烱眼けいがん)” の例文
しかれども彼は一方においては事物の真相を察する烱眼けいがんあるにかかわらず、いわゆる天下の大勢を既にきたれるにつかみ、いまだ至らざるに察し
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
深入りした徳川勢は、たしかに、危険は危険な行き方であったが、烱眼けいがんな家康が、みずから全局の急所に打った一石だった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども注意と烱眼けいがんとをもって、彼はついにそれらの幽霊に肉を与え、それらの生きながらの死人をよみがえらすに至った。
そういって、この烱眼けいがんなる記者は、ドレゴと水戸の手をかわるがわる握ってこの困難なる仕事への再発足さいほっそくを激励し合った。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
おどろきながら小者が、不審にたえないといったように首をかしげましたものでしたから、早くもその烱眼けいがんのピカピカとさえたものは名人右門です。
これが多分ニュートンの最初の疑問ではなかったのでしょうか。つまり月を問題にしたところに、ニュートンの人並みすぐれた烱眼けいがんがあったのです。
ニュートン (新字新仮名) / 石原純(著)
「いや、奴、ナカ/\烱眼けいがんだ。その時は気の毒がっていたが、此方へ来てから申込んだら、否と言えば又この二階から飛び下りるかい? と言やがった」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
烱眼けいがんよく人世必要の機微をとらえ、学者、文人、思想家を、店員なみに見なすような巨豪になったとはいえ、その成功はみな書物の貴さによってだった。
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
僕は今更ながら先生の烱眼けいがんに驚かざるを得なかった。先生の前には、「虚偽」はつねに頭を下げざるを得ない。
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そして、こっそりと観客の中にまぎれ込んでいたのを、法水の烱眼けいがんが観破したのではないだろうか……。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「国民之友」つて之を新題目として詩人に勧めし事あるを記憶す、まことに格好なる新題目なり、彼の記者の常に斯般しはんの事に烱眼けいがんなるは吾人のひそかに畏敬する所なれど
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
唯杯酒の間に於て交情を温めしのみ。而も彼の烱眼けいがんは早くより平八郎の豪傑なるを看取せり。古賀溥卿は嘗て平八郎が江戸に来りしとき恐るべき人物なりとして遇ふことを許さゞりき。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
京畿に生れたらば五十万石七十万石の大名には屹度きっと成って居たに疑無い立派な人物だが、其烱眼けいがんは早くも梵天丸の其様子を衆人の批難するのを排して、イヤイヤ、末頼もしい和子わこ様である
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大村の肝煎きもいりで朝鮮の幾人かの文人達と一席を設けたところ、その席上で三十分もせぬ中に彼が玄竜の中に朝鮮人全部を見てとったのは、さすがに鋭い芸術家の烱眼けいがんだと讃嘆して附け加えた。
天馬 (新字新仮名) / 金史良(著)
うして漁師れふし烱眼けいがんもつ獲物えものあやまたぬみちなみあひだきはめてるのである。わづか村落むらうち毎日まいにちすべてのじゆくしてをんな所在ありかねらふことは、蛸壺たこつぼしづめるやうな其麽そんなむしろあてどもないものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
平次の烱眼けいがんが、早くも此事件の底の不合理さを見出したのです。
やとい主は烱眼けいがんむるいだ。こんな女なぞはやとってくれない。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
けだし蕪村の烱眼けいがんは早くこれに注意したるものなるべし。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「軍司令官閣下の烱眼けいがんには驚きました。」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宇内うだいの大勢を揣摩しまし、欧洲の活局を洞観するの烱眼けいがんに到りては、その同時の諸家、彼に及ぶものすくなし、いわんや松陰においてをや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
で、烱眼けいがんな曹操はすぐ、この城を陥す攻め口はここと、肚のうちでは決めているに違いないのです。——そこで彼は次の日から、西門に主力を
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし法水が、最初から死者の世界にも、詮索を怠らなかったことは、さすがに烱眼けいがんであると云えよう。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あの鋭い烱眼けいがんで、じろじろ小さな義少年の次郎松を見ながめていましたが、そのとき——ふと名人の目に強く映ったものは、いぶかしや次郎松少年の腰のところに
