つむ)” の例文
随分沢山たくさんあるんですが、みんなおつむの毛の白いのや、禿げたのばかりで、あなたのような若々しい方は幾人いくたりもありはしません。
焔の中に歌う (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「商売上のお打ち合せなら何処へおいでになるのも御自由でしょうが、梯子段から逆さまにお落ちになると、おつむれますよ」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お顔もおつむも、容赦なんざないんですから、お嬢さんは日傘のまま路傍みちばたへおしゃがみなさる。私はね、前からお抱き申して立ってましたがね。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
軍鶏しゃもの赤毛をおつむにのせて、萌黄もえぎ木綿のおべべをきせたお獅子ししの面を、パックリと背中へ引っくり返して、ほお歯の日和ひより下駄をカラカラ鳴らし
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……しかし、なんですな、こうして、真上からあなたのおつむを拝見すると、なかなか奇観ですよ、真鍮の燈明皿にとうすみが一本載っかっているようですぜ
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
下しなさるところなんだ、どうあっても、七兵衛が先に、お前さんのおつむへ手を上げるというわけにゃいかねえ
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
王様は重いおつむまくらの上にもたげ、疱瘡の神は醜い顔を王様のお体から離してこの歌をきゝました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
私は若様が憎いというより、奥様の態度が癪に触ったのでした。私が若様に近寄って革の手袋をはめて上げながら、余りのお可愛さに思わずちょっとおつむを撫でました。
美人鷹匠 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
正午ひるも近づけばお峰は伯父への約束こゝろもと無く、御新造が御機嫌を見はからふに暇も無ければ、僅かの手すきにつむりの手拭ひを丸めて、此ほどより願ひましたる事
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あなた、おつむを砂糖の精でこするといゝわ、さうすると毛が生え出すかも知れない事よ。」
お嫁にもらうおつもりになったでしょ、そのことがあなたのおつむに残っていて、まだ約束もなにもなさらないのに、まるで許婚かなんかのような気持でいらっしゃるんですわ
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
野袴のばかま穿き、編笠あみがさをかむった、立派なみなりのお侍様五人が、半僧半俗といったような、まるめたおつむ頭巾ずきんをいただかれ、羅織うすもの被風ひふをお羽織りになられた、気高いお方を守り
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
近ごろひどくおつむをぶったことがあって、どうかすると、すぐ気を失うのが癖になるかもしれないとのことでしたので、磯五さんも私も、大変御心配申し上げていたところでございますよ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
三月堂の不空羂索ふくうけんさくなども、大らかな堂々とした所があって、おつむも案外写生だけれども美しい。天平の塑像もよい。当時の塑像は西洋流の塑像の拵え方とは違って、固い泥で押えつけて拵えたものだ。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
……身にも命にもかえてね、お手伝をしますがね、……実はね、今明神様におわびをして、貴方のおつむを濡らしたのは——実は、あの、一度内へ帰ってね。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平次にさう言はれると、少々おつむの良くないガラツ八には、何が何やらまるで見當が付かなくなります。
二階堂殿もおつむが古い——と、彼は今時の御家人たちから、よく日ごろわらわれていることも知っている。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正午ひるちかづけばおみね伯父おぢへの約束やくそくこゝろもとく、御新造ごしんぞ御機嫌ごきげんはからふにいとまければ、わづかのすきにつむりの手拭てぬぐひをまろめて、このほどよりねがひましたること
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
遠くに逃げのびてから、おぢいさんは寂しさうにその禿げたおつむをつるりとでまはしました。
拾うた冠 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「我君、だいぶおつむが伸びましたやうでございますが……」
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「おつむに大きなおこぶができました」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
平次にそう言われると、少々おつむの良くないガラッ八には、何が何やらまるで見当が付かなくなります。
正午ひるも近づけばお峯は伯父への約束こころもと無く、御新造ごしんぞが御機嫌を見はからふにいとまも無ければ、わづかの手すきにつむりの手拭てぬぐひをまろめて、このほどより願ひましたる事
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(おつむ一箇ひとつ、一箇枕におさせ申して、胸へ二箇ふたつ鳩尾みぞおちへ一箇、両足の下へ二箇です。)
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丹波たんばのきんか頭(禿頭はげあたまという方言ほうげん)が負けずにやりおるわ——などと日頃のおうわさにもよくお口に遊ばす。あははは、今、おつむを見ておるうちに、ふと、お上のお戯れを思い出したのでござった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お気をつけなさいましよ……おつむをどうぞ……お危うございますよ、お頭を。」
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「間違ひありません。家中でおつむの白いのは御隱居樣だけですから」