しや)” の例文
それで準備じゆんびをして、下男げなん藥箱くすりばこかつがせ、多田院ただのゐんからのむかへのしやきにてて、玄竹げんちくはぶら/\と北野きたのから能勢街道のせかいだう池田いけだはうあるいた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
くちびるてたのが、錦繪にしきゑいたがけの美人びじんにそつくりで、微醉ほろゑひのそれしやが、くろもじをんだより婀娜あだツぽい。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うらなしやです。が、この近所のうはさぢや、何でも魔法さへ使ふさうです。まあ、命が大事だつたら、あの婆さんの所なぞへは行かない方が好いやうですよ。」
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
三齋といふ人もよくよくの好しやであつたらしい。旅行先に石燈籠を携つて歩くといふと今では變であるが、その氣持は最後に墓碑にまでしたことでよく解るのである。
京洛日記 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
其れからキキイはいろんな部屋へ移つて廻つた。おれの部屋の下にあたる二階の、今ムウラン・ルウヂユの踊場をどりばへ出る音楽しや夫婦が住んで居る部屋などにも二ヶ月居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あのパン屋はもとは相應な官吏であつたとか、細君はそれしやの果だとか、どうして夫婦ともナカ/\の洒落者だとか、小母さん達は窓側で互の眼前めのまへを通る藝人の噂をしました。
十一ぐわつの二十八にち旦那だんなさまお誕生日たんぜうびなりければ、年毎としごと友達ともだち方々かた/″\まねまいらせて、周旋しうせんはそんじよしやうつくしきをりぬき、珍味ちんみ佳肴かこううちとけの大愉快おほゆくわいつくさせたまへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
以前役者の女房にそれしやが必要だつたごとく、姐御てあいもなかなか、粹もあまいも噛みわけた苦勞人でなければおさまらなかつただらうし、男まさりの氣強いものでなければ、無考へな
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
然無さなくても古より今に至るまで、関東諸国の民、あすこにも此所にも将門の霊をまつつて、隠然として其の所謂いはゆる天位の覬覦きゆしやたる不届者に同情し、之を愛敬してゐることを事実に示してゐる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しやの間にかなりもてはやされたものだ。
釣干菜つりほしなそれしやと見ゆる人のはて
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
世の聵々くわい/\しやりうは、之を偶然に歸するが、實は精の功これをして然るを得せしめたので、學に精に、思に精に、何事にもゾンザイならず、等閑なほざりならざる習慣の、其の人の身に存し居りたればこそ
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)