……ホーテンスは、さすがに烱眼けいがんで、いい狙いをつけているよ。彼は、燃えるソ連船ゼムリヤ号の焔の中に飛びこむ代りに、七つの海の中からその前日までのゼムリヤ号の消息を
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
けだし蕪村の烱眼けいがんは早くこれに注意したる者なるべし。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「そりゃ君ほど烱眼けいがんじゃないが。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二 スコーフレール親方の烱眼けいがん
論より証拠、今日においてはわが邦の人民はみな生まれながら烱眼けいがん活溌なる貿易者となり、生まれながらにして波濤の健児とならんものを。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「おそろしい烱眼けいがんだ。これまで敵地の木戸や関門を通って来る間にも、それ程までに、わしを見抜いた者はなかった」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらにいでてさらに重なる不審な事実に、三たびうちおどろきながら、じっと鋭くまなこを注いでいましたが、——せつな! まことにいつもながらの古今に無双なその烱眼けいがん
将来のことに至りてはいかなる達識烱眼けいがんの人といえどもただ推測するの一あるのみ。しかして吾人今日の位地はこれを推測することすら容易ならず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
だから信玄とその直属部隊が、山の手の要撃隊のほうにあるか、この野戦待機隊にあったかは、いかに謙信の烱眼けいがんでもまだ分明していないわけである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たいていの者が恐れ入るべきはずでしたが、このくちびる赤き毒の花は、あくまでも、われらの捕物名人むっつり右門の烱眼けいがんをおおいくらまそうとしたものか、反対に食ってかかりました。
孫策の烱眼けいがんと、太史慈の信義に感じて、先に疑っていた諸将も、思わず双手を打ちふり、歓呼して彼を迎えた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下の民みな覇政はせいたくに沈酔し、一旅を以て天下を争わんとしたる幾多いくたの猛将梟漢きょうかんの子孫が、柳営りゅうえい一顰いっぴん一笑いっしょう殺活さっかつせられつつある際に、彼の烱眼けいがんは、早くも隣国の形勢に注げり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
烱眼けいがんはやぶさのごとき名人が見すごしするはずはないのです。
また、あなたの烱眼けいがんをもって、この小城に、わずか七百の兵を擁し、織田家の二万五千の大軍に対し、最後まで守りきれるなどともお考えにはならないでしょう。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいは仏国革命の張本人ともいうべき烱眼けいがんなるヴォルテールのごとき
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
甲館のあるじ機山大居士きざんだいこじとは、おそるべき烱眼けいがんの持主であると、常日頃から伺っておりましたが、今のおたずねは、子どもの持っている菓子をあやして奪うような御質問で
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「孔明の烱眼けいがんには、まったくきもをつぶされました。あながち、きょうばかりではありませんが」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分もくより考えているし、主君信長様の烱眼けいがんが将来の計をおこたっておらるるはずもない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、慈円僧正が、身にひきうけてとまでいいきって、官へ印可いんかをとりにやったのは一朝の決断ではなかった。先刻からの座談のうちに、烱眼けいがん、はやくも、十八公麿の挙止きょしを見て
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尾張八郡の将来を、その烱眼けいがんで見こしていた上の承諾であることはいうまでもない。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それとて日本左衛門の烱眼けいがんにさえ、少しも怪しげに見えなかったくらいなものです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
烱眼けいがん明察、彼のごとき者を、呉の陣中に養っておくことは、呉の内情や軍の機密を、思いのまま探ってくれと、こちらから頼んで、保護してやっているようなものである——と思った。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
烱眼けいがんも届きませぬか。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
烱眼けいがんな藤孝は
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)