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稚気
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ちき
ふりがな文庫
“
稚気
(
ちき
)” の例文
旧字:
稚氣
十余年前、『親馬鹿の記』を書いたときの私には、まだ心のゆとりがあり、
自嘲的
(
じちょうてき
)
な言葉にも、人生を
諷刺
(
ふうし
)
するだけの
稚気
(
ちき
)
があった。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
山浦環は、又の名を
内蔵助
(
くらのすけ
)
とも
称
(
い
)
った。まだ
二十歳
(
はたち
)
ぐらいで、固く
畏
(
かしこ
)
まって坐った。黒い
眸
(
ひとみ
)
には、どこかに
稚気
(
ちき
)
と
羞恥
(
はにか
)
みを持っていた。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お重という女は議論でもやり出すとまるで自分を同輩のように見る、
癖
(
くせ
)
だか、親しみだか、猛烈な
気性
(
きしょう
)
だか、
稚気
(
ちき
)
だかがあった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
新婚まもなく若い
稚気
(
ちき
)
のぬけなかった夫人は、恐らく
恐怖
(
きょうふ
)
にふるえながらも、人生の最も楽しく忘れ得ない夢を経験したのだ。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
近藤勇は、小野川の老いて
稚気
(
ちき
)
ある
振舞
(
ふるまい
)
を喜んで話していると、芹沢は、さっきから席を周旋して廻るお松の姿に眼をつけて
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
それらの感情は新しい画工のいわば
稚気
(
ちき
)
を帯びた新画風と古めかしい木板摺の技術と
相俟
(
あいま
)
って遺憾なく紙面に躍如としている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「
胡蝶
(
こちょう
)
の曲(作品二)」はきわめて初期の曲で、
稚気
(
ちき
)
愛すべきものがある。コルトーのが良い(ビクターJE九七—八)。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
稚気
(
ちき
)
と云えば稚気に相違ないけれど、こういう稚気のある奴に限って、ずば抜けた独創力に恵まれているものだ。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一見無邪気で
稚気
(
ちき
)
愛すべきところがあつたので、私は此の人とは比較的障壁を設けずに話すことが出来た。
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
次の文章は当時の若い志士の手に成つたもので、今日の君等には
如何
(
いか
)
にも幼児の
戯
(
たはむ
)
れに見えようが、この
稚気
(
ちき
)
の中に当年智者の単純な理想を汲み取つて読んで呉れ。
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「とにかくあの
人達
(
ひとたち
)
の
仕方
(
しかた
)
は
賢
(
かしこ
)
かつた。」
彼
(
かれ
)
は
時々
(
とき/″\
)
思
(
おも
)
つた。
大久保
(
おほくぼ
)
のやうな
稚気
(
ちき
)
の
多
(
おほ
)
い
狂人
(
きちがひ
)
を
相手取
(
あいてど
)
ることに、
何
(
なん
)
の
意味
(
いみ
)
のあらう
筈
(
はず
)
もなかつた。(大正14年7月「婦人の国」)
彼女の周囲
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は
玩具
(
おもちゃ
)
が
好
(
すき
)
です、
幾歳
(
いくつ
)
になっても
稚気
(
ちき
)
を脱しない
故
(
せい
)
かも知れませんが、今でも玩具屋の前を
真直
(
まっすぐ
)
には通り切れません、ともかくも立停って
一目
(
ひとめ
)
ずらりと見渡さなければ気が済まない位です。
我楽多玩具
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
青年の声や態度の中に、余りに
稚気
(
ちき
)
満々たる
誇負
(
こふ
)
を見たからである。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
精神的には急速に発達して来たが、肉体の発育は人なみより遅れている傾きがどうもあった。そのせいでもあろうか、時々彼は
稚気
(
ちき
)
を演じる。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何だか面白そうじゃないか」と兄は
柄
(
がら
)
にもない
稚気
(
ちき
)
を言葉に現した。自分は昇降器へ乗るのは好いが、ある目的地へ行けるかどうかそれが
危
(
あや
)
しかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
薄倖多病の才人が都門の栄華を
外
(
よそ
)
にして
海辺
(
かいへん
)
の
茅屋
(
ぼうおく
)
に
松風
(
しょうふう
)
を聴くという仮設的哀愁の生活をば、いかにも
稚気
(
ちき
)
を帯びた調子でかつ
厭味
(
