社稷しゃしょく)” の例文
しかも内容の重大な点では、慶安年間由井正雪が、一味と計って徳川の社稷しゃしょくに、大鉄槌を下そうとした、それにも増したものであった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この男は徳川の恩顧をこうむり、或いはその知遇に感じ、以てその社稷しゃしょくを重しとするのではない、薩長が憎いから、徳川に同情するのである。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
社稷しゃしょくをもって丘墟きゅうきょとなし、万民の生霊を塗炭とたんとなして、それをいたむ真の人はみな野にかくれ——王朗よ、耳のあかをのぞいて、よく聞かれい
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「戸沢家六万八千石の社稷しゃしょくを守るためにです、あなた個人を斬るのではない、戸沢家の社稷の害となる存在を斬るのです」
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その恭順をもってもっぱら京都にくだるの意であるとなし、怒気はつき、双眼には血涙をそそぎ、すすり泣いて、「慶喜るべし、社稷しゃしょく立つべし」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たとえば大樹をるに、先ず附枝ふしるが如し、親藩既に滅びなば、朝廷孤立し、奸臣志を得んには、社稷しゃしょくあやうからん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
実にわが権威ある政治家の脳中には不幸にもいまだわが日本全体の社稷しゃしょく人民を網羅するごとき思想の欠乏して
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
しかし、淀君が居なかったら、豊臣家の社稷しゃしょくはもっとつづいたかも知れない。そんな事を考えると、歴史上の事件にはあらゆる因子のつながりがあるわけだ。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
私はまるで印度の社稷しゃしょくを双肩にでも担ったような緊迫したあわただしさを感じて、亡国の悲しみや哀れさなりやが今更のようにハッキリと胸に迫ってくるのを感じた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
雄心未だ勃々たる秀吉は死後の社稷しゃしょくのことなどは霞をへだてた話であつたし、思ひのまゝに廻りはじめたパノラマのハンドルをまはす手加減に有頂天になつてゐた。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
民人あり、社稷しゃしょくありと称えて書を読むことを斥ける具臣は、破れたる縕袍おんぼうを着て平然たる由ではない。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
忽ち慨然大喝し、「本邦の如き、国体万国に卓越し、皇統連綿として古来かつて社稷しゃしょく覬覦きゆしたる者なき国においては、かくの如き不祥の条規は全然不必要である。速に削除せよ」
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
胡元こげん社稷しゃしょくが傾きかけて、これから明が勃興しようとしている頃のことであった。
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
子路、子羔しこうをしてさいたらしむ。子曰く、の人の子をそこなうと。子路曰く、民人みんじんあり、社稷しゃしょくあり、何ぞ必ずしも書を読みて、然る後に学びたりと為さんやと。子曰く、是の故に佞者ねいしゃにくむと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「太師のお怒りは、自己のお怒りに過ぎませんが、てまえがお諫め申すのは、社稷しゃしょくのためです。——昔、こういう話があります」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、徳川の社稷しゃしょくに向かってかなえを上げようとするような者は、ほとんど一人もないということは確かな事実でございます。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また徳川氏の社稷しゃしょくを保つ最も賢明の方針だ、大政奉還が一刻早ければ早いだけの効能がある、一刻遅ければ遅いだけの損失がある、ということを
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ひたすら豊家の社稷しゃしょくを保つことに腐心したら、今でも豊臣伯爵など云うものが残っていて、少し話が分った人だったら、大阪市の市長位には担ぎ上げられたかも知れない。
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
人の社稷しゃしょくを滅ぼし、百姓ひゃくせいの力をつからし、百姓の財を尽くし、人の父を殺し、人の子をにし、乱政虐刑をなし、もって天下を残賤ざんせんするの人をもって英雄豪傑とせば、かのナポレオン、ビスマルク
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
勅書、ならびに貴札きさつ、謹んで拝見いたしました。吉野へ臨幸のよし、社稷しゃしょく大慶たいけい、顕家もほっといたしたことでございます。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに外国が内乱に乗じ、侵略の野心を逞しゅうし、大日本国の社稷しゃしょくをして危からしめるということを、特に最も心痛した。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
自分の志をついでこの社稷しゃしょくを守り通す人を見出して、このまま後をがせなければならないという、世間普通の財産世襲の観念が最後の結論でありました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうした危険を冒すよりも、今日こんにちの場合は、一日も早く朝廷に謝罪恭順して、桑名松平家の社稷しゃしょくを全うすることが、何より大切である。それには、当家には先代の御子の万之助様がある。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「漢室の社稷しゃしょくは今いよいよ危うく、曹操の驕暴きょうぼうは、日とともにつのりゆきます。おそらく、簒奪さんだつの逆意をあらわに示す日も遠くありますまい」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
