牧師ぼくし)” の例文
書斎しょさいのドアは、ほんのすこしひらいている。まっさおな顔でついてきた夫人ふじんをうしろにかばいながら、牧師ぼくしは、そっとのぞきこんだ。
あるひはまた廷臣ていしんはなうへはしる、と叙任ぢょにん嗅出かぎだゆめる、あるひは獻納豚をさめぶた尻尾しっぽ牧師ぼくしはなこそぐると、ばうずめ、寺領じりゃうえたとる。
ふしぎともふしぎ、運転台にいるのは、背広姿になってはいるが、雷洋丸にいたときは牧師ぼくしの服に身をかためていた師父しふターネフであった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
牧師ぼくしというのは、おんな外国人がいこくじんでありました。そのしたに、日本人にっぽんじん信者しんじゃがいて、いろいろの世話せわをしたり、なにかと教会きょうかいのめんどうをみながらはたらいていました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
それもどうものぞみはないらしいですがね、それよりもかねことですよ。先刻さつきぼく此處ここはひらうとすると、れいのあの牧師ぼくしあがりの會計くわいけい老爺おやぢめるのです。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
なんだね、お前達まえたちこれだけが全世界ぜんせかいだとおもってるのかい。まあそんなことはあっちのおにわてからおいよ。なにしろ牧師ぼくしさんのはたけほうまでつづいてるってことだからね。
やがて納棺のうかんして、葬式が始まった。調子はずれの讃美歌さんびかがあって、牧師ぼくし祈祷きとう説教せっきょうがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ある日、村の百しょうがひとり、教会へいって牧師ぼくしさまに、こうたずねました。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「とにかく、人間にならなけりゃならない。そのためには、牧師ぼくしさんとか、お医者いしゃさんとか、先生とか、そのほか、学問があって、こういうことのなおしかたを知っている人にきかなくちゃだめだ。」
牧師ぼくしは、夫人ふじんの言うとおりに、はっきり足音がしているのをきくと、さっとガウンをはおりスリッパをつっかけて部屋へやをでた。
きゅうに、この二人ふたりこえで、ほかのひとたちは、牧師ぼくしさまのこえが、みみはいらないので、こまっているようすでした。
鳥鳴く朝のちい子ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
こえて、まだまだずうっと遠くの、牧師ぼくしさんの畑のほうまで、ひろがっているんだよ。おかあさんだって、まだ行ったことがないくらいなのさ! ——ええと、これで、みんななんだね
村でいちばん、ものしりの牧師ぼくしさんでさえ、それには、あやふやでした。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
牧師ぼくしは、かたくくちびるをかみしめて、つくえをかきまわすひくい音のきこえている書斎へ、ひと足ずつ近づいていった。
まちへささやかな教会堂きょうかいどうがたてられました。ちかくの子供こどもたちや、めぐまれない家庭かていおんなたちが、日曜日にちようびごとに、おいのりにあつまって、牧師ぼくしのお説教せっきょうをきいたのであります。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると年とった牧師ぼくしさまは
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ちいちゃんは、いまごろ牧師ぼくしさまのお説教せっきょうわって、先生せんせいのおはなしがはじまる時分じぶんだとおもって、ドアのほうへ、足音あしおとかるあるいていきました。そして、しずかになかはいっていきました。
鳥鳴く朝のちい子ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おばあちゃん、おんも……よう。」と、このとき、ぼうやが、わめいたからです。みんなは、だまって、牧師ぼくしさまのおはなしいているのに、ぼうやだけは、わからないから、そとたいというのでした。
鳥鳴く朝のちい子ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)