騰貴とうき)” の例文
最近一層騰貴とうきした諸材料のことなどに考え及び、あいつ、法螺ほらを吹いたのかと考え、どうも変だ、おかしい、おかしい、と呟いた。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
およ本年ほんねんの一ぐわつすぎには解禁後かいきんご推定相場すゐていさうばである四十九ドルぶんの一乃至ないし四十九ドルぶんの三まで騰貴とうきすることはたしか算定さんてい出來できたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
而して今日物価の騰貴とうきは非常なもので、ほとんどとどまるところを知らずという有様であるから、国民生活は早晩非常な困難に陥ることと思う。
〔憲政本党〕総理退任の辞 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
鼠の価は最初は二銭、後に諸色しょしき騰貴とうきと共に、改めて五銭と定められた。その間にしばらく割増金つき抽籤ちゅうせん券をもって、鼠を引換えた時代があった。
前の鍋は何でも四、五年前に七十銭だったとかであったが、その後物価が非常に騰貴とうきしていたので、今度のは一円二十銭だったとかであった。
この勢で、ドシドシ争議が起り、ドシドシ労働者の言分が通って行ったならば、極度の物価騰貴とうきを招来するか、しからざれば生産工業全滅である。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
千歳村五百五十戸の中、小作が六割にも上って居る。大面積だいめんせきの寺院墓地が出来て耕地減少の結果、小作料は自然騰貴とうきする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この一例をもってみても諸色しょしきが上がるの下がるの、米価が騰貴とうきしたために貧民ひんみんくるしむの、あるいは暴徒が起こるの
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
……なかがせゝつこましく、物價ぶつか騰貴とうきしたのでは、そんな馬鹿ばか眞似まねはしてられない。しかし時節じせつのあのこゑは、わたしおもれずきである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その東南なる北方村、本牧村等に及ぼし、一時はその地方にて家賃宿料の騰貴とうきするに至れり。
故社員の一言今尚精神 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その当時の徳川幕府は金がなかった。むを得ずして悪いかねを造った、随って物価は騰貴とうきした、市民は難渋した。また一方には馴れない工事のために、多数の死人をいだした。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ついで明治五年以前には、半紙が十二文から、十四文、十六文、二十文と騰貴とうきし、酒は一升百二十四文から百三十二文、さらに百四十八文から百六十四文、二百文に急騰した。
酒渇記 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
そなたも知る、長崎屋、あれが、中々、目から鼻に抜けるもうけ師、東の不作と見て、これからますます騰貴とうきすると見込みをつけ、今になって、買入れ、仕込みをいそいでいるのじゃ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
また無雑作むぞうさにそれを引き受けた堀は、物価の騰貴とうき、交際の必要、時代の変化、東京と地方との区別、いろいろ都合の好い材料を勝手に並べ立てて、勤倹一方の父を口説くどおとしたのである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すたりし市邑しゆうはふたたび起りました。新たに町村は設けられました。地価は非常に騰貴とうきしました、あるところにおいては四十年前の百五十倍に達しました。道路と鉄道とは縦横たてよこに築かれました。
この分にてもう二、三日晴れやらずば諸河しょか汎濫はんらん鉄道不通米価いよいよ騰貴とうきいたすべしと存候。さて突然ながらかのお半事このほどいささか気に入らぬ仕儀有之これあり彩牋堂より元の古巣へ引取らせ申候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また輸出時期ゆしゆつじきであるから輸出手形ゆしゆつてがた買取かひとる、うすれば一ぱうからへば爲替かはせ急激きふげきなる騰貴とうきふせぐことが出來できる、爲替かはせ急激きふげきなる騰貴とうきふせれば
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
とは申せ、米価騰貴とうきをお見越しになり、あきないをなされておいでだとうけたまわる、長崎屋さまにはさぞ、お手傷でござりましょう——わたくしは、あのお方にも、一方ならず肩入れを
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
平岡の家は、この十数年来の物価騰貴とうきれて、中流社会が次第々々に切り詰められて行く有様を、住宅の上に善く代表した、もっとも粗悪な見苦しき構えであった。とくに代助にはそう見えた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わりさがつてつた爲替相場かはせさうば貿易ぼうえき改善かいぜんせらるゝにしたがつて段々だん/\騰貴とうきして十一ぐわつ二十一にち短期期限附たんききげんづき金解禁きんかいきん發表前はつぺうぜんには四十八ドルぶんの一となつた。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)