充分話して置いた筈じゃ! ……豊臣家の社稷しゃしょくをくつがえし、おのれ代って将軍となり、幕府を建てて権勢に誇り、京都御禁裡様をないがしろにし
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かように天下有事、幕政維持か、王政復古かの瀬戸際——それに外国の難題が、攘夷じょういか開国かで、怪奇ではないが、複雑を極めた間にあって、一歩あやまれば、社稷しゃしょくが取返しのつかないことになる。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
社稷しゃしょくの為には、多少の功はあろうが、自分は必ず寿命を損ずるであろう。いかにとはいえ、かくまで、殺戮さつりくをなしては」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
社稷しゃしょくを助ける知恵がなければ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お互いに、社稷しゃしょくの臣として、君を扶け奉ることもできず、世を救うこともできず、なんの生き甲斐がある」と歎いた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二百余年の社稷しゃしょくの大業
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
亡き董太師とうたいしは、陛下の股肱ここうであり、社稷しゃしょくの功臣でした。しかるに、ゆえなくして、王允おういんらの一味に謀殺され、その死骸は、街路に辱められました。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉良様を守ることは、上杉家の社稷しゃしょくを護ることなのだ。その旨をよく説いて、八月中旬なかばまでに、是非とも、確かな剣客共を連れて来て欲しいのじゃ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼も一番の重臣として社稷しゃしょくを護る人間であったし、自分は、上杉家の存亡を負って、社稷の為めに粉骨しなければならない老臣の立場にあるのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「自分は漢朝に仕えて、今では虎賁こほん中郎将の職を奉じている。君も、社稷しゃしょくを扶けて大いに国事に尽していると聞いて、実は今夜、祝いに来たわけだ」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かぼそい老骨のひしげるまでも、それを負って、太守憲綱のりつなたすけ、米沢三十万石の社稷しゃしょくを、この際は、石にかじりついても護り通さなければならない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
故に、補佐の任たる方々が心を傾けて、君の徳を高うし、社稷しゃしょくを守り固め、以て先帝のご遺徳を常にかがみとして政治せられておれば間違いないと思う。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「すでにめいのせまるを覚ゆ。一々汝らに言を付嘱ふしょくするを得ない。それみな一致して社稷しゃしょくを扶け、おのおの保愛せよ」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地方の騒賊をはらっても、社稷しゃしょく鼠巣そそうを掃わなかったら、四海の平安を長く保つことはできぬ。賞罰の区々不公平な点ばかりでなく、嘆くべきことが実に多い。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下の擾乱じょうらんを鎮め、みだれ果てた王綱おうこうを正し、社稷しゃしょくを扶けて万民へ君臨さるべき資質を持っておられるのだ。——この老人の如きは、もうなんの才能も枯れている。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「将軍は社稷しゃしょくの重臣。ご辞退あるときではありません。もし将軍がかれるならば、それがしも不才を顧みずお供して、命をすてる覚悟で共に大敵を破りましょう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今もし、天子、勅を下し給うて、社稷しゃしょくの守りをお命じあれば、曹操は風を望んで参りましょう
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ、大計というもので、いたずらに晴の場所で雄弁を誇り、局部的な勝敗をとって功を論じ、社稷しゃしょく百年の計を、坐議立談するが如き軽輩な人では、よく解することはできますまい
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帝は、曹洪を見て、「御身の兄曹操こそ、真に、ちん社稷しゃしょくの臣である」といわれた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ているんですか。時は今ですぞ、宮廷のがん社稷しゃしょく鼠賊そぞくども、十常侍の輩を一匹残らず殺してしまわなければいけません。この機を逸したら、再びほぞを噛むような日がやってきますぞ
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——龍涙りゅうるいに落つるは亢旱こうかん三年、という古言もあります。陛下、社稷しゃしょくの重きを思い給わば、何とぞ玉体をおそこね遊ばさぬように。そして努めて、士気の昂揚をご宸念しんねんあそばして下さい」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
社稷しゃしょくか父子の情かである。一人の上野介か、上杉家全藩の生命かである。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど、二臣のような者こそ、真に、社稷しゃしょくの臣というのであろうな」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——たのむ。お家のために、吉良殿ではない、上杉家の社稷しゃしょくのために」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だからしばらくはよく内を治め、社稷しゃしょくを守り、令を正し、国を富ましめるのが、われらのなし得る限度ではあるまいか。外の功業の如きは、やがて孔明のような能者を待って初めて望み得ることだ。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(大事! 社稷しゃしょくの危機)
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)