無造作むざうさ)” の例文
私は彼の口から、彼の幸福さうな赤い顔に似合しいやうな浮々した言葉が、無造作むざうさに浴びせかけられることを思ふとたまらない気がされた。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
うま乘替のりかへさせ先の者どもへ見せつけて遣んとおもふ心なり其所は其もとむね一ツ何卒兩人夫婦にさせてはくれまいかと無造作むざうさたのめば與惣次よそうじ承知なしお專を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見ると、樓の内には、うはさに聞いた通り、幾つかの屍骸しがいが、無造作むざうさに棄てゝあるが、火の光の及ぶ範圍はんゐが、思つたより狹いので、かずは幾つともわからない。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
、なんぼ自分の所有ものだといつて、さうぽん/\と無造作むざうさに取上げられたんぢや、全くやりきれやしない。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
平次は無造作むざうさに笑い飛ばして、縁側にうしろ手を突いたまゝ、空のあをさに見入るのでした。七夕たなばたも近く天氣が定まつて、毎日々々クラクラするやうなお天氣續きです。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
頭髪かみうなじあたりって背後うしろげ、あしには分厚ぶあつ草履ぞうりかっけ、すべてがいかにも無造作むざうさで、どこをさがしても厭味いやみのないのが、むしろ不思議ふしぎくらいでございました。
紙片かみきれはたして横罫よこけい西洋紙せいやうしで、それひろげてると、四五つうもある。いづれもインキでノート筆記ひつきやうの無造作むざうさ字体じたいで、最初さいしよの一つうが一ばんながく、細字さいじで三頁半ページはんにもわたつてゐる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
既に解剖した屍體をすら平氣で而もたくみに縫合はせる位であるから、其がよし何樣どんな屍體であツても、屍體を取扱ふことなどはカラ無造作むざうさで、鳥屋が鳥を絞めるだけ苦にもしない。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
踊子をどりこさそ太鼓たいこおとねてした。勘次かんじ蚊燻かいぶしの支度したくもしないでこん單衣ひとへへぐる/\と無造作むざうさに三尺帶じやくおびいて、雨戸あまどをがら/\とはじめた。さうして
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
太古たいこ日本家屋にほんかおくは、匠家せうかのいはゆる天地根元宮造てんちこんげんみやづくりしやうするもので無造作むざうさごろの合掌がつしやうしばつたのを地上ちじやうてならべ棟木むなぎもつてそのいたゞきわたし、くさもつ測面そくめんおほうたものであつた。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
新しい葉が出来ると無造作むざうさに落ちる
ゆづり葉 (新字旧仮名) / 河井酔茗(著)
ジアン・クリストフの中に、クリストフと同じやうにベエトオフエンがわかると思つてゐる俗物を書いた一節がある。わかると云ふ事は世間が考へる程、無造作むざうさに出来る事ではない。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
N君は無造作むざうさに返事をした。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)