真夜半まよなか)” の例文
旧字:眞夜半
遅いにも程があるが、猛火のさかんな真夜半まよなか頃となって、恐怖と狼狽の底におとされた叡山の代表者は、信長の陣へ使いをたてて
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は真夜半まよなかに、地下室の蒲団ふとんの中で、ふと目を覚まし、高い窓からさし込む月の光を見て、何かしらハッとして、思わず起き上りました。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
船に飽きた人々は皆な不平を言つたが、しかし真夜半まよなかに東京に着いても仕方がなかつた。むなく此処ここで待つことにした。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
その真夜半まよなか、ひろ子が余り苦しむのを見かねて、妻が私に医者の許まで行ってくれと頼みますので、いそいでかけつけ門を叩いて見ましたが、幸いにも——全く幸いにもです
途上の犯人 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
何ともいえぬ苦しみだ、私はいて心を落着おちつけて、耳をすまして考えてみると、時は既に真夜半まよなかのことであるから、四隣あたりはシーンとしているので、益々ますます物凄い、私は最早もはや苦しさと
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
真夜半まよなかかけて案じたが、家に帰ると、転げ落ちたまま底に水を残して、南天なんてんの根に、ひびもらずに残った手水鉢ちょうずばちのふちに、一羽、ちょんと伝っていて、顔を見て、チイと鳴いた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つ芬夫人の身の上に同情して、手厚い世話をしながら日本に連れて行く事になったが、その途中のこと、船中が皆眠って、月が氷のように冴え返った真夜半まよなかに、呉青秀は海に落ちたか
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いつの間にか真夜半まよなかとなりしならん、余は夢に恐ろしく高き塔に昇り、籠手こてをかざしてあまねく世界を眺めいるうち、フト足踏みすべらして真逆様に落つると見、アッと叫んで眼をさませば
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
「なあ、波越。なんだってこんな真夜半まよなか蝋人形ろうにんぎょう張番はりばんをさせるのだろう。羅門塔十郎らもんとうじゅうろうも時々、奇功にはやって、分らない指図をするぜ」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時は正に真夜半まよなか頃になろうとしている。然しまだ何となくあたりが落ち付かぬようだ。
夢の殺人 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
「実際、お念仏を唱えたよ、真夜半まよなかさ。」
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「金にもならねえものを、この寒い真夜半まよなかに、何で、ぶつぶつあんな文句をとなえていやがるのか……。世の中にゃあ、酔狂な野郎もある」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
からこもって、大事をとっていた山淵父子も、遂に、機先を制したつもりで、真夜半まよなかから軍をうごかし、笠寺へ朝討ちをかけた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜半まよなかの街を行くときノ太鼓に眼をさまして、武松はふと周囲を見まわした。祭壇の前の菅莚すがむしろの上で、通夜の自分はゴロ寝していたのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると突然真夜半まよなか静寂しじまを破って、一発の石砲がとどろいた。銅鑼どら、鼓、喊呼かんこなどを一つにして、わあっッという声が一瞬天地をけ去った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大納言は、何食わぬ顔をして、真夜半まよなかの火の手を自身の住居すまいから待っていたのである。そこへ、相国からの使いが来て
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その二人は、彦右衛門から使命をうけて、旅商人たびあきんどに変装し、その日の真夜半まよなか、どこへともなく城から出て行った。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武田兄弟は、走り帰ると、にわかに兵をまとめ、駒にばいふくませて、味方にも気づかれぬように、富士川の真夜半まよなかを、粛々と岸に沿って上流へ移動しはじめた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう十日あまりの真夜半まよなかなのでございます。何者か門をたたく、大勢の声でガヤガヤと騒ぐ、そこで出て見ますと、その怪我人けがにんをかつぎ込んでまいりましたので。は。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城門が開かれると、真夜半まよなかの亀山の町々の上へ、出陣の貝が、長い息をひいて鳴って行った。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まことは、真夜半まよなかのころを計って、この西八条のていを取り巻かんとするいくさの催しでござる」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆうべ真夜半まよなかに、下頭小屋を飛びだした金吾は、あれから、どう道を取り違えたものか、この小仏の低地へ迷い込んで、目ざす仮面めんの女をいまだに見ることが出来ずにいました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今村、半田、今岡、横根の宿場宿場を、宵の闇から、真夜半まよなかに見つつ前進して行った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この三、四日は、多少むッつりしていたが、べつだんな様子もなかったのに、三十日が輿入こしいれと聞いた——その前夜の二十九日、真夜半まよなかだったが、何思ったか不意に蒲団をね退けて
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜半まよなかの九ツどき(午前零時)——までには、もう一とき(二時間)ほどしかない。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宿直とのいの人々は、びっくりした。真夜半まよなかである。燭が白々と、もう四更に近い頃。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道理で、女ながらもきもッ玉のすわっているはずだ。——が、それにしても、この真夜半まよなかの小仏を、何処へゆくつもりか知らねえが、女一人で越えるなんて、無茶にも程があろうじゃねえか
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船へは、宗易の弟千宗巴せんのそうは銭屋宗納ぜにやそうのうが、使いとして乗った。奈良の浪人、土門つちかど源八郎も、附き添って行った。暗い波騒なみさい真夜半まよなか、船は、三好党の見張りの眼をしのんで、沖へまぎれ去った。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ……よく降ること。なんて静かな雪の昼だろう。まるで真夜半まよなかみたい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「庭瀬へ行く者が何でこのような山道を好んで歩くか。しかもこの真夜半まよなか
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青い月の光が、陣幕とばりに射している。——真夜半まよなかは、具足のままでも肌寒い。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岐阜全城下が眠りに入る真夜半まよなかでも、ここの界隈かいわいには、火花がちっていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸いに此寺ここにいる身でもあることゆえ、武蔵めの生命いのちが終るまで、怠らずに、ここで見張っていやい——真夜半まよなかなど、気をつけておらぬと、あの沢庵が、何を気ままにしてのけぬものでもない
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、ついに、六月ももう末頃、時政のほうから真夜半まよなかに運んで来た。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『御領主が、江戸城で、馬鹿者の刃にかかって、御重体だという噂が、わし等の耳に入ったのは、ゆうべの真夜半まよなかだ。——それからの領民の騒ぎ……いや、悲しみ……なかなかこんなものじゃない』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜半まよなかあるくは、山伏のならいだ。修行となれば、道なき道も行き、眠らずにも歩く。——なに、行く先はどこだと。つまらぬことを問い給うな。行雲流水の身、あてなど持って歩いたことはない」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム、可愛らしいだ、……だが、あの京人形みたいな小娘が、なんだって、俺たちでさえもいい気持のしない死骸だらけな戦場を、しかも真夜半まよなか、たった一人で歩いていたのか、あれがせない」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、昼間はいけない、真夜半まよなかにという考えだったものとみえる。
どこ一軒、起きている灯もみえない真夜半まよなかを、三、四人のわっぱ
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天正十一年元旦の真夜半まよなかに帰ったのだ。感なきを得ない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくら早立はやだちといっても、まだ人影もない真夜半まよなか
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜半まよなかである。河の水音が雨のようだ。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この真夜半まよなか。何のために」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
星の白い真夜半まよなかだった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜半まよなかのことなのだ。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜半まよなかを過ぎると——
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜半まよなかちかい頃。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜半まよなかを過ぎた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)