トップ
>
胚胎
>
はいたい
ふりがな文庫
“
胚胎
(
はいたい
)” の例文
ごく大
雑把
(
ざっぱ
)
に云うと、攘夷論の強硬派である斉昭を抑えることによって、幕府の開国策がすでにこのとき
胚胎
(
はいたい
)
していたといえよう。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
当時政治は薩長土の武力によりて
翻弄
(
ほんろう
)
せられ、国民の思想は統一を欠き、国家の危機を
胚胎
(
はいたい
)
するの
虞
(
おそれ
)
があり、
旁々
(
かたがた
)
小野君との
黙契
(
もっけい
)
もあり
東洋学人を懐う
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
彼らの
擅権
(
せんけん
)
が
漸
(
ようや
)
くあらわになったのは天平に入ってからであるが、その種子は既に根づよくこの時代に
胚胎
(
はいたい
)
していたのであった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
バイロンの「マンフレッド」に
胚胎
(
はいたい
)
したという青木が処女作の劇詩は、その煙草屋の二階で書いたものであることも分って来た。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
学者と
素人
(
しろうと
)
との意思の疎通せざる第一の素因は既にここに
胚胎
(
はいたい
)
す。学者は科学を成立さする必要上、自然界に或る秩序方則の存在を予想す。
自然現象の予報
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
小説を芸術として考えようとしたところに、小説の堕落が
胚胎
(
はいたい
)
していたという説を耳にした事がありますが、自分もそれを支持して居ります。
芸術ぎらい
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「いや、四十を越してからだけれど、動機は遠く青年時代に
胚胎
(
はいたい
)
している。熊野君、これは立志伝に持って来いの材料だよ」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
革命の原因は実にこの説に
胚胎
(
はいたい
)
して居るのであるが、今日ではもはや、この説の理論上の欠点は十分に認識せられ、君主国においてはもちろん
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
事実、愛之助が猟奇の果てに、ついにあの大罪を犯すに至った、心理的異常は、已にこの時に
胚胎
(
はいたい
)
していたのかも知れぬ。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
人間の心のなかに暗い思想や死を
念
(
ねが
)
う気持を
胚胎
(
はいたい
)
させるものだ。私はそうした事実をこれまでに幾度となく認めて来た。
ある自殺者の手記
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
学者社会には既に西洋文明の
胚胎
(
はいたい
)
するものあり、今日の進歩偶然に非ずとの事実を、世界万国の人に示すに足る可し。
蘭学事始再版序
(新字旧仮名)
/
福沢諭吉
(著)
すべて飛鳥白鳳期に
胚胎
(
はいたい
)
せられたものの進展成熟であり、例えば夢殿の
救世観世音
(
くせかんぜおん
)
像に見るようなあの言語道断な、真剣な魂の初発性は見られない。
美の日本的源泉
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
わたしたちの恋は六七歳のころふたりでよく遊んだお
嫁
(
よめ
)
さんごっこの他愛ない遊びに
胚胎
(
はいたい
)
しているのでございます。
おしどり
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
肉と霊とを
峻別
(
しゅんべつ
)
し
得
(
う
)
るものの如く考えて、その一方に
偏倚
(
へんい
)
するのを最上の生活と決めこむような禁慾主義の義務律法はそこに
胚胎
(
はいたい
)
されるのではないか。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
従って、それから
胚胎
(
はいたい
)
して来る僕たちの結婚にも熱が無くなって来たのだ。ただ、念々に憧れて来たのは、あの男と女の底に潜んでいる不断の韻脈だ。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
かくして、精神は太古の物質中に存するを知れば、無生的物質の中に精神の
胚胎
(
はいたい
)
することが分かりましょう。
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
現代のあらゆる社会的加害は、ポーランドの分割より
胚胎
(
はいたい
)
する。ポーランドの分割は一つの定理であり、それより現代のあらゆる政治的罪悪が導き出される。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その不朽の名畫晩餐式はこゝに
胚胎
(
はいたい
)
せしなり。その戀人の尼寺の
垣内
(
かきぬち
)
に隱れて、生涯相見ざりしは、わがフラミニアに於ける情と古今
同揆
(
どうき
)
なりとやいはまし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
如何に不愉快のうちに
胚胎
(
はいたい
)
し、如何に不愉快のうちに組織せられ、如何に不愉快のうちに講述せられて、最後に如何に不愉快のうちに出版せられたるかを思へば
『文学論』序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし、それらは、大きな原因の一部であって、結局は日本人の生活、文明が科学的に幼稚であり原始的であるというところに一切の原因は
胚胎
(
はいたい
)
しているのである。
日本の近代的探偵小説:――特に江戸川乱歩氏に就て――
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
十年ぶりに読んでいるうちに
端
(
はし
)
なく思い起こした事がある。それはこの小説の
胚胎
(
はいたい
)
せられた一
夕
(
せき
)
の事。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
シューベルトの優しく美しき音楽は、この小児の如き心根に
胚胎
(
はいたい
)
したのである。春の
陽
(
ひ
)
の如く、聴く者の心を和めずにおかないのも、また
所以
(
ゆえ
)
ありと言うべきである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
そうです——感じるに敏なお蝶がひとりでサッと顔色をかえた胸のうちのとおり、これは、ヒョッとすると、二官の不機嫌な原因がこれに、
胚胎
(
はいたい
)