いやみ
)
らしく飾って書いてある。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
犠牲者を思う存分怖がらせ、脅えさせて楽しもうとする、殺人鬼の途方もない
稚気
(
ちき
)
であったかも知れない。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
生
(
なま
)
な奴がキザな真似をすれば、この男は、やにわに立って叩きのめしたくなる病があると共に、事の妙境に触るるを見てとった時には、我を忘れて心酔するの
稚気
(
ちき
)
があるのです。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この世をばわが世とぞ思う——と
露骨
(
ろこつ
)
に歌った藤原氏の栄華の方が、まだ夢を夢として追っている人々の
稚気
(
ちき
)
と詩があった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この年になってもまだ
稚気
(
ちき
)
を失わぬ、それ
故
(
ゆえ
)
にこそ珍重すべき老人が、子供らしく
見得
(
みえ
)
を切った。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自分からこういうと兄を
軽蔑
(
けいべつ
)
するようではなはだすまないが、彼の表情のどこかには、というよりも、彼の態度のどこかには、少し
大人気
(
おとなげ
)
を欠いた
稚気
(
ちき
)
さえ現われていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大菩薩は、
稚気
(
ちき
)
溢
(
あふ
)
れたる両山の競争を見て、
莞爾
(
かんじ
)
として笑った。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
はるかに、元康のほうが、信長よりは
大人
(
おとな
)
の感じだった。
稚気
(
ちき
)
というようなものは、元康には少しも見えなかった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とんだ間違をして
大
(
おおい
)
に恐れ入ってはいるようなものの、かように恐れ入ってるものを蔭で笑うのは失敬だとくらいは思うかも知れないが、それは年が行かない
稚気
(
ちき
)
というもので
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こんな怖がらせは、如何にも大江春泥らしい
稚気
(
ちき
)
で、こうしてさも何か犯罪を企らんでいる様に見せかけるのが、彼の手ではないか。高が小説家の彼に、それ以上の実行力があろうとは思われぬ。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
忠盛には、それも、おかしかったろうし、いい方も、いかにも、子供のいい
分
(
ぶん
)
らしく、
稚気
(
ちき
)
に聞こえたものとみえ、思わず、顔をほころばしてしまった。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だから大町桂月は主人をつらまえて
未
(
いま
)
だ
稚気
(
ちき
)
を免がれずと云うている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼らの未来夢の信念が演じる
稚気
(
ちき
)
や滑稽にたいして、社会人は寛大だったし、また一般に、書生さんなるものを愛する気もちが、庶民全体の中にあった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、犬千代は相手の言葉を、むしろ愛すべき
稚気
(
ちき
)
——と
恕
(
ゆる
)
しているような寛度で、後を
促
(
うなが
)
した。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最初は、ひどく油断のならない男と考えていたが、決して、ムキになって憎むほどの人間じゃない。むしろ、愛すべき
稚気
(
ちき
)
さえ持っているじゃアないか! こうして世阿弥を
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悪戯
(
いたずら
)
にもならない
稚気
(
ちき
)
の著述である。それというのも、吉岡家は武蔵との三度の試合で、致命的な絶家の形になり終っている。当然そうなったと見るのは臆測でも無理であるまい。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
善信は、彼の
稚気
(
ちき
)
を、おかしく思いながら、彼の
過
(
あやま
)
った信念を、事ごとに説いて聞かせ、凡夫
直入
(
じきにゅう
)
の
真髄
(
しんずい
)
を噛んでふくめるように
諭
(
さと
)
してやると、和尚は、善信の
輿
(
こし
)
の前にひざまずいて
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小六は、
稚気
(
ちき
)
を
嘲
(
わら
)
うように
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“稚気”の意味
《名詞》
稚気(ちき)
子供っぽく、無思慮で感情がそのまま外に出る様子。
(出典:Wiktionary)
稚
常用漢字
中学
部首:⽲
13画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“稚気”で始まる語句
稚気満
稚気離