眞鍮しんちう)” の例文
新字:真鍮
黄表紙きべうしを讀んでゐた平次は、起き上がると煙草盆を引寄せて、こればかりはよく磨いた眞鍮しんちうの煙管と共に八五郎の方に押しやるのです。
卯平うへい薄暗うすぐらうちなかたゞ煙草たばこかしてはおほきな眞鍮しんちう煙管きせる火鉢ひばちたゝいてた。卯平うへい勘次かんじとはあひだろくくちきかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
上段じやうだんづきの大廣間おほひろま正面しやうめん一段いちだんたかところに、たゝみ二疊にでふもあらうとおもふ、あたかほのほいけごと眞鍮しんちう大火鉢おほひばち炭火たんくわ烈々れつ/\としたのをまへひかへて、たゞ一個いつこ大丈夫だいぢやうぶ
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「其代り、これだけは隱さずに話してくれ、——近頃お前のところへ行つて、眞鍮しんちうの簪二本に銀流しを掛けさした女があるだらう」
たねまでがり/\かぢつちやつたな、奇態きたいだよそんだがもゝかぢつてつとはななかほこりへえんねえかんな、れがぢやれでも魂消たまげんだから眞鍮しんちう煙管きせるなんざ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたし眞鍮しんちう迷子札まひごふだちひさなすゞりふたにはめんで、大切たいせつにしたのを、さいはひにひろつて、これをたもとにした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蒔繪まきえも何んにもなく、眞鍮しんちうやニツケルを使つた精巧な出來は、その頃九州やさかひの鍛冶が打つた武骨——だが豪勢な感じのする日本出來の鐵砲ではなく
眞鍮しんちう茶釜ちやがま白鳥はくてう出居いでゐはしら行燈あんどうけて、ともしびあかく、おでん燗酒かんざけ甘酒あまざけもあり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
商人あきんどおろした四かくなぼてざるから眞鍮しんちうさらかぎつるされたはかりした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
平次がさう言ひ乍ら、懷から取出したのは、眞鍮しんちうの迷子札が一枚、後閑こが武兵衞の手の屆きさうもないところへ置いて、上眼使ひに、そつと見上げるのでした。
平次が帳場格子の前にしやがむと、品吉はうづみ火の煙草盆を押しやつて、自分も眞鍮しんちうの煙管を取上げました。
金の鈴、銀の鈴、眞鍮しんちうの鈴、あかの鈴、——足結あゆひの鈴、手の鈴、くしろの鈴、大刀の鈴、鈴鏡すゞかゞみ。さては犬の鈴、たかの鈴、凡そ鈴と名の付くものなら何でもある——鈴は要りませんかな——
血染の匕首と眞鍮しんちうの火箸を持つて、八五郎は轉がるやうに梯子を降りて來ました。
「錢の外に膝の下に、眞鍮しんちうの花形になつた變なものを持つて居るだらう」
小判形には出來て居ますが、よく見ると眞鍮しんちうの迷子札で