していたのかも知れません。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
而
(
しか
)
して彼が従来の
歌劇
(
オペラ
)
を捨て、其の芸術綜合の信念と目的とを表現したる初めての
獅子吼
(
ししく
)
『タンホイゼル』は、実にこの惨憺たる悲境に於て、彼の頭脳に
胚胎
(
はいたい
)
したりし者なる也。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
活動写真、飲食店、諸君がいつも
誘惑
(
ゆうわく
)
を受けるのはこれである。娯楽には友達が必要である、諸君はこのために活動の友達や飲食の友達ができる。不良気分がここから
胚胎
(
はいたい
)
する。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
後世
一茶
(
いっさ
)
の俗語を用いたる、あるいはこれらの句より
胚胎
(
はいたい
)
し来たれるにはあらざるか。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
此等は
抑〻
(
そも/\
)
何に
胚胎
(
はいたい
)
してゐるのであらうか、又
抑
(
そも
)
何を語つてゐるのだらうか。たゞ其の
驍勇
(
げうゆう
)
慓悍
(
へうかん
)
をしのぶためのみならば、
然程
(
さほど
)
にはなるまいでは無いか。考へどころは十二分にある。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
おそらくそれへの嫌悪から私のそうした憎悪も
胚胎
(
はいたい
)
したのかもしれないのである。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
二葉亭の東方問題の抱負は西郷の征韓論あたりから
胚胎
(
はいたい
)
したらしい。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
小説を芸術として考えようとしたところに、小説の堕落が
胚胎
(
はいたい
)
していたという説を耳にした事がありますが、自分もそれを支持して居ります。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この精神は多くの夢想の人の胸に宿った。後の平田篤胤、および平田派諸門人が次第に実行を思う心はまずそこに
胚胎
(
はいたい
)
した。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかしもともと相対性理論の存在を必要とするに至った根原は、
畢竟
(
ひっきょう
)
時に関する従来の考えの
曖昧
(
あいまい
)
さに
胚胎
(
はいたい
)
しているのではないかと考えられる。
ルクレチウスと科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その私徳の元素は夫婦の間に
胚胎
(
はいたい
)
すること明々白々、我輩の
敢
(
あ
)
えて保証する所のものなれば、男女両性の関係は立国の大本、禍福の起源として更に争うべからず。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
本来を云うと、犬と云うのも記号で、心を石だと云うのも一種の象徴でありますから、第三段になって正式にあらわれるのはすでに前から
胚胎
(
はいたい
)
しておったものであります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然れども人の最大なる得意の時代は、やがてまた最大の失意を
胚胎
(
はいたい
)
し来るの時代たるなからむや。物は圧せられざれば乃ち膨脹す。膨脹は稀薄となり、稀薄は
弛怠
(
したい
)
となり無力となる。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
鉛の沼、白い山全体がほのかな
桔梗
(
ききょう
)
色の燐光を放っていますので、霊性で作った風光のような気がいたします。先生は、この湖に
胚胎
(
はいたい
)
する伝説によってはたから一生苛めつけられなさった。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
而
(
しか
)
もこれは大独断の言であって、その直覚の
誤謬
(
ごびゅう
)
に
胚胎
(
はいたい
)
したものである。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
後世
一茶
(
いっさ
)
の俗語を用ゐたる、あるいはこれらの句より
胚胎
(
はいたい
)
し来れるには非るか。薬喰の句は蕪村集中の最俗なる者、一読に堪へずといへども、一茶は殊にこの辺より悟入したるかの感なきに非ず。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
有閑マダムの称も、その辺に
胚胎
(
はいたい
)
している。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
西の勝利者、ないし征服者の不平不満は、朝鮮問題を待つまでもなく、早くも東北戦争以後の社会に
胚胎
(
はいたい
)
していた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
故に今
仮
(
かり
)
に古人の言に従って孝を百行の本とするも、その孝徳を発生せしむるの根本は、夫婦の徳心に
胚胎
(
はいたい
)
するものといわざるを得ず。男女の関係は人生に
至大
(
しだい
)
至重
(
しちょう
)
の事なり。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
これ等は皆御三の不人情から
胚胎
(
はいたい
)
した不都合である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
天然に
胚胎
(
はいたい
)
し、物理を
格致
(
かくち
)
し、人道を
訓誨
(
くんかい
)
し、
身世
(
しんせい
)
を
営求
(
えいきゅう
)
するの業にして、真実無妄、細大備具せざるは無く、人として学ばざるべからざるの要務なれば、これを天真の学というて可ならんか。
慶応義塾の記
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それが三人の女の児を先立てたことに
胚胎
(
はいたい
)
したことを思い出した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
岸本の心の毒は実にその孤独に
胚胎
(
はいたい
)
した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“胚胎”の意味
《名詞》
胚胎(はいたい)
胚、胚子。
身籠ること。孕むこと。妊娠すること。
根差すこと。何かが始まること。
(出典:Wiktionary)
胚
漢検1級
部首:⾁
9画
胎
常用漢字
中学
部首:⾁
9画
“胚”で始まる語句
胚子
胚芽
胚種
胚
胚乳
胚珠