うづ)” の例文
冷吉は繃帶の下の傷のちき/\うづくのが段々に烈しくなつて來るやうな心持がして、憊れ沈んだ氣分は腐れるやうにいら/\した。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
乳母 はれ、頭痛づつうがする! あゝ、なんといふ頭痛づつうであらう! あたま粉虀こな/″\くだけてしまひさうにうづくわいの。脊中せなかぢゃ。……そっち/\。
恰度忘れてゐた傷の痛みが俄かにうづき出して來る樣だ。抑へようとしても抑へきれない、紛らさうとしても紛らしきれない。
硝子窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
含んで脹れ上る肉のうづみに堪へかねて、大抵の男は苦しき呻き声を発したが、其の呻きごゑが激しければ激しい程。彼は不思議に云ひ難き愉快を
谷崎潤一郎氏の作品 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
家中の人は眼を見合はすのさへはゞかるやうになつた。お互ひの眼の中にうづいてゐる不安をお互ひに見たくなかつたのである。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
壁は濕氣を吸ひ込み、火鉢の欲しいやうな寒さは、腰の神經痛にひとしほこたへしんしんとうづき出すのであつた。
第一義の道 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
この二三ねん月日つきひやうやなほけた創口きずぐちが、きふうづはじめた。うづくにれてほてつてた。ふたゝ創口きずぐちけて、どくのあるかぜ容赦ようしやなくみさうになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
セント・ジョンを滿足させようと筋肉がうづくまでも氣を張つて私は努めるに違ひない——セント・ジョンの期待の奧底まで、その端々までも滿足させる爲めに。
生命いのち冥加みやうがくらゐうまでもうしでも吸殺すひころすのでございますもの。しかうづくやうにおかゆいのでござんせうね。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
圭一郎は電車の中などで水鼻洟みづばなを啜つてゐる生氣の衰へ切つて萎びた老婆と向ひ合はすと、身内をうづく痛みと同時に焚くが如き憤怒さへ覺えて顏をしかめて席を立ち
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
安定した表情以上の表情と云ふやうなもの、その柔く、又冷い、絶対に落ちつき切つた感じが、不思議に軍治を打ち、一種名状しがたい悔恨の情が彼の胸をうづかせた。
鳥羽家の子供 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
脊髄のあたりがすこしうづくやうな感じがした。書留にしなかつたからと云ふことが殊更不安を感じさせるのであつた。「僅か拾銭を倹約した為に」と思ふと、急に忌忌いまいましくもなつてくる。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
なほかつぬしある身のあやまりて仇名あだなもや立たばなど気遣きづかはるるに就けて、貫一は彼の入来いりくるに会へば、冷き汗の湧出わきいづるとともに、創所きずしよにはかうづき立ちて、唯異ただあやしくもおのれなる者の全くしびらさるるに似たるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
るがごとうづくいたでに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ゆびさきの刺うづ
聖三稜玻璃:02 聖三稜玻璃 (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
が、今にも頭が堪へ難い程重くなつてズクズクうづき出す様な気がして、渠は痛くもならぬ中から顔を顰蹙しかめた。そして、下唇を噛み乍らまた書出した。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
不思議にこゝ一二年、心を去つてゐた色の黒い悩みが、不意に伊藤の言葉によつてその古傷がうづき出した。私は教室の出入りに、廊下の硝子ガラスに顔を映すやうになつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
女は顔をそむけた。二人ふたり戸口とぐちの方へあるいてた。戸口とぐちる拍子にたがひの肩が触れた。男は急に汽車で乗り合はした女を思ひした。美禰子のにくれた所が、ゆめうづく様な心持がした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が、今にも頭が堪へ難い程重くなつて、ズクズクうづき出す樣な氣がして、渠は痛くもならぬ中から顏を顰蹙しかめた。そして、下脣を噛み乍らまた書出した。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
源助とお吉との會話が、今度死んだ凾館の伯父の事、其葬式の事、後に殘つた家族共の事に移ると、石の樣に堅くなつてるので、お定が足に痲痺しびれがきれて來て、膝頭ひざがしらうづく。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
源助とお吉との会話が、今度死んだ函館の伯父の事、其葬式の事、後に残つた家族共の事に移ると、石の様に堅くなつてるので、お定が足に麻痺しびれがきれて来て、膝頭がうづく。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)