のみにあらず、お峯は常に夫の共に
謀
(
はか
)
ると謂ふこと無くて、
女童
(
をんなわらべ
)
と
侮
(
あなど
)
れるやうに取合はぬ風あるを、
口惜
(
くちをし
)
くも
可恨
(
うらめし
)
くも、又或時は心細さの
便無
(
たよりな
)
き余に、神を信ずる念は出でて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
(何と驚くべき努力であったろう。彼は午後から、殆ど十時間の間、この
一事
(
いちじ
)
に夢中になっていたのだ)その頃には、用意の洗面器が、(以下二行削除)
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
という様なことを
喋
(
しゃべ
)
った。なぜ、そうしなければならないのか、彼自身にも、はっきり分らなかったけれど、あの
一事
(
いちじ
)
を秘密にして置いては、何だか
拙
(
まず
)
い様に思われた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
皆さん、犯人の智慧の恐ろしさは、この
一事
(
いちじ
)
によっても、はっきりと分るではありませんか。三重渦巻の怪指紋は、その紋様が象徴している通り、実に三重の大きな役割を勤めたのです。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
引越しをして、空家と見せかけて、そこの天井裏に隠れているなんて、悪魔でなくては考えつけないことだよ。この
一事
(
いちじ
)
からでも、君があの恐ろしい殺人者であることは、立派に証拠立てられている。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“一事”の意味
《名詞》
一つの事柄や事件。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
事
常用漢字
小3
部首:⼅
8画
“一事”で始まる語句
一事件
一事狂者