)” の例文
「さあさあ、て来なされ、遊廓は灯ともし頃の宵がよく、もそっとよいのは、黄昏たそがどきかよというげな。武蔵どのも、ておざれ」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮はおいでになろうとする際も御自身の意志でない通いの途絶えによって、思い乱れることのないようにとかえすがえすもお言いになった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中世の記録を見ればいくらでも実例が出ているが、京都から奈良へというほどの一日の旅でも、前以まえもって通知があって、昼の用意をする者がある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
……海も山もさしわたしに、風でお運び遊ばすゆえに、半日には足りませぬが、宿々しゅくじゅくひろいましたら、五百里……されば五百三十里、もそっともござりましょうぞ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巨勢君にはかしこなる画堂にて逢ひ、それよりまじわりを結びて、こたび巨勢君、ここなる美術学校に、しばし足をとどめむとて、旅立ち玉ふをり、われもともにかへりに上りぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
やがて、学士もまた、ぐうぐうといびきをかきはじめ、ゆめをたどったのでありました。
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この高原地では大抵四日か五日いつか位の道を隔てて駅場が一つずつ置いてある。そのトクスン・ターサムより四日路手前で雪峰チーセに近い方向に当ってやはり一つのターサムがある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
もどかど歌川うたがわかじを着けさせ俊雄が受けたる酒盃さかずきを小春にがせておむつまじいとおくびよりやすい世辞この手とこの手とこう合わせて相生あいおいの松ソレと突きやったる出雲殿いずもどのの代理心得、間
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
射し込んでいる陽光ひかりは、地上へ、大小の、円や方形の、黄金色こがねいろの光の斑を付け、そこへ萠え出ている、すみれ土筆つくしなずなの花を、細かい宝石のように輝かせ、その木洩こもかよの空間に
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どこまで行ったらこの路はなくなるのか。どこまで行ったらこんな路は歩かなくってもよくなるのか。故郷のいさご、雨上がりの湿った海岸の砂路いさごじ、あのなめらかな心地の好い路がなつかしい。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
自尊じそん自知じち自治じちの三は、一しょうみちびいて王者の位に達せしむるなり)
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
われわれの森はこの両方のものにみちており、すべての沼のまわりには、どこかの牛飼い少年の手になる、小枝のさくだの馬の毛のわなだのが仕掛けられた、シャコやウサギのかよが見られるのである。
わかを遠く去りつ正しともあやまれりとも知らぬ痴人しれびと
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ほこり
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
智深と九紋龍は、それから二日ほどの旅をともにし、やがて華州と開封路かいほうじの追分けにかかるや、再会をちぎって、たもとわかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あやしき少女おとめの去りてより、ほどなく人々あらけぬ。かえにエキステルに問へば
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「国の広さは、南北八といわれています。大国の証拠には、日々、街道すじの往還、荷駄千匹ずつありと申す。以て、御推量がつくでしょう」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また一時近くなるほどに、温習に往きたる日にはかえによぎりて、余とともに店を立ち出づるこの常ならず軽き、掌上しょうじょうの舞をもなしえつべき少女を、怪しみ見送る人もありしなるべし。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その、冴えきった一瞬には、水天髣髴すいてんほうふつの境、の山が、ありやなしやに見えている。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)