群集ぐんじゆ)” の例文
既にして群集ぐんじゆ眸子ぼうしひとしくいぶかしげに小門の方に向へり、「オヤ」「アラ」「マア」篠田長二の筒袖姿忽然こつぜんとして其処に現はれしなり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
尋ぬるにさいはひの時節なりとて日毎ひごと群集ぐんじゆの中にまぎれ入て尋けるに似たりと思ふ人にもあはざれば最早もはや江戸には居るまじ是よりは何國いづくを尋ねんと主從三人ひたひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さながらジュビレーオの年、群集ぐんじゆ大いなるによりてローマびと等民の爲に橋を渡るの手段てだてをまうけ 二八—三〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
西の雲間に、河岸並かしなみに、きんの入日がぱつとして、群集ぐんじゆうへに、淡紅うすあかの光の波のてりかへし。今シァアトレエの廣場ひろばには、人の出さかり、馬車がをどれば電車が滑る。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
群集ぐんじゆはあぶなさに息をめてゐる。ドルフは瞳を定めて河を見卸した。松明が血を滴らせてゐる陰険な急流である。其時ドルフは「死」と目を見合せたやうな気がした。
見物の群集ぐんじゆはこれに先を追はれて、山男を一人残いたまま、見る見る四方へ遠のいてしまうた。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其處そこには毎日まいにちかなら喧嚚けんがう跫音あしおとひと鼓膜こまくさわがしつゝある巨人きよじん群集ぐんじゆが、からは悲慘みじめ地上ちじやうすべてをいぢめて爪先つまさき蹴飛けとばさうとして、山々やま/\彼方かなたから出立しゆつたつしたのだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あいちやんが朝鮮猫てうせんねこところかへつてつたときに、其周圍そのしうゐにゐた大勢おほぜい群集ぐんじゆ一方ひとかたならずおどろきました、其處そこには死刑執行者しけいしつかうしやと、王樣わうさまと、それから女王樣ぢよわうさまとのあひだに、いつ爭論さうろんはじまつてゐました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
陪審官ばいしんくわんをばのこらず、したなる群集ぐんじゆ頭上づじやう蹴轉けころがしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
尋ねしかど未だ天運てんうんさだまらざるにや一向に手懸りさへもなくむなしく其年もくれて明れば享保五年となり春も中旬なかば過て彌生やよひの始となり日和ひより長閑のどかに打續き上野飛鳥山あすかやま或ひは隅田川すみだがはなどの櫻見物さくらけんぶつに人々の群集ぐんじゆしければ今ぞかたき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
同道どうだうしたる男は疑ひもなき敵とねらふ吾助にて有れば忠八はおのれ吾助とひながらすツくとあがる間に早瀬はやせなれば船ははやたんばかりへだたりし故其の船返せ戻せと呼はれ共大勢おほぜい乘合のりあひなれば船頭は耳にも入ず其うちに船は此方のきしつきけれとも忠八立たりしまゝ船よりあがらず又もや元の向島むかうじまの方へと乘渡り群集ぐんじゆの中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)