)” の例文
父の眼には涙はなかつたが、声はうるんでゐてものが言へないので、私は勇気を鼓して「おう、用心なさんせ、左様なら」と言つた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
義太郎 (不満な顔色にて)おう、どうしたから降すんや。今ちょうど俺を迎えに五色の雲が舞い下るところであったんやのに。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「おさん」もう、あなた、と呼ばず、マンはそう呼ぶようになっていた。「これまでも大変じゃったけど、これからが、一層、大変よ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
あにき」と二男弥五兵衛が嫡子に言った。「兄弟喧嘩をするなと、おっさんは言いおいた。それには誰も異存はあるまい。 ...
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さと うちのつつあんてちやあ、あツでん、なかなか働き手ばな。ただ、きばつてもなんにもならんだけたい、ああた。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
せめておつかあが生きてゐて呉れたらナ。せめて馬右エ門がも少ししつかりしてゐておつあんの鎚を握つてくれたらナ
鍛冶屋の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
「いや、待て。あの蜥蜴のどこが憎くらしいのだ。あれはね。言って聞かすが、おうさんの、そうだな、魂だよ。」
或時手狭てぜまな家でお客をする事になったのです。お客はお医者仲間が二、三人、あとはおうさんがお世話になる、士地での旧家の主人や隠居たちです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「うんにゃ、おらは何も知らねえ。うちのッさんに叱られたよ、子供のくせに、大人の世界のことに出洒張でしゃばるな、ヘタするとお白洲しらすへ曳かれるぞッて」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うとおあが、そこで化け物だ幽霊だと、口争いをはじめてしまったが、とにかくこの「時計屋敷」のこわいことは、村の子供たちはよく知っていた。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おっつぁんが許さないだろう。夜、川の中へ釣針を沈める手伝いをしたほうがいいって言うだろう」
「いや、そう判ったらもうそれでいい。おっさんや阿母おっかさんにはこんなことは黙っているがいいぜ」
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
若「おまはんこゝで金が出来て、おさんの首尾さえ附けば、今までの通りぬしが来られるような事になりんすか、そうならわちきがお金を才覚しようじゃア有りまへんか」
「しばらく。——おッつァん。おッさん。僕、妹をつれて来たからよろしく頼むよ。」
やんちゃオートバイ (新字新仮名) / 木内高音(著)
家が焼ける火を見ると子供達はぶるぶるふるえた。「あれ……うちゃんどうなるの……」
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「いたこつ來て、吉川のおうばおろしてみたつけアなあ、お父、今死んで、火焚きばやつて苦しんでるんだつて云つたどよ。——いたこつて婆だべ。いたこ婆つて云つてたど。」
防雪林 (旧字旧仮名) / 小林多喜二(著)
「そうです」おえいは頷いて、口のまわりを拭いた、「おっさんが三年まえにいなくなってから、やけ酒を飲みだして、妹のはなは芸妓屋へ売るし、九つのすえまで売ろうとしているんです」
それから男の子が生れたのにエスキルという名を付けさせられたのも、お前さんのおっさんがエスキルといったからだわ。考えて見るとわたしはお前さんの好きな色の着物ばかり着せられている。
このおきあげ抱きあげほれ坊やよあかい花がと何処どこ迄行くぞ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
絶えず「うちやん、父ちやん。」で父親を放さない。
榛名 (旧字旧仮名) / 横光利一(著)
う様チンダレオスがパルラスの岡から
「あたいのおうさんは浪人……」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
さん居ない おさん居ない
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
……そげんいやあ、あんたのおッあんと、おッさんも、昔、好きあうて夫婦になりござったごたる。あんたのことも、わかってくれるさ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「これは日本にわずか三部しかないい版の『十三経註疏ぎょうちゅうそ』だが、おう様がお前のだとおっしゃった。今年はもう三回忌の来る年だから、今からお前のそばに置くよ」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「そんなことはあるもんか。そうそううん坊のッさんは長のやまいで、おめえの稼ぎを杖とも柱ともしてるンだってな。都頭さん、この小僧はとても親孝行なんですよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おうのいうとおりだ。時計屋敷へはいったがさいご、生きて二度とは出てこられねえぞ。おっかねえ化け物がいて、お前たちを頭からがりがりと、とってくうぞ」
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「また祖母ばあさまに叱られたな。来い、来い。おつあんがあやまつてやるに。」
百姓の足、坊さんの足 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
おい、奥さん、お前のおつつあんは、たしか脳溢血で死んだんだね。どんな容態だつたね、その少し前は……覚えちやゐまいな。よし。よし。好い加減なことを云はれても、却つて困る。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「おっさんは、亡くなりましたか」おくにはぼんやりとつぶやいた。
義太郎 おう何するんや、厭やあ、厭やあ。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
身分相応に悪魔のおっさんの4305
あなたは、まだ、お坊ちゃんじゃけん、すぐ人のいうこと信じるけんど、うちのおさんやおさんて、あなたの十倍も、百倍も、海千山千うみせんやません
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「むずかしい病気なのかね。もうおっさんが帰っておいでになるだろうから、またせて置けばいじゃないか」
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「貸してくんないか。どうせ、あんなボロ刀、おっさんも、もう使やしないから」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうしたの」おすえは囁き返した、「どうかしたの、おっさま」
失蝶記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「稲田仙太郎?……ああ稲田のおっさんでしたか」
(新字新仮名) / 海野十三(著)
どうぞおう様の御威徳で
銓は初め忍んで黙っているが、のちには「おっさん、いやだ」といって、手を挙げて打つ真似まねをする。宗右衛門はいかって「親に手向てむかいをするか」といいつつ、銓をこぶしで乱打する。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ッちゃんは、ピンピンしているけれど、お酒呑みなんだもの」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを本所に訪ねて、「おうさんに抽斎という別号がありましたか」とか、「お父うさんは「武鑑」を集めておいででしたか」とかいうのは、余りに唐突ではあるまいかと、わたくしは懸念した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「おッさんは嫌いだけれど、おっかあのそばなら居たい」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『失くしました……あれは、おっさんへ出す手紙です』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんなむずかしい法名なんて、わたし呼ばないわ。ただ師兄にいさんて呼ぶのよ。だって、うちのおっさんは、古いご門徒もんとでしょ。だから如海兄さんが方丈さまの位置にすわるときなんかも、ずいぶんお世話したものだしさ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……おっさん」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おっさん——」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)