知覺ちかく)” の例文
新字:知覚
況して少しでも腦症なうしやうのあるものは、めうに氣がむで、みゝが鳴る、眼がかすむ、頭腦が惡く岑々ぎん/″\して、ひとの頭腦か自分の頭か解らぬやうに知覺ちかくにぶる。周三も其の通りだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
障子しやうじそと野中のなかさん、野中のなかさんとこゑ二度にどほどきこえた。宗助そうすけ半睡はんすゐうちにはいとこたへたつもりであつたが、返事へんじ仕切しきらないさきに、はや知覺ちかくうしなつて、また正體しやうたいなく寐入ねいつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうしてその揷入さうにふした酸漿ほゝづき知覺ちかくのないまでに輕微けいび創傷さうしやう粘膜ねんまくあたへて其處そこ黴菌ばいきん移植いしよくしたのであつたらうか、それとも毎日まいにちけぶりごとあびけたほこりからたのであつたらうか
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「おとつゝあれたなあ」とびるやうにいつて自分じぶんうちしきゐまたいだときあし知覺ちかくのないほどかれ草臥くたびれてよるくらくなつてた。有繋さすが二人ふたりよろこんで與吉よきち勘次かんじすがつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此所こゝまでかんがいたけれども、知覺ちかくのない御米およねかほると、また其方そのはう氣掛きがゝりになつて、すぐにでもおこしたい心持こゝろもちがするので、ついけつかねてぐづ/\してゐた。其所そこやうや醫者いしやれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)